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不思議なS/お土産チョイス

 昼食もそれなりに済ませた後、俺たちは色々なアトラクションに乗っていた。


 フリーフォールでは2人とも落ちる時の爽快感で笑いあったし、子供っぽくメリーゴーランドにも乗ってみたが、先輩の笑顔がとても映えて見えた。

 その時は、せっかくなので先輩にもう一回一人で乗ってもらって、俺は馬に乗っている先輩を撮った。


 写真で撮った彼女はものすごくきれいだった。一つの作品としてネットにアップしたら軽く話題になるんじゃないかと思うくらいによかった。

 今の彼女に悲しみなんて見えない。これで、依頼は達成かな?


 「有藤はなにしていたんだ?」

 「写真撮ってました。ほら、めっちゃいいでしょ?」

 「は、恥ずかしいが、私でもこんなにいい被写体になれるのか?」

 「なに言ってんすか。先輩、スレンダー体形で高身長だから被写体としては最高じゃないですか」

 「ほ、本当か?」

 「いや、その道のプロじゃないから知らんけど」

 「な、なんなんだお前は!」


 そういうこともあったが、俺たちはひとしきりアトラクションに乗ったということでお土産屋に足を向けていた。


 お土産屋に入った俺たちは、お土産を先輩の母である結城さん。そして、彼女の依頼に協力してくれた芽衣や澄香にも買おうという流れになっていた。


 「有藤、これはどうだ?」


 そう言って彼女が持ってきたのはこの遊園地のマスコットキャラクターのぬいぐるみ。そのチョイスはいいのだが、いかんせん―――


 「でかくないか?」

 「問題はそこなんだよなあ。さすがに二分の一スケールは大きすぎるよなあ……」

 「十二分の一とかはないんですか?フィギュアとかならこんなもんな気がするけど」

 「そういうのは売り切れてしまっているみたいなんだ」

 「それならこれしかないのか?」

 「シンプルにお菓子は?」

 「それもありだな……」


 というわけで俺たちはお菓子エリアに来たのだが……

 どういうわけか、長期間の保存がきくものはほとんど売り切れていて、残っているのはあまり長期間の保存に向かないものだった。


 「生なんとかばっかりで、賞味期限1週間程度か……」

 「こういうのは部活に持って行って、みんなで食べるほうがよさそうだな」

 「うむ。なら、梓と阿内にはこれを持っていこう」

 「じゃあ、先に買ってくるから先輩は結城さんのお土産を選んどいてください」

 「わかった。後で代金は支払おう」

 「いいですよ。そんな金があるなら結城さんに使ってあげてくれ」

 「……わかった。その言葉に甘えさせてもらう」


 俺は、先輩がお土産選びを再開したのを確認してから会計を済ませるためにレジに向かう。

 支払いは、2000円を超えたがまあいいだろう。あの二人には世話になってるし、助けられてる部分もある。日頃の感謝を伝えるのも大事なことだろう。


 そう思いながら先輩のもとに戻ると、彼女は難しげな顔でお土産を見比べていた。


 「決まりましたか?」

 「いや、二つには絞れたのだが、やはり悩みどころだな……」

 「なにで悩んでるんですか?」

 「さっきのぬいぐるみとペアのマグカップセットだ」

 「またなんで?」

 「父さんが死んで悲しいのは私だけではない。母さんも辛いに決まってる。だから、今からでも母さんとおそろいのものを使って、母さんと少しでもつながってるような……なんていうか……そのなに言ってるかわからないな」

 「そんなことないですよ。先輩の結城さんへの思いはちゃんと伝わってます」

 「そういうものなのか」


 母親を大事にする気持ちをうまく言葉にできずに、俺にそういうことを言われるのは恥ずかしいのだろう。少し頬を赤らめて俯く。


 そこでふと気になったのが前者のチョイス。その前にも候補に挙げていたが、なぜなのだろうか?


 「ところで、ぬいぐるみも外せないんですか?」

 「そうだな」

 「理由を聞いても?」

 「母さんは、昔からぬいぐるみ趣味があってな。父さんが帰ってこない日とかは大きいぬいぐるみを抱きながら寝てるんだ」

 「へー、意外とファンシー趣味なんですね。なんとなく先輩がそんな性格になったのが納得です」

 「は?」

 「いや、素で『は?』はやめてくださいよ。すっげえ悲しい」


 それから、なんやかんや協議した結果、お土産はマグカップに決まった。決め手となったのは、ぬいぐるみをどうやって持って帰るかだった。よくよく考えたら、俺たちはバイクで来ている。そんな大荷物は運べない。とう、いうことでマグカップが選ばれた。


 お土産屋を出た俺たちは、最後に観覧車に乗ってから帰ろう、という話になった。


 観覧車に乗車してからすぐに先輩が話し始めた。


 「有藤、今日はありがとうな」

 「別に気にすることじゃありませんよ」

 「それでもだ。お前は、私を救ってくれたんだ」

 「まあ、それなら感謝を受け取っておきます」


 先輩は、俺のおかげで立ち直れたという話をして、先輩が話し終わったころ静寂の時間がこの空間を包んだ。


 ガタン!


 突然、観覧車が揺れ始めて浮遊感に俺たちは襲われた。その突然の出来事に、先輩も俺も困惑する。


 「な、なんだ!?」

 「わからない。でも、先輩は手すりかなにかにつかまって」


 そう言いながら、俺は外を見ると驚愕した。


 観覧車のすべてのゴンドラ部分が宙高くに持ち上がっていた。


 「なんだこれ!?」

 「ど、どうしたんだ?」

 「まずい状況になってる」

 「それはどういう―――な、なんだこれ!?」


 先輩も外の様子に気付いたのか驚きの声を上げる。

 しかし、それだけでは終わらず突然ゴンドラが落下し始めた。


 「ひっ、きゃあああああああ!」

 「クソッ、なんなんだよ!」


 この遊園地の観覧車に乗ってるのは、俺たちだけじゃないはずだ。ここで全員を見捨てるのは絶対に違う。全員助けなきゃ意味がない。


 なら、やるよな。代償なんて気にしないよな。


 「止まれえええええええええ!」


 ピタッ!


 俺が力を使って無理やりゴンドラとその中の人たちの速度を急速に落とした。

 ゴンドラは乱雑に止めたが、乗っている人はできるだけ内臓とかが揺れたりしないように気を付けて止めた。

 これで死亡者はおろかけが人すらいないはずだ。まあ、精神的なパニックとかはどうにもできないが。


 しかし、この感覚。あの時と一緒だ。もしかしたら


 「大丈夫ですか、先輩」

 「だ、大丈夫だ。それよりも、有藤は大丈夫なのか?」

 「俺なら大丈夫ですよ」


 俺たちが安否を確認していると、どこからか声が聞こえてきた。


 「ああ?なんでだよ。なんで死んでねえんだよ。これじゃあ、面白くねえだろ!」


 愉快犯か。クソ、さっきまで楽しかったのに……

 許すまじ。


 「先輩、この場はみんなを連れて逃げてください」

 「あ、ああ。だがお前はどうするんだ?」

 「決まってるだろ。戦うんだよ」

 「だ、だが……」

 「先輩。よく見ておけ。これがあんたの父親の魂がこもった拳だ」

 「そ、それがなんだって……」


  「俺の名は【ガーディア】。風見宗光の意思を受けたもの。善人を助ける守護者だ。これ以上、お前の父親を裏切るな。勝手に腐ってくんじゃねえよ」


 そう言って変身した俺の姿には、いつもと違い青のラインが体に刻まれていた。

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