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不思議なS/不穏な胸のざわめき

 俺たちは前回に引き続き遊園地に来ているのだが、ここにきてちょっとした問題があった。


 「こ、ここはいいんじゃないか?」

 「えぇ……」


 お化け屋敷を目の前にして先輩が入るのを渋り始めたのだ。


 意外にもというほどではないが、先輩はお化け屋敷が苦手なようだ。

 こう、クール系の人が怖がる姿ってなにか来るものがあるんだよなあ……


 よし、意地でも入るぞ。もはや、強引に入ってしまえ!


 「じゃあ行きますよ先輩」

 「わ、私はこういうのは……」

 「大丈夫!俺、強いから。先輩一人なら守れますよ」

 「そ、そうか……なら……」


 こうして、俺たちは先輩にとっての禁域であるお化け屋敷に(強引に)足を踏み入れたのだった。


 ―――お化け屋敷の中にて―――


 この遊園地のとある映画とのコラボで、地下拷問施設が舞台となっている。シチュエーションがシチュエーションだけに普通に怖い。

 ただ、俺の恐怖心なんかないんじゃないかと思うくらい先輩の足は震えて、歩みが速かった。


 最初は並んで歩いていたはずなのに、俺がおいて枯れている状況だ。


 「先輩、速すぎますよ。見失っちゃいます」

 「は、速くないっ!お、お前が遅いんだ」

 「はいはい。でも、一人になってもいいんですか?」

 「ひっ、勘弁してください……」


 俺が軽く脅すと、先輩は小さい悲鳴を上げて、俺の腕を抱いてきた。

 そんなことをされると、当然先輩の胸の凶器が俺の腕に直当たりするわけでして―――俺の腕に柔らかい感触が伝わってくる。だが、なにも感じない。


 枯れっちゃってるのかな?はは、笑えねえ。


 そんなやり取りをしていると、突然下に転がっていた死体が動き出した。


 「うがあああ!」

 「うひゃあ!?」


 先輩は、さっきと比較にならないような悲鳴を上げて、俺の腕に顔をうずめてくる。ちょ、なにしてんの!?


 てかこれ作りものじゃね?リアルすぎだろ……


 「先輩落ち着いて」

 「は、早く……」

 「あ、ちょ、先輩!?だから落ち着いてって!」

 「お、大声を出すな!びっくりするだろ!」


 俺はその声に驚いたよ。


 俺はちょっとむかついたので、俺は先輩のあらわになってるうなじに指を這わせる。

 すると、先輩は顔を真っ青にし、とんでもない悲鳴を上げた。


 「いいぃぃぃやああああああああああ!」

 「だー、鼓膜破ける!」

 「な、なにをするんだあああ!」


 一瞬で俺が犯人だと見抜いた先輩は、俺のことをポカポカと叩いてきた。その様は少しバカップルにも見えるだろうか?だが、とてもかわいらしい姿だ。


 でも、なんだろうか……。こう、先輩をいじって悲鳴を上げたのを見たら、なんか……そう、言葉にするのなら、なんだかとても―――


 ―――ゾクゾクした。


 なんだ、この気持ちは?今まで抱いたことのない気持ち。なんだろう。先輩の悲鳴を上げる姿。なぜか背筋が震えるような気持ちよさがある。


 俺をひとしきりたたいた先輩は、今度は前を歩かずに俺を盾にするように俺の背中に抱き着いてきた。


 「先輩?」

 「これは私に行ったことに対する罰だ。せいぜい私の受けるはずだった恐怖を受けるんだな!」

 「はは、こすいな。あ、でもそういうことすると―――」

 「うがあああ!」

 「ひっ!?きゃあああああああ!」

 「―――後ろから来ますよ」


 俺の言葉は遅かったらしく、曲がり角で先輩が一つの檻に背を向けた瞬間に、その中の影からお化けが飛び出してきた。

 それをお化け苦手な先輩が耐えられるはずもなく、とんでもない大声で悲鳴を上げていた。


 それから、先輩は俺を押しながら進んでいった。どういう歩き方だろうか?


 「あのー先輩?」

 「な、なんだ?」

 「歩きづらいです」

 「が、我慢しろ。私だっては、恥ずかしいんだ」

 「そっちかよ!」


 てっきり怖いからこのままでとかいうのかと思ったのによ!


 そういや、由愛も怖いの苦手だったな。いや、というよりそれを口実に俺に抱き着いてキスしたいだけだったな。

 今の先輩からは、同じような感じがする。勘違いだろうけど。


 俺はだめだな。女子とデートしてるのに、ほかの女のことを考えて。


 でも、最近はマラークにバトルトルーパーと休む暇もなかった。こう、なんでもない日常が俺は恋しい。


 「先輩、あんまりにも怖いようならリタイアしますか?」

 「そ、それはだめだ。やると言ったら最後までやるのが礼儀というものだろう!」

 「お化け屋敷で礼儀ってなんだよ」

 「と、とにかく!私はリタイアするつもりはない!……ひぃっ!?」

 「大丈夫かなあ?」


 その後、お化けが出てくるたびに大声で悲鳴を上げる先輩の声で、俺の鼓膜が破壊されそうになったものの、なんとかお化け屋敷を抜け出した。


 真に気を付けるべきは鼓膜だったか……


 「はあ……疲れた……」

 「それはこっちのセリフだよ」

 「お前、たまに敬語じゃなくなるよな」

 「仕方ないじゃないですか。敬語、慣れないんですよ。同学年としか話をしてこなかったし」

 「そういうものか?……ところで、有藤は昼はそれで足りるのか?」


 先輩は、俺の手に持つもの。クレープを見てそう言った。


 俺たちは今、時間もちょうどいいということで昼飯を食っている。

 先輩はフランクフルトなどそれなりの量を買ってきている反面、俺はクレープ一つだけだ。


 別に、普通に足りるからこれでいいのだが。


 「まあ、クレープは見た目以上に量ありますから。それに俺、甘いもの好きですから。甘党ばんざい」

 「ふーん……」

 「……?もしかして食べたいの?」

 「なっ!?そういうのじゃない!」


 俺の質問に挙動不審になる先輩。もはや肯定してるのと何ら変わらん。

 先輩が俺のクレープを凝視するもんだから気になったが、あっていたようだ。


 だが、先輩は必死にそれを否定する。


 「わ、私はそういうので見てたんじゃない!それ一つで、栄養は―――とか思ってただけだ」

 「大丈夫ですよ。今日だけだから」

 「そ、それに、そういう甘いのは私のキャラじゃない……」

 「はい、そんなの関係ねー。はい、あーん」

 「ちょ、なにを!?」


 俺は、手に持っていたクレープを先輩の前に出す。

 それを見た先輩は顔を真っ赤にして、困惑し始めたが、やはり食べたかったのか俺の渾身のあーんに応答した。


 「くっ……あ、あーん……」

 「ふふっ、どうですか先輩?」

 「あ、甘い……おいしいよ。……は、恥ずかしい……」


 クレープを口にした瞬間、さらに顔を真っ赤にして俯いてしまう先輩。ものすごく可愛い。それにきれいだ。でも、それ以上に……その先輩の羞恥に満ちた表情―――


















 ―――ゾクゾクするよ

以上、主人公も普通のSっ気のある高校生というお話でした。Sって言ってもライトなもので、異性がボロボロになってるのに興奮を覚えるような激ヤバなやつじゃないから安心してね。

でも、主人公はいつかその感情すらも……

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