勃発!Bの波乱/正義の守護者
「私は―――私は、娘を守る父親だ!」
「それを返せえ!」
シャルロットはナイフを取り返さんと手を伸ばすも、風見由香の父親がナイフを胸に刺すほうが数舜早かった。
ナイフが刺さった瞬間、風見父から波動が広がり強烈な風が巻き起こる。その勢いで、シャルロットは吹き飛ばされた。
「と……うさん?」
「由香すまない。お前の花嫁姿を見ることができなくてすまない。でも、この場は私がお前を守る。だから、もう泣くな」
「父さん、でも父さんはお腹に……」
「ああ、致命傷だ。だから変身を解いたら私は死んでしまう。だから最後くらいカッコよく逝かせてくれ」
「いやだ!私は父さんと……そうだ!母さんとまた旅行に行こう!熱海だ。家族で温泉に入ろう!」
「……有藤君と言ったかな?君にこの言葉が聞こえてるかはわからない。君が協力してくれるかはわからないが、娘を守るために力を貸してくれ」
「あはははは!あのガキは死んだんだよ!」
「君は知らないんだね。彼は正義の味方だ。だから彼は必ず悪を裁くために立ち上がる」
「だまれええ!」
風見父は、腕から剣を生成し、それを握る。
そして、走り出し間合いに入った。
まずは一閃、横薙ぎに斬りつける。だが、世間に知られているダイヤモンドの硬度を超えるロンズデーライトの体には一切の傷はつかない。
怪人態の時は、顔も変異して表情が分からないが、この時はシャルロットは狂気に満ちた薄ら汚い表情を浮かべていることが手に取るように理解できた。
「あはははは!そんな剣じゃ私には傷一つ付けられないんだよ!」
「確かに鉱物は斬りつけるような動きには非常に強い。だが、ある一転に対しての打撃は有効なはず」
「無理だよ!私の体にそんな弱点はない!」
「その言葉は科学者にあるまじき言葉だよ。ドクターシャルロット」
「うるせえ!」
風見父は、シャルロットの怒りの打撃を受けるが、彼にはさして効かなかったのだろう。平然と立っている。
そんな姿にシャルロットは心底むかついたのか、部下を攻撃し始める。
「ちっ、なんであいつは倒れねんだよっ!」
「ちょ、まっ」
部下たちは悲鳴を上げる間もなくぐちゃぐちゃにつぶれていく。彼女はもはや狂戦士だ。
「倒れない理由なんて単純だ。私はあなたの攻撃をすべて流しているんだ。流せばある程度ダメージは緩和できるんだよ」
「うるせえ!だったら、そんなのもできないくらい強力な一撃を!くらえっ!」
「くっ……」
ドゴオオン!
シャルロットの拳は、見事にヒットし轟音を上げる。
だが、その拳は風見父に当たっていない。なにに当たったかと言えば―――
「ゴホッゴホッ、いってえなあ」
「な!?お前は!」
「よ!俺も混ぜてくれよ!」
拳を受けたのは、瓦礫の中から復帰した、俺こと有藤大雅。
復活だ。
「風見先輩の父さん、あなたの声聞こえましたよ」
「ああ、ありがとう。それと私の名前は風見宗光だ。それに敬語もやめてくれ、私たちは仲間だろう?」
「そうだな。いくぞ、宗光!」
「おう!」
俺たちは、シャルロットに飛び込みやつきばやにスイッチを繰り返し攻撃を入れ続ける。宗光の剣が入れば、次の瞬間には俺の拳が入っている。
本来なら、強力なコンビネーション、長年コンビを組んだものにしかできないだろう。だが、俺の攻撃に宗光がすべて合わせてくれる。本当に助かる。
俺たちはそうやって攻撃するも、やはりロンズデーライトの体には効いていないのだろう。それでも衝撃でのけぞいたりはしているので、シャルロットも中々ストレスが溜まっているだろう。
「お前ら、そんな攻撃効いてねえんだよ!そろそろ諦めやがれ!」
「ちっ、確かに効いてる様子はねえな」
「だが、ドクターシャルロットの体に多くの攻撃でついに弱点が現れた」
「本当か?」
「彼女の体に石目が出現した。多くの攻撃で、彼女の体に石の断面が現れたんだ」
「で、それはどこだ?」
「私にしか見えない。剣の能力は【弱点看破】だ。腹部に攻撃の隙を作ってくれ」
「わかった。一撃で決めてやるよ」
俺は、右腕に力を集中させる。やってるうちに気付いたのだが、このパワー重視の姿なら前の姿よりもエネルギーを集中させられる。それもう―――発火するくらいに!
「勝負だ。グレネードフィスト……」
「くたばれ!未確認!」
俺とシャルロットの拳はお互いに衝突しそうなほどギリギリをかすめていく。だが、俺が狙うのは頭部ではない。
「この―――腕だああああ!」
「ぐっ!?」
そのまま俺は、シャルロットの左腕を上部に振り上げて右腕を左手で持ち、拘束するような動きで後ろに回る。
「宗光、今だ!」
「ありがとう、有藤君!―――ぐふ……。持ってくれ私の体!うおおおお!」
「クソッ!放せ!」
宗光が放った渾身の突きは、見事にシャルロットの腹部に命中し、そこを起点に亀裂が入り始めた。
「そんなバカな!地球上最高硬度のロンズデーライトだぞ!なんで!」
「君はわからないのか?石目のことを」
「そんなバカな!だが、私は砕けていない。ロンズデーライトは砕けない!」
「そうかな?今、その石目に俺の打撃が入ったらどうなるかな?」
「く……!」
「俺は面白いことが起こると思うな」
「クソがああああ!」
俺は、彼女の前に飛び出して腹部に先ほどの攻撃を再度ぶち込んだ。すると、俺の拳は貫通しロンズデーライトの体は見事に砕けた。
これで終わったな。
バタン!
俺がそう思った瞬間、宗光が―――いや戦いが終わったから宗光さんか……
とにかく宗光さんが倒れた。
「宗光さんっ!」
「あり……とうくん……ゴホッゴホッ」
「しゃべらないで、すぐ治します!―――え?」
「父さん!死んじゃだめだ!――――やめて、死なないで……」
俺は、宗光さんの異変にすぐに気づいた。それに気づいた瞬間、俺は絶望した。
そんな中、芽衣が俺に話しかけてくる。
「ねえ、大雅。治しなさいよ。それくらいできるでしょ?」
そんなことを言われても……
「……せねえ」
「え?」
「治せねえ。このやり方はマラークと同じだ」
「え?じゃあ、魂を?」
「ああ、魂を殺されてる。回復も蘇生も不可能だ」
「そんな……」
なんで、マラークの殺しの手口と同じなんだ?ふざけんなよ。人間なら人間の範疇を超えるなよ。魂なんて傷つけんなよ。なんで、宗光さんが死ななきゃならねえ。死ぬのはシャルロットの方だろ。
「有藤君、いいんだ。これは私に対する罰だ。家族を人質に取られたとはいえ、私は研究に加担してしまった。だから、報いを受けなければならない」
「ヤダ!父さん、旅行は?旅行に行くんじゃ―――」
「すまない。私にはそれはかなえられないようだ。そこの友達と一緒に行ってくれ」
「だめだ!そんなのは家族旅行じゃない!」
「由香、私の最後はカッコよかったか?」
「カッコよくない!家族を―――私たちを残す父さんなんかカッコよくない!」
「有藤君はどうだった?」
「カッコよかったですよ。勇敢に敵と戦うさま、本当に……」
今は流暢に会話ができているが、もうじきできなくなる。その証拠に、彼の目の輝きが薄くなっていく。
「有藤君、君のその姿に名前はあるのかな?」
「ないですよ。よかったら名前、ください」
「そうだな……だったら、正義の守護者【ガーディア】なんてどうだろうか?」
「いい名前です。今から、俺は【ガーディア】です」
「なら、ガーディア。私の娘を、人類を頼むぞ」
「はい……」
宗光さんは、俺に【ガーディア】の名を与えると、風見先輩の方を向いた。
「ごめんな、だめな父さんで……」
「許さない!許さないぞ!ここで死んだら一生許さない!」
「ははっ、一生許さない……か。父さんは由香が幸せになるのを天国で―――いや、私は地獄行きかな?地獄から見上げてるよ」
そう言うと、宗光さんの手が力なく地面についた。
「父さん!?父さん!ああ……ああああああああ!」
研究所に、父親を亡くした娘の悲鳴が響き渡った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はあはあ、まだ……まだよ。私はまだ強くなれる」
大雅たちに倒されたシャルロットは特別な脱出口から研究所を抜け出し、一人道路を這っていた。
そんな彼女に、近づく影が一つ。
「シャルロット=アンバニーですね。我々についてきてもらいます」
「お前は?」
「私はデザイアの横島啓明です。あなたの【バトルトルーパー】に出資をさせてもらいます」
「なに言って……」
そこで、シャルロットは気を失った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
事件から数週間。宗光さんの葬儀は行われ、その時も風見先輩は泣き崩れていた。
風見先輩は、あの時俺たちに依頼して、宗光さんにバトルトルーパーのことを聞かなければよかったと言っているが、俺はそうは思わない。
なぜなら、宗光さんが突発的に懐にナイフを入れていたとは思えないからだ。多分、宗光さんは元々、シャルロットのナイフの破壊を計画していたのだと思う。
計画通りに事が進んでいたなら、おそらく彼は一人で戦いを挑んでいただろう。そう考えるなら、今回のことは宗光さんにとって良かったのかと思う。
あの後、研究所にはガルガウズのチームが来て、地下から被害者が保護された。驚いたのが、その中にはガルガウズ装着者である神田さんがいたことだ。
彼のことはテレビでも報道されていたので、知っていたのだ。
それから、俺は怪人態―――【ガーディア】になっていたので、誰にも目がつかないように澄香の気絶態を回収して、姿を消した。
だが、芽衣はそのあと色々と事情聴取を受けてその日の夜に帰ってきた。ものすごく恨みがましい顔で見られたが、そこは仕方ない。
心配なのは、シャルロット=アンバニーが姿を消したことだ。今、彼女はなにをしているのだろうか。
だが一番の問題は、風見先輩があれ以降学校に来ていないということだ。
彼女は、あの件で深く傷を負った。それもう時間が解決するなんてことを言えないくらいに。
だからこそ、次の依頼人が、風見由香の母親だったのだろう。




