勃発!Bの波乱/被害者
「おはよう、ってあれ?神田君は?」
「今日はまだ来てないみたいです」
「珍しいわね。彼が私たちより遅く来るなんて」
「そうですね」
芹沢は、朝出勤すると神田がいないことに違和感をおぼえた。それもそのはずで、神田はいつも出勤時間より大幅に早く来て、芹沢と宇田を待つ形でいつもいる。
だというのに、今日はその彼がいない。違和感を抱くのは必然のことだろう。
それもそのはずで、今日、神田が出勤することはあり得ない。だって彼は今、出勤中どころか家にすら姿がないのだから。
「仕方ないわね。神田君が来るまで、ガルガウズの調整は出来ないわね」
「あ、そういえば一課から、というより金木さんからこんな情報をもらってます」
「え?あの男から?」
金木と聞いて、芹沢は渋々紙を受け取る。
そこに書かれていたのは、彼女が昔のことを思い出す資料だった。
「これは……」
「どうしたんですか?」
「これが本当なら、これの犯人はあいつしかいないわ」
「え?本当にどうしたんですか?」
「あの、クソ女、懲りないわね」
「だから、どうしたんですか?」
芹沢が思い出すのは、昔学会から追放された女の姿だった。
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「ただいま」
「お帰り、父さん……」
「なんだ?まだ寝ていなかったのか?子供は早く寝なさい。女の子なんだから肌にも影響が」
「なにか、隠してることはないか?」
「どうしたんだ?父さんはお前たちを不幸にするような嘘はつかないぞ」
そう言って、迎えをしてくれた風見由香の横を通っていく父。
彼の言葉に嘘はない。だが―――
(嘘つかない。とは、言わないんだな)
彼女の中で出来てしまった疑念は、一度膨らんでしまったら、簡単には拭えない。
風見由香の心は、父を疑う気持ちでいっぱいだった。
(父さんが間違った研究をしてるのなら、私が止めないと……)
この彼女の考えが、不幸の引き金を引いてしまうとは知らずに
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「中々、うまくいかないな……」
「どうしたの?」
大雅は、今日なんども図書館に入って調べ物をしているが、中々うまくいっていない様子だ。それを見て心配した芽衣が、声をかける。
「ああ、バトルトルーパーの実験体について検索しているんだけど、実験体AとかBでしか記載されてなくて、個人名が分からないんだ」
「行方不明届を見てみるとかは?」
「おそらくそれで、被害者の候補を絞ることができるんだろうが、そもそも行く不明者は年間何万人もいる。その中から絞るのは難しいだろ。それに―――」
「それに?」
「実験体の提供をほかの医療機関、会社とかが関わってたら、さらに追跡が難しい。数ある情報の中から、実験の取引のみを見つけるのは難しい」
「そう……じゃあ、防犯カメラの記録映像を見るのは?」
「はあ、映像を図書館で見る……の……は……そうか!オンライン上のカメラなら追跡が可能だ。データがネット上から見れる。IDとパスワードは図書館で調べることが可能だからそこから―――」
「どしたの?」
「―――不正アクセス禁止法で犯罪だよ!」
犯罪を追うために、犯罪を犯すのは違う気がする。だからと言って、防犯カメラの映像を渡してくれるだろうか?相手は、見知らぬ高校生だぞ?
クソ!八方塞がりだ。
「ていうか、なんで実験に連れていかれた人たちの情報が必要なの?」
「そりゃいるだろ。被害者の傾向から次の被害者を想定。そこに先回りして証拠を押さえる」
「研究所に乗り込んで警察に突き出せば?」
「俺も、色々調べられちゃうだろ。いきなり研究所に乗り込むんだから」
「それもそっか……正気を疑われるもんね」
今回は、マラークと違って一般犯罪だ。簡単に破壊、解決とかはできない。
警察に任せるべきだろうが、それもしづらい。今回の件は、この国の防衛大臣が関与している可能性がある。
今回、警察に頼ったら通報情報ごともみ消される気がする。
第一にすべきは、依頼の達成。父の非人道的な実験の加担を知った時の風紀委員長の悲しそうな顔を払拭するには、それしかない。
prrrrrrrr
「?」
「あ、澄香からだ」
「そうだな、なんかあったのかな?」
現在、3人は風紀委員長の父を張り込んでいる。交代でな。怪しい動きをしたら、すぐに対応できるように。
今は、澄香がその役割を担っている。
「もしもし?」
『大変!風紀委員長が研究所に入っちゃった!』
「は?」
『とにかく早く来て!なんか、研究所の中が少しだけ騒がしくなってるように見えるの。あ、やばっ』
「おい!どういうことか詳しく!」
プツッ
「あ、切れた」
「風紀委員長が危ないんじゃない?」
「そうだな。先走るなって言ったのに……」
俺は、急いでバイクに乗って(芽衣を後ろに乗せて)研究所に向かった。
研究所につくと、近くには異常な雰囲気が漂っていた。あたりを見回すと、澄香がいた。
俺たちは澄香のもとに行って、話を聞く。
「ごめん、研究所を注意して見すぎて、風見先輩が入っていくのに気付くのが遅れた」
「もう過ぎたことはいい。それよりなんだこの異様な雰囲気は」
「わかんない。でも、風見先輩が中に入ってからなったのはたしか」
「そうか。なら、確実に風見先輩がなにかしでかしたな」
そう考え、俺たちは細心の注意を払いながら、研究所に入っていった。
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「バトルトルーパー?」
「そう、私のいた大学の学会で、ガルガウズと競合していた研究よ。ただ、それはあまりにも非人道的すぎた故に、私のガルガウズのほうが有能だと言われた」
「どんな内容だったんですか?」
「人間の潜在能力を限界以上に引き出す薬物。一度使えば、その毒素が全身に駆け巡り、その薬を使わないと正気を保てなくなるのよ」
「なんですか、それ……ほとんど麻薬じゃないですか」
「そういうものよ。昔も戦時中の兵士に麻薬を吸わせていたのは事実。戦争や戦闘に薬物はつきものなのよ。不安という感情を押し殺すためにも戦い続ける機械人間を作るうえでも」
「そんなものが……」
「でも、そんなもの認めない。今は、使用者の命も預かるというのが私の考え。装着車を無視したガルガウズもあってはならないのよ」
「え、それってどういう?」
「宇田君、研究所に乗り込むわよ」
「え?仕事は?」
「は?そんなのは後にすればいいのよ!」




