Pが滾る/情報解禁
「いくぞ!」
「キシャアアア!」
病室の中で、俺たちの戦いは始まる。
最初は、優奈ちゃんの前での変身は避けようと思っていたのだが、思いのほか生身では戦闘能力差がお話にならなかったので、変わってしまった。
見た感じ、優奈ちゃんは俺に心底おびえているようだ。これ以上は、この病室で暴れるわけにもいかない。
そう考えた俺は、病室の窓を割り、5階の高さからマラークとともに落下した。
「きゃああああ!」
降りた先は、ちょうど病院の入り口だったために、多くの人の目についてしまう。
おそらく、避難すらもままならないだろう。
うーん……
どうしようか、ここで戦うか場所を変えるか。悩みどころだ。だが、場所を変えるといっても、あまり意味はないだろう。
確かにおびえている人もいるが、熱心に俺たちを撮っている人たちもいる。
と、その時、遠くからサイレンが聞こえてきて、機械鎧の男が現着した。
「皆さん、ここは危険です!早く逃げてください!」
「おお、なんか来たぞ!」
「あはは!これでSNSバズるぞ!」
「皆さん、本当に危険です!撮影をやめてこの場を離れてください!」
男が必死に野次馬を説得するが、一向に避難する様子を見せない。中には、撮影をやめて指示に従う者もいるのだが、やはり、こういう状況で撮影するような奴はバカしかいない。
そんな奴らの事情を加味する必要はない。
おもっきしやる!
「フシュウ……グギャアアアア!」
「な!?はやっ!?」
俺が戦いに集中しようとした瞬間に、間合いを詰められて吹っ飛ばされる。
今の攻撃、まったく目に見えなかった。
とにかく速かった。
「すう……【加速】」
「グギャアアアア!」
俺たちは、高速の拳で激しい打ち合いを始める。
激しくぶつかり合う拳からは、衝撃波が発せられ、猛烈な風を生み出していた。
それはもう、スカートをめくるくらいの風が……
こいつ……トラの頭してるくせに、全然スタミナ切れを起こさん。くそ、どうする?今俺が拳を下げたら、もろに攻撃を受ける。かといって、打ち合いをしても、ただのいたちごっこだ。
『ガンユニット安全装置解除。銀酸砲発射!』
「発射!」
ズドドドドドドドドドドド
俺たちが打ち合いをして、途方に暮れていると、横から弾丸が飛んできて、トラのマラークを攻撃する。
先刻、俺に撃ってきた弾と違って、少しサイズが大きいようだ。確かなダメージが入ってる。
『どう?宇田君。今までの弾丸は直径9㎜だったけど、今回は思い切って13㎜にしたわ』
『全弾命中!仕留めてはいませんが、明らかに活動に影響出てます!』
『よし!神田君、そのままドレードを倒すのよ!あの、クソ正義感馬鹿に見せつけてやりなさい!』
「わかりました。でも、芹沢さん。金木さんは、そんなに悪い人じゃありませんよ」
『はいはい、わかったから。安全装置解除』
『ガルガウズ、シグマブレード装着!異常なし、放熱状態に移行。速やかに対象を殲滅してください!』
男は、銃を撃って、命中を確認した後、剣を持って突撃してくる。あの剣で、とどめを刺すつもりなのだろう。
俺も使ったが、あれの破壊力はすさまじいからな。
そちらが仕留めるつもりなら、俺はサポートに回るか。
俺は、マラークを斬りつける男の隙を縫うように攻撃する。これで、実質的なスキはない。
俺の目論見通り、マラークはただやられるだけの、木偶人形のようになっていた。
「ぐふ……ごぼっ……に、人間……がっ……」
「はあ!うりゃあ!」
「グルルルルルルル!」
ん?なんだ?
マラークが、斬られているのにも関わらず、突然動かなくなった。
『対象の動きが停止』
『神田君、そのまま畳みかけて!相手は相当弱ってるわ!』
「はい!」
『待ってください!これは……』
―――!?なんだ?ものすごい力を、あいつから感じる。
『体内内包熱量900KJ……1000……7500000KJ、なにこれ?急に跳ね上がった?』
『なによその熱量は!神田君、今すぐ防御姿勢に入って!』
まずい!
力の溜め方から、前方方向に射出するつもりだ。
「【加速】!」
「ぐわあ!?」
敵のエネルギー放射直前、俺は思いっきり加速して、男をぶっ飛ばす。目論見通り、弾道から男が外れた。
あとは、こっちだ。
俺はさらに、エネルギー弾を追い越して、軌道上に立ちふさがる。
「だあああああああ!とまれええええ!」
ドン!
俺は、マラークの攻撃を受け止める。なーに、受けきれない威力じゃない。
今、俺が避けたら、俺の後ろにある病院に直撃してしまう。
ある程度の人は避難できてるかもしれないが、なんの準備もなしに重篤患者の避難ができるとは思えない。
ここは、俺が止めるしかない。
どう計算しても、男の鎧じゃ、耐えきれる熱量じゃなかった。必然的に俺しかいない。
そうやって俺が受け止めていると、突然爆発した。
その衝撃で、俺たちの視界は煙によって、完全に閉ざされてしまった。
煙が晴れると、マラークの姿はどこにもなくて……
「逃げられた……」
ふう……とりあえず、誰もいないところで変身を解こう。
そういうわけなので、俺は一斉にこちらにたかってくるマスコミらしき軍団から逃げるために、力を使って、芽衣の家に飛んだ。
ついでに、俺が芽衣宅に帰宅した後、優奈ちゃんに今日のことは誰にも言わないように、釘を刺しておいた。
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次の日
世間は、昨日の劉生総合病院の前に現れた怪物の話題で持ちきりだった。
『警察は、こういった怪人を【ドレード】と呼称し、対策をしてきたとのことです。
しかし、被害は拡大していく一方で、すでに300人ほどの方がドレードの犠牲になっているとのことです』
『どうして、ドレードのことを世間に公表しなかったんですか?』
『大きな混乱を避けるために、公表を控えていました』
『今現在、どれだけの被害が出ているんですか?』
『確認できているだけで、400件強ほどで、被害はなぜか東京などの首都圏に集中しており、海外でのドレード出現の報告はありません』
『では、なぜか日本の、しかも東京にしかドレードは現れないということですか?』
『現時点でそう断定することはできません』
「ほんと、最近はマラークの話で持ち切りだね。しかも、マラークじゃなくてドレードって言ってるの、ちょっとだけ混乱しちゃう」
「絶対に学校でマラークって言うなよ。世間ではドレードで通ってるんだから」
「そういう大雅も、今や日本の有名人だけどね!」
「やめてくれ……」
俺たちは、朝テレビを見ながら談笑をしていた。まあ、まったく笑えない状況ではあるが。
世間は、確かにマラークに注目しているのだが、それと戦っていた龍人も注目を浴びていた。
『やはり、ドレードも気になりますが、私たちが注目したのはこちら』
じゃじゃん!
『劉生総合病院でドレードと交戦していた未確認存在です。
この龍人の姿をし、とてもドレードに似た存在は、人を襲わずドレードの攻撃から病院を守りました。果たして、この存在は人類にとって味方なのか敵なのか。
ゲストの弘中さん、どう思いますか?』
『そうですね。現状、その龍人が味方である保証はどこにもありません。今回は、龍人にとって都合がよかったから病院を守っただけであって、本当は人類の敵。なんて可能性もあり得ますからね。楽観はできませんよ』
「あはは!ウケる!大雅、めっちゃ疑われてんじゃん!あんなに人助けたのに!」
「まあ、人間なんてそんなものよ。私たちが大雅の考えを理解してればいいだけよ」
「お前ら、発言には気をつけろよ?安いハーレムメンバーみたいなこと言ってるぞ?」
「別にいじゃない。大雅のことは私たちが理解してる。澄香と私がいつでも味方ってことよ」
「まあ、ありがとうな」
テレビとかのメディアでは、俺に対する批判的なコメントをする人間が多いが、SNSなどのネット社会では、思いのほか評判がいい。
少しだけ驚いたが、テレビで批判されすぎて辟易していた俺にとっては、オアシスのような場所だった。
やっぱり、批判されるよりは必要とされたほうが、守りがいがあるってもんだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はあ……はあ……人間……あんなに強く……」
「これ以上はいけない……排除……破壊……殺……」
「み……に……し……ご……んっ……んっ……はっ……ろ……げっ……なっ……!」
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