Pが滾る/後輩という化け物
俺たち、部活の3人はゲームをした後、病室を出て作戦会議をしていた。その中で、澄香が気になる発言をする。
「大雅、優奈ちゃんはたぶん私たちと同じ」
「どういうことだ?」
「能力者ってこと」
「根拠は?」
「さっきのゲーム。百発百中はやりすぎ。普通の人ならすごいで済むかもしれないけど、私たちは力があることを知ってる。
それに、橋本先輩が依頼したとき、熱が出てるって言ってた。私もなってるの。あの、カラスのレイトになる前に」
「ふむ……」
澄香も、似たような状況にあったか……
だとするなら、優奈ちゃんが能力者である可能性は高いか?
「でも、澄香の言ってることが正しいなら、マラークに狙われるんじゃない?そこらへんはどうするの?大雅」
「確かに芽衣の言うとおりだ。優奈ちゃん本人だけでなく、その家族である橋本先輩も危ないな。とりあえず、澄香が……学校があるか」
「警察に匿名で通報するのは?」
「うーん……動いてくれるかなあ?」
「まあ、動いてくれなかったら私が頑張るよ。大雅は優奈ちゃんのそばにいてあげて」
澄香がそう言うなら、任せるか。なら、明日から俺は優奈ちゃんと行動を共にするか
「大雅、私はどうすれば?」
「うーん……芽衣は能力があるわけでもないし、戦う能力があるわけじゃないしな……」
「芽衣は、なにか情報収集をしなよ。たぶんそれくらいしかできることないよ」
「う、うん……そうだよね……」
ちょ、澄香、ストレートに言いすぎ!
澄香に言われた芽衣は、目に見えて落ち込む。そのまま彼女は意気消沈したまま帰宅した。
ガラガラガラ
俺たちはそれをよそに、俺が優奈ちゃんのそばで調べたいことがあること、そして澄香は橋本先輩と自宅に行って、話を聞きたいという旨を伝えた。
もちろんでっち上げだ。まあ、守ることが目的だしいいだろう。
そんなこんなで、俺たちは次の日からそれぞれにつきっきりになるのだった。
今思ったけど、配役逆のほうが性別的に自然じゃね?まあ、いいか。手出すつもりないし
「今のって、大雅だよね?あの女たちって確かうちのクラスの……」
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次の日、面会可能開始時間
俺は、朝いちばん―――って言っても、朝の10時だが
幸い、警察は俺たちの匿名の通報を信じてくれたらしく、橋本先輩の両親に護衛がつくことになったらしい。
そのおかげで、澄香も橋本先輩も問題なく学校に行けるらしい。
警察が保衛についてくれなかったら、澄香が家で全員を見守る以外の選択肢はないとか言ってたしな。
「おはよう優奈ちゃん」
「おはようございます、有藤さん」
「別に名前呼びでもいいよ。なんか慣れねえわ」
「いえ、恋人以外の異性を下の名前とか愛称で呼びたくないです」
「そうか、ならいいや。お兄さんに思いが届くといいな」
「……っ!?な、なに言って!?」
優奈ちゃんは、なぜそれを!?と言いたげな表情をする。この子、わかりやすいな。やっぱり子供だから、表情が前に出やすいのか?
まあ、見ていて、気分がいい。
「わからないわけないだろ?あんなに好きな人を見る目でお兄さんを見てたら」
「や、やめてください!はずかしい……です……」
「でも、兄弟じゃ結婚できないだろ?」
「……じゃ、ないです」
「ん?」
「兄弟じゃ、ないです!」
「!?」
今、この子なんつった?え、橋本先輩の妹って、義妹だったの?
うわ、なにそのラブコメ展開。まさか現実にあるとは……
「え!?」
「私とお兄ちゃん―――いえ、お義兄ちゃんは、両親の養子なんです」
「……」
「お父さんとお母さんが、子供ができないのに悩んでいて、養子縁組を組んだらしいんです。そのあとに私を身籠ったらしくて……」
「どうしてそれを?」
「お義兄ちゃんの赤ん坊のころの写真がなくて……正確にはあるんですけど、私と違って両親と撮ってる写真がいちまいもなくて、問い詰めたんです」
「ああ、それで……」
すっごいベタだ。確かに、義兄妹なら結婚までいける。ただ―――
「橋本先輩はそれを知ってるのか?」
「両親は教えてないそうです」
「そうか……なら、早くしたほうがいいぞ。橋本先輩も、高2なんだ。いつ、彼女の一人や二人連れてきてもおかしくないだろ?」
「う、それはそうだけど……」
そう言いながら、顔を真っ赤にする優奈ちゃん。うっは、かわいい顔すんじゃん!
「想像してみ、自分以外の人が橋本先輩とキスしてるところ」
「う……いやだ……」
「なおさら早くしな。大好きな人が誰かに取られると、結構心に来るぞ」
「経験あるんですか?いや、半分あって半分ないな。あれは俺が付き合えって言ってるからノーカンか?」
「?」
「きゃああああああああ!」
突如、病院内から悲鳴が聞こえてくる。
ピシ―――!
それと同時に、俺の頭にも電撃が走るような感覚がする。
マラークだ。しかも、この病院にいる!
まあ、予測をしていたけれど
俺は、優奈ちゃんを背にするように立って、入り口を見据える。
「どうしたんですか?」
「いいから、絶対にそこを動くなよ」
「は、はあ?―――って、きゃあああ!」
優奈ちゃんの悲鳴を聞いて、俺は入り口を見直す。すると、そこにはトラの頭をしたマラークがいた。
「レ……イ……ト……」
「や、やあああ!」
「しっ!」
俺は優奈ちゃんの悲鳴をよそに、マラークに拳を入れる。
先手必勝!
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私は今ものすごく混乱してる。
なにせ、いきなり私の病室に化け物が入ってきたからだ。
見てくれは、トラの頭をした怪人だが、見た目以上の不気味さを感じる。
私がここまでの恐怖を持ったのは、いつ以来だろうか?いや、もしかしたら初めてかもしれない。
そんな中、お義兄ちゃんの後輩の有藤さんが、殴りかかる。ものすごく様になっているのだが、やっぱりそんなのは相手に効いていないらしく、まったく怪人は動じていない。
ダメです。逃げてください。
その二言が私には言えなかった。
怖すぎて、誰かにいてほしかった。
だが、私の目の前で信じられないことが起きた。
有藤さんは、なんどか怪人にボディブローを入れて、ものを投げつけるなど色々健闘はしたが、すべて効果はいま一つだった。
だからか、怪人が有藤さんに向かって攻撃するために間合いを詰めてくる。
だけど、有藤さんは怪人の攻撃を受け流した。
だけど、すれ違いざまに有藤さんの姿はなく、代わりに龍の顔をした化け物が立っていた。
有藤さんが―――お義兄ちゃんの後輩が化け物だった




