クールなI/復讐の女王
神田達、ガルガウズシステムの3人は、目の前で起きた出来事を信じられないような目で見ていた。
「人間がドレード?」
『いや、あのドレードは彼女のことを【レイト】と言っていたわ。もしかしたら、奴らの敵対勢力なのかもしてないわ』
『神田さん、どうするつもりですか?』
「あのカラス型のレイト?を援護します!」
『『了解!』』
神田は、安全装置が外れているシグマブレードを持って、澄香の援護に回る。だが、そこで予想外のことが起こる。
「邪魔をするなあ!」
「ぐわぁ!」
『神田君!?』
「こいつは私一人で殺す!邪魔するのなら、あなたたちも殺す!」
その気迫に神田は、押される。
自分よりも圧倒的に強い怪物からの命令。彼には、恐怖を覚えないわけがなかった。
「そうか、完全にレイトに進化したのか。あの時に殺しておくべきだった」
「うるさい!今度はお前を殺す力を手に入れたんだ!【来い】!」
澄香がそうね念じると、彼女の背後に二人の使い魔が現れる。
「【殺せ】!」
「ギャアアアアア!」
「キシャアアア!」
「フギンとムニン……創造物が好きな人間らしい能力だ。だが、私にはおよば―――」
「言ってろっ!」
まだ何かを言っているグレイを無視して、澄香は使い魔たちと3人で、殴り始める。
だが、澄香の怒りはこの程度では収まらない。
「お前が!父さんと母さんを!絶対に!絶対に!」
「フハハ!弱い!弱すぎるぞ!さては、覚醒して1日も経っていないな?力の使い方を一つも理解していない」
「うるさい!」
激高した澄香の拳は何発もグレイの拳をとらえてはいる。
だが、ダメージが入っているようには見えない。
それどころか、拳は完全に受け止められてしまっていた。
「力の使い方をなにも理解していないようだな」
「なにを言って―――ごふっ……」
澄香は腹に掌底を入れられ、体制を崩す。そこに間髪入れずに、使い魔に対して氷の力を使う。
すると、澄香の使い魔はあっという間に消えてしまった。
「クソ……なら私の手で!」
「フン!だから言っているだろう。弱すぎると!」
そう言うと、今度は澄香本人に対して力を使った。
「アガアアア!」
澄香は氷漬けにされた痛みで絶叫する。
氷漬けに痛みなど存在するのかは甚だ疑問だが、澄香は苦悶の表情を浮かべる。
そこに、黒い影が飛んでくる。
「む……?」
それをグレイは避ける。
飛んできた黒い影は、先ほどグレイが大雅に向けて放ったカマキリのマラークだった。
「おい、俺の大事な友達に何してくれたんだ!」
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俺は、少しだけ驚いていた。突然、3人目のマラークが現れたかと思ったら、怒りながらグレイに向かっていくのだから。
あれが澄香だと気付くのに遅れた。まさか、彼女も俺と同じだとは思わなかった。
彼女の戦いぶりを見ながら、俺はカマキリと戦っていたのだが、彼女がピンチということで早々に戦いに参加しようとしている。
「ギシャアアアア!」
「うるせえな!【燃えろ】」
俺は力を発動させて腕を超高温にする。そして、その腕で敵の土手っ腹に拳を叩き込んだ。
すると、腕は見事に敵を貫通して絶命させる。
やはり、マラークにも低級と上級に似たような階級が存在している。
明らかに、今の奴とグレイでは知能に差がありすぎる。
だが、そんなことを気にしている暇もない。なので、俺は倒したマラークの死体をグレイに投げつける。
そんな俺の動きを読んだのか、グレイは死体を避ける。
「倒したのか……」
「あんな雑魚じゃ、俺を殺せないってわけだよ」
「そうか……想定外だな。正体不明がここまでの力を持っているとは……」
「ここからは俺が相手だ!」
「ふん!」
グレイは、俺に向けて氷の塊を投げつけてくる。
そして、それらは破裂して、思わず俺を含め奴に敵対している者たちは目を背けてしまう。
「ちっ、逃げたか……」
「野郎……逃げるな!私と戦え!父さんと母さんの仇を!」
「落ち着け!おいっ!」
「人間がドレード?まさか、そんな……」
今の状況は一言で言うと、カオスに限る。
なので、俺は一度引かせてもらうことにした。
「おい、俺たちはもう帰る。あんたも引き続き保護のほうを頼むぞ」
「あ、ああ……そ、そうだ!君たちは何者なんだい?」
「知らないほうがいい……」
「父さん……!母さん……!」
「だああ!落ち着けって!【眠れ】」
あまりにも澄香が収集つかないので、力を使って眠らせる。前にも似たようなことがあったな。いや、芽衣は聞き分けはよかったな。
「【転移】」
「き、消えた……一体、ドレードはなんなんだ?」
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あれから数日
澄香は、グレイと戦った時よりも圧倒的に力の使い方がうまくなっていた。
彼女の能力は、【百神招集】。自身の使い魔をいくらでも召喚する能力だ。
先の戦いで出した二人の使い魔も能力のうちなのだろう。
いや、神と言っているから使い“魔”ではなく使い“神”かな?
しかし、彼女は力を手に入れたために、復讐の力を手にしたと思っている。奴らと同じ力を持つこと。その恐ろしさは彼女なら理解できそうなものだが、今は、少し前が見えてないように見える。
だが、彼女は貴重な戦力だ。この先マラークと対峙していくうえで、彼女の力がくすぶるなどあってはならないことだ。
俺は彼女の力をつけることに協力する以外の選択肢はない。彼女が復讐を目指して、今は戦っていても、彼女を変える存在が現れることを祈るのみだ。
俺がやればいいとも思うが、そういうわけにもいかない。俺も俺とて、由愛のことで本当は心がいっぱいいっぱいだ。
我ながら最低だと思うが、由愛にキスをされてもなんの反応もなかった。
それが、ショックで仕方なかった。
どれだけ由愛を遠ざけても、どんなに拒絶しても彼女を好きでいる自信があったから。だというのに、俺は彼女の心を簡単に裏切った。
俺はこれからどうしていけばいいのだろう?
これからといえば、芽衣の父親に、俺と澄香の怪人化について話した。
結果は意外にも、家にいてもいいと言ってくれた。
梓隆一は、俺たちの変わり果てた姿を見ても、怖がることもなく滞在の了承をしてくれた。本当に優しい父だ。本当に芽衣は幸せ者だ。
お父さんっ子になるのも納得だ。
ついに覚醒した澄香の力。それが吉と出るか凶と出るか。それは今の俺達には知る由もなかった。




