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クールなI/覚醒のカラス

区切り悪かったんで、長めになってます

 大雅に突き飛ばされて、教室に残された由愛は呆然としていた。

 だが、決して大雅に拒絶されたのが、原因ではない。


 そんな由愛のそばに岩貞がやってくる。


 「大丈夫?―――あいつ、次会ったら殴ってやる……」

 「やめて……大雅は何かを怖がってる」

 「なに言ってんだ!あいつは恋崎を捨てたクズなんだぞ!」

 「あなたこそどうしてわからないの?親友だったんでしょ?なんでそこまで大雅を信用しないの?」

 「それは―――」


 由愛のことが好きだから。

 そんなことを言えるほど、岩貞は肝は据わっていない。


 そのせいで、言いよどんでしまう岩貞。


 しかし、その行動は由愛にとっていやなものに見えてしまったのだろう。


 「本当に最低だよ!自分の親友も信じないで!もういい!私に関わらないで!私一人で大雅の心を救うから」

 「なっ……」


 由愛はそう吐き捨てると、教室を去っていった。

 まあ、教室移動で、授業のある教室に移動しただけだが。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「あっつい……体中が燃えてるみたい」


 そう言いながら、澄香はシャワーを浴び続けている。

 彼女は学校の2時間目あたりから、体の異変を感じ取り早退していた。


 熱を測ると、温度が高すぎて、体温計はエラーを吐いたし、仕方なく水銀の温度計をわきに挟んだら、体温が60℃を回っていた。


 澄香はパニックに陥りそうだった。だが、大雅はそれ以上に苦しい状況にいる。そう思ったら、なぜか心は保つことができた。


 「なにこれ……冷水をずっと浴びてるのに、体の火照りが収まらない……」

 『戦え』

 「へ?なに?誰かいるの?」


 澄香のもとに唐突に声が聞こえる。あまりの唐突な声に、自分が裸であるのにも関わらず浴室をふらふらし始める。


 しかし、声の主の姿は全くとらえることができない。


 「気のせいか……」

 『戦うんだ。運命に……マラークから生き延びしものよ。ネフィリムの僕として、レイトになるがいい』

 「レイト……?なにそれ?」

 『さあ、戦うのだ』

 「うぐ……か、体が……」


 「戦え」


 声がそう発すると、澄香の全身に激痛が走り始める。あまりの激痛に声が出なくなる。


 呻きながらのたうち回っていると、自身の視界に化け物の腕が目に入る。

 いよいよ、この間の化け物が自分を殺しに来たのかと思ったが、澄香は気付く。







 その腕は、自分の腕だということに


 「い、いや……いやあ……」


 浴室に叫びにならない叫びが消えていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「芹沢さん、あのドレードは本当に人間の敵なんでしょうか?」

 「わからないわ。でも、あいつはこの子たちを守った。その家族も守るように言った」

 「でも、この前は神田さんに攻撃してますよ」

 「それも、自己防衛のためでしょうね」

 「ドレードは、なにが目的なのでしょうか?」

 「さあ、人間じゃないものの考えなんてわかるわけないでしょう?」


 ガルガウズシステムの運用チームの3人は、口々に意見を述べる。


 話題はもちろん大雅の変身している龍人タイプのドレードだ。

 先刻での、大雅の行動は3人の再考をさせるには十分だった。


 従来の考えでは、ドレードは人間を殺すだけの存在だった。だが、大雅のように人間を守るドレードもいる。もしくは、ドレードに対抗する第三の勢力なのではないか、と。


 「そういえば芹沢さん。奴はドレードのことを『マラーク』と呼称していました」

 「そうね。私も気になって調べたんだけど、神々の使いとか『使徒』という意味らしいわ」

 「神の使い……使徒……確かに奴らの能力は人知を超えていて、人間じゃ到底できないような殺し方をしていますが……」

 「もしかしたら、殺されている人間たちは、神罰を下されるようなことをしたのかもしれないわね」

 「芹沢さんは、この子たちもそんなことをしたっていうんですか?」


 神田は、芹沢に向かって子供たちを向ける。子供たちの純粋な目に芹沢は目を背けてしまう。


 「そうは言ってないわ。ただ、神の掟は人間の法律とは違うのかも。もしかしたらその子たちが狙われているのはそういうのが理由なんじゃない?」

 「……そうですか」

 「じゃあ、引き続き、あのドレードは攻撃せずに援護すること。もし、敵対行動をとられたら終わりだと思いなさい。どうせ、あいつを倒すシステムがないんだから」

 「わかりました」


 そう言うと、各員はそれぞれの配置についた。


 「せめて、ガルガウズΩが使えれば、戦局は確実に有利に進められるのに……」


 そんな芹沢の呟きは、誰にも聞かれることはなかった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「あれ?澄香は?」

 「ああ、今日は早退してた。なんか体が熱っぽいって」

 「そうか。なら帰りにポカリでも買ってくか?」

 「そうね、私と澄香は家族だから」

 「はは、俺ってどんな顔してあの家にいるんだろうな」

 「いつも申し訳なさそうに使用人たちにしてるせいで、なんだこいつとは思われてるけど、いやなやつとは思われてないから、もっと自信もっていいんじゃない?」

 「なにを?」


 保健室を出て、教室を後にした俺は、いつもの部室に来ていた。最近は、澄香の姿も多く見受けられたので、彼女がいないことは少し違和感になってしまう。


 というか、最近は本当にサブを見かけない。成長が早すぎて、子供として学校に入れなくなったか?あはは、それなら面白しろい。


 ただ、二人がいないと部室は少し静かだ。


 芽衣も、澄香が家に来てから口数が減ったというか、雰囲気が暗くなったというか……

 とにかく彼女は変わった。やはり、他人が来たことで緊張が解けないんだろうか?


 「ねえ大雅」

 「ん?なんだ?」

 「私のことどう思う?」

 「質問の意図がよくわからんが、まあ一般的に見たら可愛いとか思われるタイプじゃないのか?」

 「大雅自身はどう思ってるの?」

 「はぁ……?俺か……俺が思ってること……恩人かな」

 「恩人?」

 「ああ、最初に戦う決意をさせてくれたし、住居の提供に全く反対しない。今、俺が普通に生きてるのは、半分くらいは芽衣のおかげだ」

 「そ、そう……」


 そう言って、そっぽを向く芽衣。心なしか耳が赤くなっている。


 彼女はなにを悩んでいるのだろうか?仮初とはいえ、今は俺と芽衣の間柄は恋人関係だ。浮気していることになっている俺の相手が、暗い顔をしていたら、また変な噂が立ってしまう。


 まあ、どうでもいいことではあるが。


 だが、知っている人間が暗い顔でいるのはどうにも見過ごせない。


 「大丈夫か?」

 「なにが……?」

 「いや、なんか様子がおかしいから」

 「なんでもないよ。私はいつも通り」

 「……辛くなったらなんでも言えよ。俺ができることならなんでもするから」

 「……ありがと」


 そういう彼女は、明らかに大丈夫な目をしていない。本当に寂しそうだ。


 ピシ―――!


 マラーク!?


 「出たの?」

 「ああ……」

 「行ってきて。大雅のするべきことなんでしょう?」

 「そうだ。ごめんな、偽の恋人って言っても、デートの一つもできなくて」

 「いいんだよ……」


 俺は、反応のある場所に向かって走り出した。


 「みんなみんな澄香のことばっかり……」


 そんな芽衣の呟きは誰の耳へとも届かない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「う、うわあああ!」

 「あ、あなた!」

 「ち、近づくな!」


 先刻、俺が助けた子供の親を守る形で、警察の護衛が怪物に向けて銃口を向けている。


 機械鎧の男は俺の警告を聞いてくれたみたいだ。


 パンパンパン


 発砲音こそ聞こえるが、相手には全く効いている様子はない。


 「だあああああああ!」

 「うぬ……!?」


 俺は、怪物をつかんで一緒に家の外に出る。

 窓ガラスを割ってしまったが、許してほしい。


 「マラーク、てめえらはなんのために能力者を殺している」

 「オーヴァーロードはレイトの存在を許してはいない。自分の子ではないものを主は愛せない」

 「なに言ってやがる?」

 「原初の生命の生みの親である主が、殺せと命じてらっしゃる。なら、アイスロードのグレイは、その命に従い、能力者を殺す」


 こいつの言っていることが全く理解できない。訳が分からん。


 オーヴァーロードとはなんだ?奴らの頭か?

 それにアイスロードだと?もしかして、組織の幹部的なやつか?


 「私は任務遂行のために、お前の相手をしている暇はない。レイトでも人間でもない貴様は、主が裁きを下す」

 「は?なに言ってんだお前」

 「グルアアアアアア!」

 「どわっ!?」


 俺は突如、カマキリの頭をしたマラークに襲われる。


 ちっ、こういう時に―――いや、あいつがけしかけたのか?

 奴の頭は見てくれだけならカマキリだ。ただ、奴らは人知を超えてる。警戒は最大限にするんだ。


 「殺す……」

 「そうかい……やれるもんならやってみろ!」

 「グラアアア!」


 奇声とともに、奴は切りかかってくる。奴が振りぬいた後、背後がボロカスに切れていく。どういうこっちゃいな。


 俺は当たったらひとたまりもないと、そのすべてをよけ続ける。

 クソ……隙がねえ!せめて拳の一撃でも入れて体制を崩せればいいのだが……


 そんな中、あいつがやってきた。


 「ガルガウズ、現行しました」

 「馬鹿!こっちじゃねえ、ここの家の中にマラークがいる。夫妻の命を狙ってるのはそっちだ!」

 「芹沢さん!」

 『確かに、護衛からの報告だとドレードは家の中にいるらしいわ』

 「そっちは大丈夫ですか?」

 「そんなこと気にするな!俺みたいな怪物より人間守るのが仕事なんだろ?」

 「わかりました」


 俺の言葉を受けて、機械鎧の男は家の中に急行した。


 機械鎧の男―――神田は、家の中に入ると、先刻の子供の命を狙っていたドレードを見つけた。


 「芹沢さん!」

 『こんな家の中で撃てるわけないでしょ!外に出して!』

 「わ、わかりました!」


 神田は、グレイを掴んで外に出る。あ、手で掴んで出たわけじゃない。まあ、ほぼタックルみたいな感じだった。


 「人間に用はない」

 「あなたになくても、僕にはあるんです」

 「レイトでもなんでもない奴らはただ平穏に生きていればいい」

 「あなたたちのせいで出来ないんですよ!」

 『ガルガウズ、ガンユニット安全装置解除!特殊粒子散弾砲発射!』


 ガガガガガガガガガガガ


 『弾薬の被弾確認。熱源確認―――いや、熱の低下?周囲の温度が下がってる?』

 『神田君気を付けて!』

 「それが芹沢さん、ガルガウズ、動かせません!」

 『なんですって?ある程度の冷気には耐えれるはずよ!』

 『脚部ユニット凍結!歩行不可です!』


 神田が、どうにかしてガルガウズを動かそうとするも、それもかなわずにグレイの出した氷弾に被弾する。


 「ぐ、ぐうう……」

 『左腕部ユニット損傷!』

 「芹沢さん!銀酸砲を!」

 『わかったわ!安全装置―――』

 『だめです。他の熱源を感知。シルエットから人です!』

 「ひ、人……?避難勧告はしてるんじゃ?」


 煙の奥のほうから、人影が近づいている。だが、神田にはそれ以上を視認できない。ガルガウズの頭部がやられてしまったのか、カメラが不調のようなのだ。

 だが、シルエットから髪型が分かったようで、性別は判別できた。


 「女の子……?」

 『神田君、動ける?早く、あの人の避難を!』

 『神田さん!無理言わないでください!』


 神田の視認していた女の子は途中で歩みを止める。


 「お前が、お前が父さんと母さんを!」

 「レイト……」


 神田からは見えていないが、正体は澄香だった。


 澄香は、かわいい顔を怒気に染め、言い放った。


 「絶対に許さない!」


 彼女の姿が、カラス型のドレードに変化した。

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