クールなI/失ったもの
「……」
「お前はレイトではない。ここはいったん引く……」
「待て!」
機械鎧の男が現れると、マラークはすぐさま引いていった。
ただの人間は殺さないのか?
やはり奴らの行動は一貫して能力者とその家族の抹殺。
今の俺じゃ奴にかなわない。力の差がありすぎる。
俺は、子供たちをかばって動くことができない。本当は、奴に殴り込んで殺してやりたいが、状況的にも不可能だ。ここはおとなしくするしかない。
『引いた……わね。これ以上の深追いはやめて、被害状況の確認をしなさい』
「わかりました芹沢さん。ですが、その前にあのドレードを……」
『神田さん、だめです!対象の抱えている中に熱源を感知。人間です。それも生きてます!』
「なんだって!?」
一瞬、俺に対して銃口が向いたが、すぐに降ろされる。
子供がいることに気づいたのだろうか?早く保護させないと……
「―――っ!?」
『負傷している?子供たちを守っていたの?』
「芹沢さん、そんなはずはありません。奴はドレードです。人間を守るなんてありえません」
俺は、男に子供を見せるために動くが、あまりの痛さに動揺が動きに出てしまう。
凍傷だろうか?めちゃくちゃ痛い
子供を確認した男は、俺を無視して駆け寄ってくる。
「二人とも、怪我はありませんか?」
「う、うん。そこの人が守ってくれたから」
「お、お兄ちゃんのいう通り……」
「そ、そんなはずは……」
俺が、子供たちを守ったことが信じられないのだろう。俺のほうをちらちらとみてくる。鬱陶しいな。
「あのマラークは、おそらくその子供たちをもう一度狙ってくるはずだ。護衛でもつけておけ」
「は?」
「そうだ。狙われた奴の家族も狙われるっぽいから、そいつらの家族にも護衛をつけろ」
「なにを根拠に……」
「今まで見てきたものの統計だ。早くしろ」
俺はそれだけ伝えると、バイクに乗って現場を立ち去ろうとする。
ふと、俺は思い出した。
「そうだ。すまなかった」
「なんのことだ?」
「先刻の屋敷の件だ。自己防衛のためとはいえやりすぎた」
「……」
「そいつらのことは頼んだぞ」
それだけ残して、俺はその場を去っていった。
はあ、無様だな。仇をとるって約束して、俺が深手を負った。
負けたくせに偉そうに……
俺はなにをしてるんだか……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はーい―――って、どうしたのその怪我!?」
「ちょっとドジ踏んじゃって……やらかしちゃいまして」
「そのまま、ベッドに横になって!どうしましょう。救急車を……」
「救急車はやめてくれ」
「え?そう……とりあえず応急処置だけするわ。あとはベッドで横になってて」
「はい……」
あれからしばらくして、俺は傷を治そうとしていたのだが、まったく治らずに保健室に駆け込んだ。
救急車を拒否したのは、検査されるのがいやだったからだ。
今の俺の体が、一般人と同じ保証なんてどこにもない。だからこそ、余計な混乱は避けるべきだ。
それのために養護教諭には、余計な世話をかけてしまう。本当に申し訳ない。
だが、これで分かったことがある。
マラークの攻撃は、通常の怪我などと違い、魂そのものに傷が生じる。その場合は、自然的な治癒を望むしかない。
魂――つまり、人間の核が傷ついた状態。どれだけ見てくれが治っても、中身が壊れてる。そんな状態だ。
これでは、俺の超回復も使えない。
養護教諭に包帯などを巻いてもらい、俺は安静にすようにとだけ言われて、放置されている。いや、まあ処置以外にできることがないから仕方ないけども。
俺はしばらく寝ることにした。
どのくらい寝ていたかは、自分ではわからないが、起きたら昼休みになっていた。おそらく2,3時間は寝ていたのだろう。
傷はまだ痛むが、寝る前ほどじゃない。首筋くらいまであった傷も、今は腕だけになっていた。
完全に動かせるわけじゃないが、動かすことができる。これなら、問題ないだろう。
「すいません」
「あ、有藤君。起きたのね、怪我はどう?」
「おかげでだいぶ良くなりました。だから、俺はもう教室に行って出席とってきます」
「わかった。でも、無理しないでね」
「わかってますよ」
保健室を後にした俺は、教室に向かう。
今日はHRに出ていない。なら、教室にいるであろう先生の所に出席を取りにいかないと、条件が満たせない。
ガラガラガラ
ドアが開くと、一斉にこちらに視線が集中する。
「ああ、有藤か―――ってどうしたその怪我は!?」
「落ち着いてください。今はなんともないんで。遅刻理由はこれです」
「わかった。以後気をつけろよ」
「はは、善処します」
100パー無理だな。マラークの中にはあれより強いのがわんさかいるはずだ。
なら、怪我は回避できない。
「じゃあ、今日は遅刻扱いだ。喜べ、皆勤賞は消えたが、精勤賞はある」
「いや、喜びませんよ」
「まあ、あんまり周りを心配させるな。私にとって、お前も大切な生徒の一人だ」
「わかりました」
なんていい先生なのだろうか。これでギャンブル狂いじゃなければ、結婚も容易にできていただろうに
「あ?なんか失礼なこと考えたろ?」
「いえ、そんなことありません。ただいい先生だなって思っただけですよ」
「そうか?それならいいが……」
「それじゃあ、また明日」
俺は、先生と会話だけをして、教室を去ろうとする。
しかし、数人の女子に取り囲まれてしまった。
「今日こそは逃がさない、この浮気男」
「そうそう、恋崎さんを泣かせたこと、許せない」
「お前らに何の関係がある?」
「ないわけないじゃん!クラスメイトが、クラスのマドンナが泣いてんのよ?」
「はあ、クラスのマドンナに近づいて自分の地位を上げたい魂胆が見え見えだ」
「はあ?あんた何様のつもりよ!」
「なに様もくそも、てめえらが余計な考えもって恋崎さんとからもうとするからだろ?あいつはその辺聡いからな。お前らは仲良くなれねえよ」
「いわせておけば!」
少し煽ると、すぐに激高する女子数名。本当に図星なのだろう。
別れた俺がいうのもなんだが、こいつらは由愛と一緒にいるべきじゃない。
俺の好きな人は、もっと純粋笑いあえる人といてほしい。
「やめて!大雅にひどいことしないで!」
そんな中、訴えるように叫ぶ女子がいた。まぎれもない、由愛だ。
「でも、恋崎さん、こいつはあなたを……」
「それはあたしたちの問題!クラスで私が泣いちゃったせいだけど、あなたたちは口出ししないで!」
「ちっ、なにこの女。きもいんだけど」
そう捨て台詞をはいて去っていく女子たち。JKは気まぐれだ。
そうして、実質二人だけの空気になった瞬間に、由愛は俺に飛びついてキスをしてくる。
初めての時にしたディープなほうだ。
「大雅、私はあなたが好き。今でも諦められない。もし、大雅の心が私から離れてるのなら、もう一度射止めて見せる」
そう言って、何度も俺の唇に向かってキスを続ける由愛。俺は、思わず突き飛ばしてしまう。
「いたっ」
「はあはあ……そんなはずは……」
「大雅?」
「―――っ!?」
俺は、教室を走って飛び出した。
「大雅!?」
あの時は由愛とキスしただけで、興奮したのに……なんで……なんで……
なんで、なにも体が反応しないんだ!




