クールなI/守護龍
色々あって更新が止まってました
澄香を助ける直前、いきなり声がした。いや、頭に響いたというのが正しい表現だろうか。
『戦え』
突然、その言葉は俺の頭に響いてきた。
それと同時に、詳細な場所まで明示されたので、俺はすぐにそこに向かった。
駆け付けた先には、今にもマラークに殺されそうになっていた澄香の姿だった。
俺は、彼女を守ることが精いっぱいで、マラークを退けることが限界だった。
今回のドレードは、今までの奴らと違って、ものすごく強かった。どんなに攻撃しても再生し、全然倒せなかった。
頭つぶしても倒せないのはさすがに驚いた。
それから色々あって、割とすぐに阿内澄香は、梓家に迎えられることが決まった。
その流れで彼女は転校することになり、うちの学校に来たのだ。
例のごとく、彼女も俺の能力のことを知っているので、旧図書室に入り浸るようになるのだが、それはもう少し後の話。
そして、俺は今澄香の部屋の前にいる。
俺には、彼女に渡したいものがあるのだ。後回しになんかできない。大切なものが。
彼女の両親の死に様は、カメラにしっかりと刻まれていた。
最近の世の中はなにかと物騒なので、家に室内カメラをつけている家も一定数存在する。彼女の両親も、娘になにかあった時のために、カメラを設置していた。だが、皮肉にも自分たちの死に様が記録されることになるとは思っていなかっただろう。
彼女の両親は、氷漬けにされて、澄香の名を呼びながら砕け散った。
本当に一瞬だった。なにが起こったのか理解する前に、彼女の両親は死んでしまった。いや、どんなに時間があろうと、澄香は両親の死を理解したくなかっただろう。
そんな彼女に必要なのは、俺みたいな半端な奴の言葉じゃなく。大切な人の思いだ。
コンコンコン
「澄香、入っていいか?」
「いいよ」
俺は彼女の了承を得て、部屋に入る。
「なんの用?」
「これ、渡したくてさ。原本は破壊されてないんだけど、俺の能力ならさ、複製はできるからさ」
「なにこれ?」
部屋に入ってすぐに、彼女の目じりに目が行ったが特に触れずに話を進める。
「澄香の成長日記だ。お前の両親は、お前の成長を一日単位で書いていた。欠かすことなくな」
「これをどうしろと?」
「とりあえず読め。そうすれば、お前の両親の残した思いもわかるはずだ」
「思い……?」
「ああ、お前がどれだけ大切にされてたかが、よくわかる。俺は、中身なんて興味ないからな、この部屋をすぐに出ていく。誰かが泣いてても、誰も気にしやしないさ」
「……」
俺はそれだけ言うと、部屋を出て行った。
それからしばらくして、澄香の鳴き声が聞こえてきた。
「……はあ、泣き声……大きすぎだよ……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
次の日、少しだけすっきりした表情で食事をしている澄香がいた。
おそらく、彼女の中で区切りがついたのだろう。もう、彼女は大丈夫だろう。
「大雅」
「ん?どうした?」
「ありがとね。おかげで少しだけ元気が出た」
「大したことじゃねえよ。やっぱり人は笑ってるのが一番だな。こっちも気分がいい」
「ふふ、そうだね。ごちそうさま!二人とも、のろのろ食べてると、置いてっちゃうよ!」
そういうと彼女は、制服に着替えるべく、自室に駆けていった。
そんな彼女を不満交じりに見る女子がいた。
芽衣だ。
「なによ。全然起きないで、制服にすら着替えてなかった癖に」
「まあまあ、澄香があれだけ元気になったんだ。ここは、笑って見過ごそう」
「……それもそうだね。あんなに暗い彼女を目の前にご飯食べるのは辛気臭いったらありゃしない」
「おまえ、絶対本人の目の前でいうなよ?」
「はいはい、大雅は過保護すぎ。まあ、そこがいいところなんだろうけど」
「あ?褒めるのか喧嘩売るのか、どっちかにしろよ?」
ちなみに俺と芽衣は、すでに制服姿だ。
澄香は、朝が以上に弱く、昨日までもそうだったが、今日は輪をかけて遅かった。何かが吹っ切れたのだろうか?
「ほら二人とも学校行くよ!」
「はいはい、少し待ってな」
「はあ、うざ……」
「あー、うざいとか言わないで!傷ついちゃう!」
「そういうのがうざい」
「うがー!」
ピシ――!
「!?」
「どうしたの?」
「マラークだ」
「!……どんなやつ?」
「お前の両親を殺した奴だ。ついてこさせないぞ」
「わかってる。でも、必ず倒して。仇をとって」
「了解した。必ず倒す」
俺は、気配のする方向にバイクを走らせて向かう。
ドレードは、なぜか能力に目覚めたものを殺している。しかも、本人だけでなく、その家族も殺しているのだろう。
依然として、奴らの目的が分からない。
能力者を殺すことになにか意味があるのだろうか?
そんなことを考える前に、まずは目の前の命だ。
「ふー……はあぁぁ」
俺は集中状態に入り、レイトの姿になる。不思議なことに、バイクも禍々しい姿に変化した。
なんだこれ?まあ、バイクで正体が割り出されることはなくなるだろうな。
しばらくすると、マラークの姿が見えてきた。
俺はそのままマラークにバイクで突進する。
突進されたマラークは、吹っ飛ばされる。
今回狙われていたのは、小さな子供たち。見たところ兄妹だろうか?
「え、なに?また、化け物……」
「大丈夫だ。兄ちゃんが守ってやる!」
おびえる妹に、それをかばう兄貴。いい絵だ。純粋で、守る価値のある正しい人間だ。
「レイト……」
「勝負だ」
そうして、俺とマラークの殴り合いが始まった。
奴らに、能力の干渉はできない。なら、肉弾戦だ!
「うらあ!」
「ふん!」
俺の肉弾戦に対し、奴は能力を使ってくる。奴は黒い何かを飛ばして、けん制してくる。
近づきたくないのが、見え見えだ。
俺は、至近距離に詰め込み、顔面をこぶしでとらえる。
入った!
「【燃えろ】!」
「ぐううう……」
効いてる!このまま……
ドンッ
いきなり、俺の腹部に衝撃が走る。
奴の反撃だ。
「ゴホッ」
「危険だ。生かしてはおけない」
「ゴホッゴホ、ぐえ……」
呼吸がままならない。やっぱり、強い。ほかの奴らと違って、地力の差が激しい。
「だが、レイトになりそうなものを先に殺す」
「!?―――させるかよ!【加速】!」
俺はすぐさま、兄弟をかばうように抱え込む。
直後、俺たちの周りに冷気が漂い始める。
氷結の能力……なら
「【燃えろ】」
俺は、限界まで周囲に熱を放つ。少しやりすぎなのではないかと思うが、思いのほか奴の冷気は強く、なんだかんだ相殺している。
「お兄ちゃん!」
「大丈夫だ!俺が……俺が」
「安心しろ。必ず守ってやる!」
しばらくすると、銃声が聞こえてきて冷気が止んだ。
それと同時に、俺は放熱を抑える。だが、反動で動けなくなってしまう。
おそらく、機械鎧の男が来たのだろう。
今回ばかりは助かった。




