挿話 「あの日、何があったのか」
忘れ去られた頃合いを見計らってこっそり再開。お久しぶりです。リハビリ回。
未明まで降った霧雨で街道は適度に湿り、黄土色の土埃も今は大人しく地面にとどまっている。
ラハティへと続く道の向こうから、かぽりかぽりという音を立てて一両の馬車が進んでいた。御者は恐らく四十半ばあたりの年頃の男で、隣には十歳ほどだろう兄弟と思しき子供が二人並んで座っている。御者の男は振り向くことなく、荷台に座る男と会話を続けていた。
「…と、いうことでしてね。この度、幸いにもティッケリの商会で奉公させていただけることになったので、こうして親子ともどもご挨拶に伺おうというわけで…」
「ふむ。だが、その年で親許から離すというのは寂しくはないのか?」
細身だが大振りの剣の鞘を傍らに立てかけ、腕組みをしていた男が尋ねた。
「もちろん、寂しくないと言えば嘘になりますがね。ですが、生まれたのが男だと聞かされたあの日から、いずれこうなるような予感はしておりました。なんせ男ですから。いつかはどこかに巣だって行ってしまうものです。たまたま、ウチの場合はそれが人様より少しだけ早かっただけですよ。……さあ、旦那方。もう目的地のキュベレイの丘ですよ。お降りの際はどうかお忘れ物のないようにお気をつけ下さい。」
停まった馬車の荷台から、男たちは熟練の冒険者らしい手際の良さで食糧の入った箱だの天幕の入った布袋だのを降ろし始めた。
「いきなり馬車に乗せろなんて頼んで悪かったね。これで、皆で何か美味い物でも食べておくれ。」
力仕事を仲間に任せ、眼鏡をかけた柔和な顔の魔導師は御者に幾許かの硬貨が入った小さな布袋を握らせた。思いもよらなかった金属の厚みと重さに御者は恐縮し、やや狼狽しながら言った。
「旦那、こりゃあ貰いすぎです。」
黒の長衣に魔杖といかにもな姿こそしているが、実は教会の説教師か何かではないかと思わせる優しい顔で、魔導師の男は子どもたちの頭を撫でながらこたえた。
「いいんだよ、何も言わず貰っておきな。今日はボフスラフで投宿だと言ってたね?それなら『白鶴亭』という宿に行ってごらん。今の時期ならナガナキドリを美味い料理で出してくれるだろう。坊やたちにも腹いっぱい食べさせてあげたらいい。」
「すいません、それじゃあ遠慮なく頂戴します。旦那方もどうかご無事で。」
「ああ、そっちこそ道中気をつけるんだよ。坊やたちも、辛いことはあるだろうが自分の力を信じて精一杯頑張ってごらん。きっと道が開けるはずさ。」
「「 はい! 」」
時折こちらを振り返る親子連れに手を振って応え、馬車が朝靄のむこうに見えなくなるまで魔導師の男は彼らを見送り続けた。荷の確認を終えた剣士の男が声をかけてきた。
「『自分の力を信じて頑張れ』か、いいこと言うじゃないか。」
「最近、市民学校の教師たちが『君はやればできる子だから』と一緒にしてよく使う言葉さ。教育者の責任を放棄して、結果が出ないのはお前の頑張りようが足りないからだと突き放す感じがするから私は好きじゃないんだけどね。それでも、根が素直な子ほどこういう言葉をかける人間を自分の理解者だと誤解して『あの人はいい人だ』と思うようになる。だからね、将来あの兄弟が成功者になった時、家族や店の者を前に今日のことを思い出して私に感謝しながら人に言うはずさ。『あのとき魔導師のお兄さんがああ言ってくれたからこそ、今の自分がある』なんてね。痛快なことじゃないか!いやあ、本当に便利な言葉だよねえ……」
「…いつものことながら、オマエのその微妙な黒さはどうにかならんもんか?……」
「おい!二人とも、いつまで呑気にやってやがんでえ!」
荷物の確認を終えた三人目の男が目深にかぶったフードの下から声を張り上げた。
「昼前にひと仕事終わらすつもりなら、とっとと野営地まで行かなきゃ話んなんねえだろが!モタモタすんじゃねえや、すっとこどっこい!」
「焦るんじゃないよ、別に目当てのモノは逃げたりしないんだからさ!」
「モノは逃げないが、今回許可された探索時間は限られてる。ここはアイツの言う通りにしとこう。」
「やれやれ…。寿命は私らなんかより随分長いんだろうに、なーんであんなにせっかちなんだろうねえ……?」
三人は馬車から降ろした荷物を手に、早朝の丘陵地を歩き始めた。
雨雲が次第に薄くなり、朝の光が柔らかな草の上の露を輝かせていた。
◇ ◇ ◇
丈の短い草原が広がるなだらかな丘を、男たちは互いに声が届くギリギリの距離まで離れて横一列になって歩いていた。
剣士の男は焦っていた。
昨年、遂に念願の白銀板章を手に入れて名実ともに高位冒険者の仲間入りを果たした。仕事の実入りもよく、縫物の得意な妻のために小さな店を持たせてやることもできた。二人の子供もすくすくと成長している。傍から見れば十分に幸せな人生に見えた。
それでも男は焦っていた。
自分が冒険者として第一線で活動できる時間は、よくて残り十年くらいのものだろう。
だが、その限られた時間の中でいったい何ができる?いったいどれほどの「生きた証」を残せる?どうすれば俺という人間の軌跡を歴史に刻むことができる?……
口減らしのために家を出なければならなくなった十二歳の冬、寒村の貧しさを呪ったり親兄弟を恨んだりする代わりに彼は夢を見た。
『いつか、絶対にすげえ男になってやる。貧しさに負けない、強い男になってやる。』
港町の荷役夫として二年働き、ある日、年少者をいたぶる組頭をぶん殴って海中に放り込んだ結果、やくざ者に捕らわれてケジメとして片腕を切り落されそうになった。
あわやというところを一人の冒険者に救われた。
その強さに心底惚れ込んだ。
男はこうあらねばならないと確信し、無理を言って彼のパーティーに着いて行くことを許してもらった。
それからおよそ二十年。
畑に鍬を打っていた頃は自分に備わっているなどと夢にも思わなかった剣才に目覚め、幾多の死線をくぐり、やっと今の場所にたどり着いた。
しかし男は満足しなかった。
『白銀板章は、毎日を生き残って、たとえ小さくとも結果を出し続けさえすれば誰でも到達できる通過点に過ぎない。もっと、もっと上へ。今すぐにでも……』
そんなことを思い続けていたせいだろうか。ある日、男は仲間の魔導師が持ちかけた話に食いついた。
「キュベレイの丘を中心とした一帯に、未だ発見されていないダンジョンが複数眠っている。それを私たちで最初に見つけて、最初に攻略してみたいとは思わないか?」
◇ ◇ ◇
魔導師の男は悩んでいた。
金の切れ目が縁の切れ目、とばかりに学院を文字通り叩き出されたあの日から十数年。
糧と寝床を得るためにやむを得ず冒険者の身となったが、学究の苑を離れても男は常に研鑽を忘れず、魔法に関する技術の上達と知識・経験の積み重ねに努めて来た。
金がない。ただそれだけの理由で人を虫けらの如く扱ったかつての師や同輩の先を男は歩み続け、遂に白銀板章を手にするに至った。今や彼を「貧乏人の背伸び」だの「ペテン魔導師」だのと馬鹿にする者はない。
いや、正確には少し前まで何人かいたのだが、人気のない路地や冒険者ギルドの訓練場などで行われたごく短い「話し合い」や「試合」の後は全く姿を見なくなっていた。
結婚を約束した恋人ができ、他人の鼾に悩まされることのない自分だけの「城」も手に入れた。多くの人間から羨まれ称賛される成功者の一人となったはずだったが、同時にどこか満たされない思いを抱え込むようにもなっていた。
『…なんでこんな気持ちになってしまうんだろうね……?』
パーティーで商隊の護衛をしていたある日、盗賊の襲撃を受けた。
腕のいい仲間のエルフが事前に察知していたこともあって、相手は数十人もいたがこれを返り討ち、頭目と副頭目の二人を捕縛して残りは二度と悪事のできぬ身にしてやった。
町に戻って衛士に引き渡す段になって気がついた。
盗賊団の頭目は、かつてごく短い間だけ籍を置いていた学院で、平民の出であることを理由に「学ぶ意味も価値もない」とことあるごとに男を蔑み、暴力すら振るったこともある教師であったことに。
どんな事情があったのかは知らないが、貴族階級の末席に名を連ねることのみを誇っていた最低のクズ野郎は、本当に最低の存在に落ちぶれてしまっていたのだ。
犯罪者の引き渡しから数日後。不浄地の刑梯に吊るされ風に揺れる死体を一刻ほどの間も眺め、男はその場を後にした。
『アンタの言ってた通りだったね。私はアンタらとは違う。私が歩いていくのは、アンタらよりももっと高い所に続く道、輝ける道さ。』
自宅に戻った男は、かねて調査と研究を進めていたある案件に関する資料を自分が身を置くパーティーの会合の場に持ち込んだ。
「これをご覧よ。私の見るところ、現在は入会地となっている丘陵地に未踏の埋蔵ダンジョンが複数存在する可能性が高い。それを私たちで発見し、攻略してみないか?」
正直なところ、戯事扱いされるだろうと思っていた。
国内で新たにダンジョンが発見されたという話はここ十年ばかり聞かなくなっていたし、ましてや自分が示した土地はラハティから歩いても一刻ほどの原野だ。周辺に影響力を持つ貴族家の諍いを防ぐために敢えて手付かずに近い状態で残された土地だったが、中央官庁が食糧増産の政策をうち出したことにより、二年後には灌漑工事や農地造成工事が始まることが計画されていた。事前に行われた調査では、埋蔵ダンジョンらしきもの、それにつながる何か手がかりのようなものが見つかったという報告はなかった。
『私の見立てでは間違いないんだが、信じろと言っても無理な話だろうね…』
だが、意外なことに他の構成員から帰ってきた答えは
「おもしろい。」
「やってみる価値はあるかもな。」
「お前の言うことだから無視もできんだろうが。」
といった肯定的なものばかりだった。
リーダーは翌日には動き始め、市の参事会と交渉を行ってパーティーの共同資産から少なくない額を支出した結果、二週間の調査が許可された。
あれよという間に話は進んでいった。
三日もすれば、近くパーティーに正式加入することになっている二人もこの場にやって来る手筈になっている。
そしてこの期に及んで男は悩んでいた。
「これでもし見つからなかったら、どういう風に誤魔化すのがいいのかねえ……」
◇ ◇ ◇
フードの男は苦しんでいた。
いずれ氏族を率いることになる公子の重圧と身内間の足の引っ張り合いに耐えきれず故郷を離れ、父母の与えてくれた名を捨てて所謂人間社会に飛び込んで数十年。出会いと別れ、成功と失敗を何度も繰り返し、遂に最高の仲間たちと出会うことができた。
『コイツらになら、俺は安心して背後を任せることができる。』
決して口には出さないが、男は心から仲間を信用し信頼していた。
しかし今、男は苦しみの中にある。
その原因は、仲間たちにも決して見せることのできぬ、また別の尻にあった。
『……ハラいてぇ……』
昨夜の深酒が悪かった。ついでに言うなら肴に選んだ品の食い合わせも悪かった。物知りげな古老の言うように、ある種の魚と漬物は決して一緒に食べてはならぬ組み合わせだったのだ。
下腹は地竜の唸り声のようなゴロゴロという音を発し、腸はまるで意思を得たかのように好き勝手な運動を始めていた。腹膜を引き千切るかのような痛みが断続的に訪れ、本来固く閉ざされるべき門は熱く粘り気のある怒涛を前に(後ろに?)して、その役を果たせなくなる未来がやって来ることが占術を能くせぬ自分にも容易にわかった。
歩みを一歩進めることは処刑台の階段を一つ上がることと何ら変わらず、終末はその影を踏めるほどの距離にまで近づいていた。
故に男はその場所を探していた。
今回この丘陵地まで足を運んだ、その本来の目的である埋蔵ダンジョンの入り口ではない。
誰からも見られることなく気づかれることなく、心おきなく生物の本質的行動を成せる場所を、である。
だがここはゆるやかな丘陵地。しかも来年には農地としての開拓が始められる予定の土地である。己が身を隠せるような場所、林や藪などどこにも存在しない。蹲踞の態勢をとったが最後、四半里先からでも行為の全てが観察され、尊厳と名誉は汚辱に塗れたものとなるだろう。
『さすがの俺もここまでか……』
覚悟を決めたその時、それが男の目に入った。
中型の湯船ほどの大きさで、子供の身長ほどの深さの小さな窪地。
『ありがてえ、天祐だ!』
流れ落ちる脂汗も拭わず、男はよちよちと奇妙な内股で歩いた。慎重に近づき我が身を沈める前に暫時観察をすると、窪地の底には誂えたかのように手桶ほどの大きさの穴まで開いているではないか。穴はどれほどの深さがあるのかわからないが、今やそんなことを気にしている場合ではない。これは正に、神が地獄の底に垂らしたもうた救いの糸なのだ。
歩く震動が菊門を刺激せぬよう、熟達の狩人が森でするかのような、己が体重を打ち消す流動歩法で滑り込み、ズボンのベルトを緩めて下着ごと一気に引き下げる。
相応の深さがある窪地ゆえ、しゃがみ込んでしまえば周囲から見られることもない。
『助かったぜ。やっぱり教会の布施はケチるもんじゃねえな……』
窪地の底に空いた穴めがけて、男は苦痛の縛めから我が身を解き放つ。
湿り気を帯びた、角笛のような音が響いた。
その後に続く低く長大な残響が穴の深さと、その奥底に広がるであろう大空間の存在を教えた。
十秒と経たぬうちに男の居た窪地とその周辺の地面が震動を始め、やがて少しずつ沈み込み始めた。
「陥没!?畜生!!」
立ち上がろうにも、下着とズボンが膝下あたりで引っかかり動くに動けない……!
「おんがあああああああああああああああああッ!!!!!」
地面は、男が身を隠した窪地を中心に見世物格闘の闘技場のような大きさと形を保ったまま、二階屋根ほどの高さを落下した。
神話の巨人が打ち鳴らす戦鼓のような轟音が大地を揺らし、落下した地面が巻き上げる土埃が噴煙のように周囲を包む。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
異様な音と光景とに接して、剣士と魔導師はもう一人の仲間がいるであろう場所、雷雲が地に落ちたように煙る地点を目指して走り出した。
「オスモ!いったい何が起こった……って何だこの大穴は!?ぶほっ…うぉっほ!おい……ファビオ!オマエ落ちたのか?大丈夫か?無事なら返事しろ!……っていうか、何だそのマヌケな格好は!?」
地面に空いた大穴の淵から底をのぞき込む男。
千変万化し絶え間なく攻め続けるその剣風から『奔流』の二つ名を持つ剣士であり、冒険者パーティー『颯』のリーダーでもある。
トールヴァルト・フレデリクソン。
「これからの十年で自分に何ができるのか」を気にしていたこの男は、今日から十年近くに渡って未踏ダンジョンの探索と攻略に奔走し、「いつになったら自分は休めるのか」ということを心配しなければならなくなる。
「トール!私の言った通りだったろう?あそこをご覧よ、前王国時代より昔の様式の柱と回廊だ!あれこそが埋蔵ダンジョンへの入り口だよ!さあ、探索を始めようじゃないか!」
穴の底に転がっている仲間が目に入っているだろうに、一向に気にしていない様子の男。
冷徹な観察眼と広範な知識を武器に幾度も仲間を危機から救い、狂気と妄執とに彩られた好奇心から幾度も仲間を危機に導く「歩く諸刃の剣」。
オスモ・ティーリカイネン。
ここも合わせ三箇所の埋蔵ダンジョンを発見、自身が身を置く『颯』をそのすべての攻略に導き、『見抜く目』の二つ名で呼ばれるまでは今しばらくの時間を必要としている。
「………どうにでもしやがれってんだ、クソッタレが……ああッ、また……そんな?……くぅっ……あはぉぁん……」
下げたズボンと下着が拘束具となって足を固定したためM字開脚&はずかし固めの格好で大穴の底に転がり、中天から挿しこむ陽光に真白な尻を曝け出す男。
あらゆる投射武器の扱いに秀で、種々の魔法も能くする、斗酒なお辞さぬ酒豪のエルフ。
ロッソの森、アントネッロ氏族の元・公子。現在の名乗りはファビオ。
三年後、ダンジョン下層部で傷ついた仲間を護るために小型とはいえ狡猾で凶暴極まりない疾風竜を相手に単身で戦い、見事これを討ち果たして屠龍者の栄誉と『風斬り』の二つ名を得る。
…が、信頼していた仲間から当面の間は陰で『えんがちょ』もしくは『う〇こマン』と呼ばれる悲劇に見舞われることが決定している。
同日夕刻、宿場町ボフスラフの宿で――
「…にいちゃん!はやくはやく!……うわっぷ!……いってえ……」
宿に急いで入ろうとした少年が一人の女性とぶつかり、バランスを崩して尻もちをついた。
「む。少年、あまり急ぐと危ないぞ。ほら、立てるか?」
冒険者らしい旅装をした銀髪の女は少年の手を取って立たせてやる。
「はい、ありがとうございます……」
「なにやってんだよバカ!…お姉さん、ごめんなさい。弟にはよく言って聞かせますから許してやってください……」
遅れてやってきた少し背の高い少年がぺこりと頭を下げて謝ると、女は優しく微笑んで二人に声をかけた。
「ふふふ。元気がよいのは結構なことだ。だが、君ら自身の安全のためにも、もう少し注意すると良い。」
「「 はい。 」」
「よろしい。それでは少年、達者で暮らせ。」
灰紺色のマントを翻し、女は宿屋の前に停められていた四頭立ての馬車に乗りこんだ。見れば魔法灯を六つも提げ、客室部分の後方には冒険者ギルド統括本部を示す長三角旗が立てられている。女が乗り込んだのを確認した御者は、短い発声と共に鞭を打って街道へ向けて馬を走らせ始めた。
「ほぇ~……」
「すげえ……」
ガラガラという車の音が宵闇の中に消えた頃、大きめの鞄を抱えた男が姿を現した。
「…やっぱり宿場町に限るな。どの宿屋にもそれなりの厩舎があるから助かる。……どうした二人とも?口をぽかんと開けて……。」
「にいちゃん、冒険者っていってもいろんな人がいるんだね。今朝みたいにウチのおんぼろでもいいから乗せてくれって人がいるかと思えば、さっきの人みたいに王様みたいな馬車に乗る人もいるんだ……。」
「うん。それに…あのお姉さんキレイだったな……」
「え~!?でも白髪だったよ?ぼくたちがわかんないだけですっごいおばあさんなんじゃないの?」
「何も知らないんだな、あれはブラチラ・ブロンドって言うんだぞ。」
後で長男には迂闊な発言をせぬよう言いつけなければならないなと苦笑いし、男は息子たちの肩に手を置いて中へ入るよう促した。
「さ、ヘルマンもマックスも今日は疲れたろう?汗を拭いたら、冒険者オススメのこの宿の料理を腹いっぱい食べさせてやろう……」
「「 やったあ! 」」
「あ~全然OKっすよ」などと軽い気持ちで言った結果、一日の移動距離が倍に、仕事量はそれ以上に(本人感覚比)増えてしまい、ちゃっちゃっくちゃらになっておりました。何となく落ち着いてきましたのでぼちぼち続けてみようかと。お愛想尽かしでございませなんだら、篠田のバカ話と今一度のお付き合いをお願い申し上げまして再開のご挨拶に。




