1 プロローグ
遅延を謝罪するアナウンスが聞こえる。
俺は竹刀袋をかつぎその列車に乗った。
しばらくすると発車メロディーが鳴り、列車が発車する。
俺は列車の壁に寄っかかった。
前を見ると見慣れた景色がどんどん流されていく。
さすがにこの景色も飽きるな……
俺はふと運転席を見る。
運転手が列車のスピードを上げていくのがわかった。
列車がカーブに差し掛かろうとした時、いきなりガクンと衝撃が走った。
「がはっ」
俺のからだが痛みに悲鳴をあげる。
何か言おうとするが出てくるのは自分の血だけだった。
なんだ?なにが起こったんだ?脱線事故か?
俺まだ、録画してるアニメを見てない。
それなのに死ななきゃいけないのか?
ふざけるな。
死ぬんだったらせめて夢の異世界転生をさせて、くれ……
そこで俺の意識は途切れた。
《称号『付喪神』を獲得しました。スキル『吸収』を獲得しました》
なんか変な声がするな……
もう少し眠らせろよ……
《スキル『視覚』『聴覚』を獲得しました》
ん?
スキル?
なに『視覚』って。
《スキル『視覚』『聴覚』を常時発動しますか?》
なんか分からんけどYES!
するとまわりが少し明るくなった。
そして目の前には岩が……
ホワッ!?
なにこの状況!?
よく見ると俺のからだは刃物のように輝いていて先端が岩に突き刺さっていた。
上のほうには柄と鍔がある。
これ……刀?
いやぁたしかに異世界転生させてくれとは言ったけどなにこれ。
意味不明なんだけど。
ていうか俺の目どこさ!?
オーケー。
落ち着け俺。
まず俺は脱線事故にあって死んで異世界転生したら刀だった。
それは事実。受け入れよう。
さて本題、この状況をどうやって突破しよう。
俺は考えて、考えて、考えまくった。
そして俺は思い出した。
さっき寝ぼけてるときになんか声がしたよな…
たしか……『吸収』?
よくわかんねーけどやってみっか。
でもなんて言えばいいんだろう。
《スキル発動方法。スキルを発動する意思表示をすれば発動します》
なるほど!
では、『吸収』発動!
俺は岩を吸収していった。
このスキルは吸収したいものだけを吸収できる便利物だ。
おかげ様で自由の身になった。
俺のからだが宙に浮かぶ。
これはスキルとは関係ない俺の特殊能力らしい。
俺がいた場所は洞窟のような場所だった。
コウモリのような生き物に突っ込んで刀身をコウモリに突き刺し吸収する。
まずはからだを手に入れよう。人間のからだを。
そしてその目で世界を見てみたい。
というか普通の人になりたい。
目指せ! 人化!
そう俺は心のなかで宣言して大量のコウモリを串刺しにした。