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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第94話 復讐鬼

 私は帝都の城内を散策する。

 各地でエルフの怨念を発動し、彼らに粘液の身体を与えながら解放していった。

 そうして残る生き残りの殲滅へと移る。


「ひあぁぁ! やめろ! 死にたくないっ」


 倒れた兵士が滅多打ちにされていた。

 兵士を囲うエルフ達が鈍器を執拗に振り下ろしている。

 身動きの取れない相手を痛め付けることに喜びを感じているようだった。

 わざと急所を外して長く楽しめるように工夫している。


 やがて兵士の顔面が陥没した。

 飛び出た眼球を踏み潰したエルフ達は、次の獲物を求めて彷徨う。

 死体には興味ないらしい。


「助けてくれェ! 誰か、お願いだっ!」


 廊下を走って逃げる貴族がいた。

 今までどこかで隠れていたが、ついに見つかってしまったのだろう。


 そんな貴族を追いかけるのはやはりエルフ達だ。

 彼らはどこかで調達した弓矢で貴族の足を縫い止めると、腹を裂いて臓腑を引きずり出した。

 苦悶する貴族を窓から落として拍手する。


 エルフ達は互いに笑顔で盛り上がっていた。

 生き生きとした表情で両手を血に染めている。


「クソが……悪魔め……」


 上半身だけとなった騎士が呪詛を吐いていた。

 床に這いつくばる彼は、血と腸をこぼしながら前進する。


 その先にいるのは年若い少女だ。

 どうやら恋人かそれに近しい間柄らしい。

 少女は胸にナイフを突き立てられて死んでいた。

 懸命に近付こうとする騎士も、涙を流しながら間もなく動かなくなった。


「エルフどもめ。呪ってやるぞぉ! 貴様らは絶対に許さない!」


 執事と思しき初老の男が、細剣を振るいながら叫ぶ。

 先ほどからエルフ達を相手に戦闘を行っているのは知っていた。

 既に血だらけだが、上手く致命傷を避けて立ち回っている。


 相当な手練れであるのは明らかだ。

 包囲するエルフ達も攻め切れずに苛立っている。

 数名ほど切り裂かれて戦闘不能になっていた。

 魔術的な攻撃も心得ているようだ。


 その時、執事の頭上で天井が崩落した。

 落下してきた数十人のエルフに呑まれて、その姿と命は消えてしまう。

 歴戦の達人でさえ、不条理な暴力の前には無力も同然だった。


「惨劇が蔓延している」


 私は城を巡りながら呟く。

 その途中、ひっそりと佇むエルフを発見した。


 私と契約を交わした女王だった。

 どうやらこの殺戮に伴って顕現していたらしい。

 女王の表情は、他のエルフと異なり悲しみに暮れていた。


「これが復讐だ」


 私が告げると、エルフの女王は黙って立ち去った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] はじめまして。こういう悲劇的な物語好ましく思います。きちんと敵を殺しているのが見ていて気持ちいいです。 少年が死ぬのもご都合主義的な物がなくていいと思いました。
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