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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第90話 決着

 少年が真っ直ぐに突進し、横薙ぎに剣を振るう。

 皇帝はそれを魔力の刃で弾くと、滑るような動作から刺突を返した。

 少年は切っ先を粘液の鎧で受ける。

 退かずに追撃を選んだのだ。


 そこから少年は力任せの斬撃を打つ。

 皇帝は両手の刃で受け止めるも、魔力の刃にひびが入って砕けた。

 防御に失敗し、粘液の剣は皇帝の胸部を縦断する。


 血飛沫を浴びた少年は、やはり追撃を強行した。

 止まらずに剣の振り上げを放つ。

 このまま仕切り直しを許さずに決着させる気のようだ。


 皇帝は紙一重で回避をすると、負傷を感じさせない挙動で蹴りを出した。

 粘液で守られていない脇腹の隙間に爪先がめり込む。


「ガッ……!?」


 少年は身体を曲げて吐血する。

 彼は片手で剣を振り回して皇帝を後退させた。

 肩で息をする少年は、痛むであろう脇腹を粘液で埋めて誤魔化す。


(かなり厳しいな。相手の悪魔と相性が悪いようだ)


 両者の攻防を見て考察する。

 私の感知能力では、皇帝に何の悪魔が憑いているのか不明だった。

 力の気配からして中位悪魔の中でも強い部類といったところだろうか。


 単純な出力で言えば少年が有利だが、名の相性が良くない。

 皇帝に憑いた悪魔は、相手に合わせて力量が上がる性質を持っている。

 おそらくは"模倣"や"逆境"に関連するような名なのだろう。

 少年は傷付くほどに力を増す"復讐"持ちだが、素の力関係だと有利であるため、名の特性を活かし切れていない。


 もっとも、その程度のことで諦める少年ではなかった。

 彼は気合を込めて吼えると、剣を大上段に掲げて疾走する。


「うおおおおおおぉぉぉッ!」


 粘液の鎧が少年の筋力を底上げし、肉体的な負荷を無視する。

 そうして破滅的な威力を秘めた振り下ろしを実現した。


 対する皇帝は、迎え討つように左右の刃による刺突を繰り出す。

 思考能力が働いているとは思えないほど速い。

 本能的な攻撃だろうが、恐ろしいほどに洗練された軌道である。

 無才の私には到底真似できない技だった。

 皇帝自身の武術に加えて、親和性の高い悪魔が憑いたが故の力だろう。


 完璧な刺突は少年の鎧を穿つ。

 それぞれ腹と胸を捉え、刃が根元まで潜り込んだ。

 背中を突き破って血に濡れた先端が顔を出す。


 少年は一瞬だけ痙攣して止まりそうになるが、必死に歯を食い縛る。

 そして、鎧にしていた粘液を残らず剣に移した。

 巨大化した刃を、少年は渾身の力で叩き下ろす。


 光の速度を超えた斬撃は、時空を歪めながら皇帝を縦断した。

 その身体を真っ二つに引き裂いて、謁見の間をも左右に分断する。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 第90話到達、おめでとうございます! [気になる点] >光の速度を超えた斬撃は、時空を歪めながら皇帝を縦断した。 >その身体を真っ二つに引き裂いて、謁見の間をも左右に分断する。 光の8倍…
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