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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第85話 埋まらない格差

 私は相手の策略を気にしながら戦闘を続ける。

 難なく優勢を保つ一方で"懐柔"も必死に反撃してきた。

 もっとも、あまり効果がない。

 過去の名を解放して頑丈になった骨格を壊せるほどの破壊力は出ていなかった。


(一体何が目的なんだ)


 私は"懐柔"の狙いを訝しむが、それらしき兆候はいつまで経っても見られなかった。

 策など用意しておらず、やけになって攻撃を繰り返しているだけではないか。

 そう考えてしまうほどだ。


 しかし、そんなことをすれば死ぬと本人が一番分かっているはずだった。

 懐柔の悪魔は、名を兼ねるほどの逸材である。

 長きを生きてきた古参で、決して愚かな存在ではない。

 だからこそ私には、余計に彼女の意図が読めないのだった。


 それでも私は手を抜くような真似はしない。

 限界を超えて戦い続ける彼女の力量は、悪魔の中でも一線級である。

 私のような例外を省けば頂点とも言えるような強さだ。

 だからこそ、それを否定するように能力で畳みかけていく。


 実体を持たない影の刃が"懐柔"に絡まって動きを阻害した。

 そこに錆びた鎖が射出されて、回避行動を取った彼女の右肩を抉って通過する。

 鎖は天井を削りながら反転すると、再び"懐柔"に襲いかかった。


 もちろん周囲には茨と黒炎が蔓延したままだ。

 それらも合わせて着々と"懐柔"の力を奪っていく。


 懐柔の悪魔は、驚異的な立ち回りの上手さでここまで生き延びていた。

 私の見立てではとっくに死んでいるはずだが、現実の彼女は極限状態ながら命を繋いでいる。


 私に施された幻惑魔術は既に無効化されていた。

 したがって懐柔の悪魔は、自前の身体能力と戦闘技術で回避している。

 ほんの僅かな判断の間違いが死に直結する中、それをものともせずに戦闘を続行してきた。

 さらには隙を見て私に反撃を打ち込むだけの胆力も併せ持つ。

 たとえそれが効かずとも驚かざるを得なかった。


 懐柔の悪魔と死闘を展開する中、私は意識を眼下に割く。

 上下が反転した謁見の間の天井では、少年が虐殺劇を開いていた。

 操られた人間や悪魔、悪魔憑きを相手に粘液の剣を振るっている。


 卓越した才覚を発揮する少年だが、今回はさすがに敵の数が多い。

 際限なく現れる敵を前に疲弊しているようだ。

 それでも決して心を折らずに奮闘していた。

 気を緩めず、膨大な数の死体を築き上げている。


 私の助力を要さずに勝利できるのではないか。

 壮絶な戦いを繰り広げる少年を見て、私はそう予感するのであった。

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