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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第84話 兼ねた能力

 謁見の間には至る所に茨が張り巡らされていた。

 これらは私の結界だ。

 一瞬でも触れれば力を吸い取る。

 常人ならば近付くだけで干からびるだろう。


 その環境で、私は懐柔の悪魔へと執拗に攻撃する。

 底上げした身体能力で放つ鉈の斬撃は回避が困難だ。

 防御しても負傷は免れず、吹き飛んだ先で茨に接触してしまう。


 懐柔の悪魔は戦いづらそうだった。

 当然それが狙いである。

 真っ向から力をぶつけ合うのは私のやり方ではない。

 不利な状況を押し付けて事を運ぶのが本来の得意分野だった。


 復讐の悪魔は、私の力の一端に過ぎない。

 最新の名であるため積み重ねも浅く、最も弱い状態なのだ。


 そこに過去の実績――すなわち克服してきた名を加えることで真価を発揮する。

 名を支配する上位悪魔にすら劣らない能力へと昇華させるのだった。


 私は"破滅"だった頃の黒炎を粘液と融合させると、腕を振って飛沫を"懐柔"へ飛ばす。

 "懐柔"は余裕を持ちながら回避した。

 ところが黒炎を帯びた粘液の飛沫は突如として膨張し、一瞬で数人のエルフに変貌する。

 そして軌道修正をして"懐柔"に掴みかかった。


「面倒くせぇなッ!」


 "懐柔"が振り払うように反撃して黒炎を纏うエルフ達を掻き消す。

 触れた腕が黒炎に侵され始めるも、彼女は躊躇せずに腕の一部を切除してそれ以上の被害を防いだ。

 さらに死角から伸び上がる茨を躱しつつ、間合いを詰めて打撃を放ってくる。


 私は連続攻撃を鉈で弾いていなしていく。

 そのたびに衝撃が全身に伝播して破壊を促す。

 ところが、現在は肉も骨もない粘液の骨格だけとなっていた。

 傷付く場所もないため意味がない。

 平然と鉈で切り返して"懐柔"の疲労を誘う。


 肝心の彼女は、一向に攻撃を止める気配がなかった。

 既に全力全開だ。

 それに私は軽々と対応している。


 隔絶とした実力差があり、本人も痛感しているはずだった。

 それなのに猛攻を止めないどころか、さらに躍起になって攻撃を重ねるばかりである。

 懐柔の悪魔の顔には、仄かな絶望と恐怖に加えて、それらを覆い尽くさんばかりの歓喜が溢れていた。


(何か策略があるのか?)


 私は戦いながら知覚範囲を拡張する。

 操られた人々が集まってくるだけで他に不審な点は見られない。

 罠の類もなく、何らかの作戦が進んでいる様子はなかった。


 とは言え、現状が"懐柔"の思惑通りらしいのは確かだ。

 私が探知できないような策を仕掛けたのかもしれない。

 細心の注意を払って対応する必要があった。

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