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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第82話 悪魔の差

 操られた一般市民は、続々と逆さまになった謁見の間に入ってくる。

 彼らは魔術で強化されていた。

 皇帝や近衛騎士のような悪魔憑きではない。


 よく見ると、下位や中位の悪魔も混ざっていた。

 どうやら"懐柔"の手に落ちた者達らしい。

 抵抗できず術中にはまってしまったようだ。


 彼らの行く先には少年がいた。

 押し合いながら襲いかかろうとしている。

 停止していた悪魔憑きも紛れて動き出していた。


 その光景を見下ろす"懐柔"は嬉しそうに言う。


「ほら、助けに行けよ。大事な弟子なんだろ? あの数に勝てるはずねぇだろうが」


「私の役割は決まっている」


 そう言って鉈を"懐柔"に向ける。

 "懐柔"は再び真顔になると、煮え滾る殺意を炎のように揺らめきながら放出させた。

 彼女は空中を歩きながら近付いてくる。


「あんたは中途半端だ。名を兼ねるばかりで責任を持たない。支配できてこその悪魔なんだよ!」


「そう思うなら力で示せ。話し合いなど無意味だ」


「クソッタレがッ!」


 叫んだ"懐柔"が突進してくる。

 放たれた殴打が私の顎に直撃した。

 僅かに残った顔面の肉と骨が木端微塵になり、衝撃のあまり頭部が連続で回転する。


 しかし、それが私の行動に支障を来たすことはなかった。

 私は首を回転させながら両手を伸ばすと、高速で鉈を叩き込む。

 斬撃は"懐柔"の殴打を遥かに超える速度で彼女の鎖骨を粉砕した。


「ガッ!?」


 "懐柔"が床に激突する。

 余波で数十人の一般市民が潰れた。


 彼女はそれに構わず飛び上がり、私に連撃を繰り出した。

 一発が並の悪魔なら粉微塵にする威力だった。

 それが急激に加速し、城全体を揺るがすような猛打と化す。


 そうして数万の格闘攻撃を受けた時、私の身体は粘液の骨格だけとなっていた。

 人間的な部位は残らず消滅している。


 ただし、依然として能力で組んだ骨格部分は健在だった。

 多少は陥没しているが、それもすぐに戻る。

 実質的には無傷と称してもいいほどだった。


 普段の私なら、さすがに骨格くらいは破損していただろう。

 現在は名を兼ねる悪魔の本領を発揮している。


 今までの力は、復讐の悪魔として培ったものが大半だった。

 それだけでは勝てないと判断し、私は過去の名を部分的に解放したのである。

 結果、攻撃速度は"懐柔"を大幅に凌駕し、耐久性能も劇的に上がったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] とても面白かったです。 このようなユニークな物語は初めてだったため、個性的な人物達が次々と登場して動いていることに圧倒されました。 複雑な動作が多々あるようですが、想像しやすいように書かれて…
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