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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第79話 兼ねる悪魔

「名を兼ねる悪魔……?」


 少年はその言葉を復唱する。

 彼は聞き覚えがないようだった。

 当然だ。

 私が徹底して聞かせないようにしている。

 まだ聞かせるべきではないと考えていたからだ。


 今から明かされる内容は、悪魔の中でもあまり知られていない情報だ。

 多くが噂だけは耳にしたことがあるものの、実態は謎に包まれた領域であった。

 それを懐柔の悪魔は話そうとしている。


 彼女は私を顎で指し示しながらあっさりと言った。


「教えてやるよ。こいつは複数の名を冠する悪魔なのさ。実はあたしも兼ねる悪魔だがね」


 すると少年がすぐさま反論する。


「悪魔は一人につき一つの名だと聞いたぞ。ペナンスが嘘を言ったのか!?」


「それが原則の決まりだな。ただし、例外的な方法で兼ねる悪魔になれる」


「……決まりって何だ」


「名を克服することさ。既存の名に縛られなければ、新たな名を受け入れることができる」


 兼ねる悪魔とは、名を克服した上位悪魔の先に位置する。

 過去の名を自らの奥底に沈めながら、新たな名に手を出した悪魔の総称だ。

 無論、一般的には禁忌とされている。

 名をいくつも保持するなど、悪魔の存在意義からは外れていた。


 兼ねる悪魔の発祥は他でもない私だ。

 "懐柔"は追従するようにして目覚めた一人である。

 世界全土を巡っても、兼ねる悪魔は十人もいないだろう。


 彼女はかつては別の名を持つ悪魔だ。

 現在は"懐柔"の名を支配しており、これ以上は名を兼ねることができない。

 ただし過去の名を持つため、定義的には兼ねる悪魔だった。


 少年はしばらく放心する。

 混乱する頭をなんとか働かせると、恐る恐る私に確認した。


「本当なのか、ペナンス」


「事実だ。私は過去に何度も名を克服して積み重ねてきた」


 私は頷いて肯定する。

 隣では、懐柔の悪魔がますます楽しそうに笑っていた。


「名の克服による最大の利点がこれだ。基本的な能力は支配した悪魔に大きく劣るが、努力次第でいくつもの名の力を持つことができる。もっとも、名を兼ねるのは至難の業だがね。過去の名に囚われて精神崩壊を起こす奴もいる」


 途中で言葉を止めた彼女は、寝転がった姿勢から脚で私を指した。


「こいつが異常なのは、一人で十種の名を兼ねているところだ。どれだけ特殊な悪魔でも三つが限界だった。それなのにこいつだけが全悪魔の限界を超越している。だから忌み嫌われているし、恐れられている」

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