表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/107

第76話 懐柔の悪魔

 私は手から粘液を滲ませると、いつもの鉈に変えた。

 意識を戦闘のためのそれへと切り替えながら"懐柔"に尋ねる。


「お前の目的は何だ」


「気にすんな。あんたに話す義理なんてありゃしねぇよ」


 "懐柔"は気楽そうに笑った。

 その際に鋭利な牙が覗く。


 彼女の得意な攻撃の一つが噛み付きだ。

 単純な殺傷技としても優秀だが、最も恐ろしいのは、己の唾液を流し込んで相手を術中にはめられる点であろう。

 彼女は上位悪魔としての能力と幻惑系の魔術を併用することで、唯一無二の支配力を発揮する。


 "懐柔"は軽く伸びをすると、長い舌を見せながら私達に告げる。


「さあ、挨拶はここらでいいだろう。そろそろ殺し合おうぜ」


 彼女の言葉を合図に、皇帝と近衛騎士が動き出した。

 彼らは一列になって私達の前に立ちはだかると、それぞれの武器を構え出す。


 隙だらけの佇まいを見るに、囮として運用するつもりらしい。

 あまり油断はできない。

 彼らはただの操り人形ではない。

 "懐柔"に縛られた悪魔が憑いている状態だ。

 中位や下位の悪魔なので能力的にはこちらが強い。

 しかし"懐柔"の能力による補正を加味すると、やはり軽視できない存在であった。


(面倒な状況だな。まさか懐柔の悪魔が敵対してくるとは)


 彼女は古き時代より消滅せずに同一の自我を保ってきた悪魔だ。

 何度か出会ったもある。

 暗躍を好む性質だが、無意味な嫌がらせをする悪魔ではなかったはずだった。


(何か目的があるのか?)


 そうして疑問を重ねていると、不意に"懐柔"が動き出した。

 軽やかな疾走から私に膝蹴りを浴びせてくる。

 そこからさらに上体を捻って肘打ちを放ってきた。


 私は鉈で防御する。

 ついでに彼女の四肢を切断しようとするが、それは紙一重で躱された。


 懐柔の悪魔は近接戦闘が得意だ。

 その名や魔術師の能力から勘違いしがちだが、純粋に鍛え上げた身体能力だけで、上位悪魔を相手取ることもできる。

 戦闘面における才能を持たない私とは大違いだった。


 私と"懐柔"が撃ち合う一方、少年は悪魔憑きの人間達と対決していた。

 物理的負荷を無視した挙動で攻め立てる悪魔憑きを相手に、少年はやや苦戦している。


 ただし、防戦気味ながらも相手の動きを観察していた。

 打開策を見い出そうとしているのだ。


 少年はこの局面でも冷静だった。

 そのことに感心しつつ、私は目の前の悪魔に集中する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ