表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/107

第73話 到着

 その後も私達は城内を進む。

 途中で何度か悪魔や兵士による強襲を受けたが、粘液の濁流で弱った彼らを返り討ちにするのは難しくなかった。


 あれを発動した時点で、こちらの勝利は半ば確定している。

 完全に防げる者は滅多にいない。

 該当するのは、戦闘に特化した上位悪魔でもごく少数だ。

 その少数も帝国に属していないようなので、誰も私達に敵うはずがなかった。


 同行する少年の戦闘能力は急成長している。

 悪魔に死を与えるたびに潜在的な壁を突破していた。

 相性によっては苦境に立たされることもあるが、それすら糧にして強くなっている。


 経験を重ねたことで、少年の戦闘手段は確立された。

 粘液の鎧で身体強化と防御を兼ねて、同様に生み出した武器で相手を殺傷する。

 粘液の応用力を切り捨てた代わりに、行動の迷いを削ぐことに成功していた。


 多様な選択肢も、時には足枷となり得るものだ。

 それを理解した少年は独自の戦法を編み出したのだった。


 戦いの最中で観察していたが、少年に適した立ち回りだろう。

 私と違って彼には剣術の才もある。

 そこに悪魔の力が加われば、十分すぎる武器となる。

 驚くことに、複数の下位悪魔を単独で屠れる程度には強くなっていた。

 "復讐"の能力と少年の精神性が上手く噛み合ったのだろう。


 そして現在、私達は皇帝のいる部屋の前にいる。

 豪華な装飾の施された扉には、何百もの防御魔術が施されていた。

 人間が構築した術も混ざっているが、大半は悪魔が張ったようである。

 粘液で封鎖された城から脱出するのは不可能だと察し、ここに立て籠もることにしたらしい。


 扉の前に見張りはいないが、室内にいくつもの気配が控えている。

 私達の到来にも気付いているはずだ。


「この先に皇帝が……」


 少年は粘液の剣を握りながら呟く。

 冷静なように見えるものの、燃え上がる殺意は肌で感じられるほどに濃い。

 復讐心と理性の天秤が紙一重のところで釣り合っている状態だった。


 念のために私は少年に警告する。


「この先には粘液の濁流が通っていない。潜んでいる悪魔も強力だ。くれぐれも軽率な行動は取るな」


「分かっているよ……迂闊な真似はしないさ」


 少年は深呼吸をして答えた。


 私はそれを横目で見ながら扉に接触し、粘液の直接放射で防御魔術を一気に破壊する。

 そして施錠された扉を蹴り破って室内に踏み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ