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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第71話 隔絶した暴力

 私と少年は城内の大広間に着く。

 普段なら舞踏会でも開けそうなほどに豪華な内装だが、現在はあちこちが荒らされて半壊していた。

 床は赤黒い粘液が染み込んで変色している。


 その時、天井が軋んで崩落した。

 ばらばらになった瓦礫が私達に目がけて落下してくる。


 私はそれらを鉈で切り裂いて防ぐ。

 少年はその場から転がって退避した。

 別に直撃していたとしても無傷だったろう。


 天井の崩落は連続して発生する。

 その不可解な現象に紛れて、死角から接近する者がいた。


 私は知覚を強化して図る。

 相手は二人――力の気配からして悪魔だろう。

 中位と上位が一人ずつ。


 彼らはそれぞれ私と少年に襲いかかる。


(分断して倒すつもりか)


 甲高い声と共に、鞭を持つ上位悪魔が仕掛けてくる。

 その顔には見覚えがあった。


(奮起の悪魔か)


 彼は勝ち気な性格で戦争を楽しみ、人間の勢力を掻き乱すことを至上とする。

 戦場では英雄として先陣に立ち、味方陣営に勇気を授ける。

 あえて不利な勢力に立つ癖があるので、帝国に属していることにも納得だった。

 私の参戦を知った後に契約したに違いない。


「キハァッ」


 "奮起"の腕が霞み、不規則に跳ねる鞭が飛んできた。

 先端が凄まじい速度で私の顎を打つ。

 炸裂した箇所が爆散した。

 反動で千切れかけた頭部を粘液で固定する。

 一瞬でも遅れていれば、頭部が吹き飛んでいただろう。


 空中を駆ける"奮起"は自在に鞭を振るう。

 その高速攻撃を前に、私はひたすら全身を打たれ続けた。

 しかし何度目かの攻撃を受ける際、鞭の先端を掴むことに成功する。


 怪力に任せて空中の"奮起"を床に叩き付けた。

 "奮起"が床にめり込み、起き上がろうとする。

 そこに駆け付けた私は彼の首を踏み砕いて耳元で囁く。


「随分と衰弱しているな」


「てめぇがっ、あんなもんをぶち撒けたせいだ……!」


 "奮起"の言っているのは粘液の濁流だろう。

 私達が到来するまでその対処に当たって消耗していたらしい。

 普段と違ってあまり加減していないのが原因だ。

 濁流の威力が高すぎて、上位悪魔ですら力を削られるほどになってしまったのである。

 簡単に捕まえられたのには理由があったのだった。


 もっとも、そんな事情は関係ない。

 私は片手を粘液で覆って結晶化すると"奮起"の胸を貫いて心臓を破壊した。

 再生できないよう念入りに粘液を混ぜ込む。

 激しく震える"奮起"は白目を剥くと、そのまま動かなくなった。

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