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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第62話 絶え間なき成長

 失墜の悪魔が強引に起き上がって天候を操作する。

 突風の刃や落雷の連打、低温による凍結等を次々と試みていた。


 少年は防御も回避も取らず、ただひたすら接近する。

 すべての攻撃を受けながらも怯まずに粘液の剣を振るい続けていた。


 彼の纏う鎧は"失墜"の攻撃を吸収して、さらなる力へと変換している。

 破損するどころか、逆に追い込んでいく一助としていた。


(一割の力にしては頑丈すぎる)


 私は少年の能力に注目する。


 吸収など本来は無い機能であった。

 粘液を譲渡した私は使えない。

 少年の精神と馴染んだことで増えた力なのだろう。


 彼は急速に成長している。

 援護を頼むつもりが、すっかり少年が主軸となってしまった。


 この展開は失墜の悪魔にとっても予想外だったろう。

 満身創痍の彼は、斬撃を防ぎながら吐血する。


「ぼ、僕が人間ごときに不覚を取るとは……っ、情けないですねぇ」


「強がっていられるのも今のうちだ。お前はここで殺す!」


 少年は攻撃の手を緩めずに宣言した。

 凄まじい連撃を以て、失墜の悪魔を傷付けていく。


(明らかに加速している。戦いを通して能力を研ぎ澄ましているのか)


 一方で失墜の悪魔は、なんとか魔術を用いて防御している状態だ。

 全身の傷は増えていくばかりで、再生能力はほとんど発揮されていない。


(力が露骨に衰えている。相性が悪すぎるのだ)


 失墜の悪魔は潜在的に少年を見下している。

 非力かつ脆弱で、私から能力を借りただけの人間と考えていた。

 その意識が少年を格下に固定しているのだ。

 だからどれだけ攻撃を受けてもその認識を変えられず、弱点を突かれ続けている。


(私が同じことをしてもここまでの効果はない。格上からの攻撃として判定されるため、弱点を突くことができない)


 仮にその見下した視点を取り払えれば、"失墜"の中で少年は同格以上になる。

 引きずり落とされた際に露呈する名の弱点は発動しなくなるはずだ。

 それができていないということは、未だに少年の力量を認められないのだろう。


 他にも弱体化の原因は考えられる。

 少年の粘液は、怨念に満ちたエルフの魂を内包する。


 素体はただの人間であり、精神的にもまだ未熟な少年は、常に怨念に呑まれる危険を孕んでいた。

 能力として完全に掌握する私と異なり、彼の心は怨念と癒着し、部分的に混ざり合いながらも均衡を保っている。


 かなり危険な状態である一方で、その不安定さを逆手に取ることもできる。

 精神と強く結び付いた怨念を流し込むことにより、内部から弱点を狙えるのだ。

 怨念の塊であるエルフの魂は、虐げられてきた存在だった。

 強者に対する羨望や憎悪は、失墜からすれば相性最悪である。


 一つひとつの要素だけならまだ耐えられる。

 それらが組み合わさったことで、致命的な効力を発揮していた。

 予想だにしない運用法は、他でもない少年の機転で回っていた。

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