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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第61話 失墜する力

 粘液の刃が軸回転し、その分だけ貫かれた"失墜"の身体が抉れる。

 既に隙間から夥しい量の血が噴き出した。


 首を回した失墜の悪魔は、驚きと怒りに顔を染めて歯を剥く。


「この、ガキ……ッ!?」


 伸ばそうとした手を少年が掴んで握り潰した。

 千切れた指が地面に落ちる。


 圧倒的な膂力だった。

 失墜の悪魔はどちらかと言えば魔術師に分類される能力者だ。

 身体能力に任せた肉弾戦はできるが、それで少年を制するのは困難らしい。

 粘液の鎧は、並の悪魔なら赤子のように嬲れるだけの恩恵を与えていた。


 少年は引き抜いた剣を素早く往復させる。

 躱そうとした"失墜"の両膝が綺麗に切断された。

 いや、よく見ると皮一枚で繋がっている。

 粘液による知覚強化と感知を用いることで、正確な斬撃を放ったのだ。


 派手に転倒した失墜の悪魔は膝を押さえて唸る。

 先ほどまでと比べて回復が遅い。

 再生が滞って出血が続く。


 その原因は明瞭であった。

 彼は今、弱点を突かれているのだ。


 中位悪魔である"失墜"は名の支配も克服もしていない。

 したがって誰かを引きずり落とすことに長けているが、引きずり落とされると途端に本領を発揮できなくなる。

 こればかりは名に縛られている以上は避けられない法則である。


 立場上、相手が格下でないと"失墜"の弱点は露呈しない。

 だから遥かに格上の私の攻撃は問題なかった。

 引きずり落とすという行為に当てはまらず、高速で再生できる。

 格下と見なされた少年だからこそ、失墜の悪魔の急所に触れられたのだ。


 少年は倒れた"失墜"の背中に剣を近付ける。

 そして、先ほど貫いた箇所を掘るようにして剣を動かした。

 刃が大地まで達して失墜の悪魔の動きを封じてみせる。

 挙動を見るに、体内に粘液を浸透させているようだ。


「く、がっ……」


「俺を見くびったな。だから隙を突かれたんだ。ざまあみろ」


「チィッ!」


 舌打ちした"失墜"が大技を発動した。

 強制的な仕切り直しを可能とする落雷の連打だ。


 少年は腕を交差した防御の姿勢を取る。

 連続で雷撃を受けるも、彼は平然と攻撃を再開した。


「そんなもん効くかよ。これはペナンスの鎧なんだ」


 少年は得意げに言いながら粘液の剣を振るう。

 "失墜"の背中が横一線に切り裂かれて血飛沫が迸った。

 そこから執拗な連撃が繰り出されていく。

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