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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第54話 開門

 私と少年は帝都に近付いていく。

 入口にあたる門は開放されていた。

 見張りの兵士も立っておらず、自由に出入りできる状態だ。


 まるで私達を招いているかのようだった。

 これでは周囲に展開された結界の意味がない。


 それに気付いた少年は眉を寄せて呟く。


「なんで門が開いているんだ?」


「悪魔が開けさせたのだろう。一般市民に被害が向かわないための配慮だ」


 門が閉ざされていた場合、私は無理やり侵入することになる。

 それに伴う余波が無視できない規模の被害を生み、大勢の人々が巻き添えになるだろう。


 標的である皇帝はなるべく守りを固めたい。

 だからきっとこのような命令は下さないはずだ。

 過剰なまでの結界が張られていることからもその方針はよく分かる。


 だから門の開放は、帝国陣営の悪魔の独断だろう。

 人民の命を庇う者がいるようだ。


 門前に到着した私達は、そこから帝都内を覗き込む。

 通行人は見られない。

 見える範囲の大通りは閑散としていた。

 気配を探ると、大勢の反応が遠くに避難している。


(街中での戦闘は望んでいないらしい。つまり城内のどこかに防衛網を張ったと考えるべきか)


 私と少年は帝都内に足を踏み入れる。

 そのまま真っ直ぐ城のある方角へと進み始めた。


 少年は辺りを見回しながら警戒する。


「何か罠の予感がする……」


「十中八九、仕掛けているだろう。無防備に待ち受けているはずもない」


「そんな場所に飛び込むのか?」


「進まなければこの国を滅ぼせない」


 私が歩調を緩めないのを見て、少年も懸命についてくる。

 彼は粘液を操作して全身鎧を形成していた。

 流動する表面には、稀に苦悶するエルフの顔が浮き出る。


 しかし、少年が呑まれた様子はない。

 復讐の悪魔の能力を上手く掌握していた。

 それどころか知覚能力として活用している。


 私は早足の少年に忠告する。


「ここから先はどこから奇襲を受けるか分からない。自衛できるだけの心構えは保っておくことだ」


「分かった! 俺だって強くなったんだ。足でまといにはならないぜ」


「それについては心配していない。上位悪魔を圧倒できるのだから十分だ」


 少年は粘液をよく使いこなしている。

 移動中も常に動かして感覚に慣れようとしており、その練度は契約当初より飛躍的に高まっていた。

 才能の有無というより、本人の精神力によるところが大きいだろう。


 その意識は戦士として一流ではないか。

 ただひたすら研鑽を重ねる姿は、人間であるが故の強さであった。

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