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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第51話 悪魔の役目

 戦力の集まらない王国は、調停の悪魔に縋り付いた。

 破滅を逃れるための一手と考えたのだろうが、残念ながら私が止まることはない。

 もし本当に死にたくなければ、私を殺すしか方法はなかった。


 やり取りを聞いていた少年は素朴な疑問を口にする。


「数的には王国が有利なのに、絶対にペナンスが勝つんだな」


「はい、その通りです。あなたは復讐の使徒ですね」


「使徒ではない。契約相手だ」


 私はすぐに訂正する。

 能力を分け与えたという意味では使徒という解釈もできるが、少年とは対等な関係性のつもりだった。

 彼を使役する気はなく、互いの目的のために動いているだけである。


 私からすれば利害の一致でもない。

 強いて言うなら、悪魔特有の習性に近いのかもしれなかった。


 調停の悪魔は、私の指摘を気にする様子もなく少年に問いかける。


「あなたはペナンス様についてどれほどの知識をお持ちですか」


「え? やたらと強い復讐の悪魔としか……あっ、それと無愛想で頑固だ」


「そうですか」


 調停の悪魔は淡々と相槌を打つ。

 彼女は続けて私に視線を向けてきた。

 その眼差しには、どこか追及の色が見える。


「なぜ彼に説明していないのでしょう」


「不要な情報だ。契約の上では何の関係もない」


 何を指しているのか分かったので、毅然として応じる。

 暫し無言で見つめ合った後、調停の悪魔は再び少年に話しかけた。


「一つ知っておいてほしいことがあります」


「……なんだよ」


 少年は警戒しながら応じる。

 調停の悪魔は、一瞬だけ私を見てから語り出した。


「本来、名を克服した悪魔は、中位悪魔にも劣る存在とされています。自らの存在意義を脱するため、強大な力を得られないのです。悪魔に課せられた制約を無視できる利点はありますが、総合的な能力は低いと言えるでしょう」


「それはおかしい。だってペナンスはすごく強いんだ。上位悪魔って奴も簡単に殺せるんだぜ」


「あなたの指摘は正しいです。そしてこちらの説明にも間違いはありません。この意味をよく考えてください」


 調停の悪魔が懐を探り、一本の短剣を抜き放った。

 それを目にした途端、瞬時に少年は粘液を展開して身構える。


「なっ……!」


「落ち着け。敵意はない」


 私は攻撃しようとする少年を手で制する。


 その間に調停の悪魔が短剣を振り上げた。

 彼女は切っ先を動かすと、自らの首に突き刺して掻き切った。

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