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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第47話 代償を糧に

 風化する生首を眺めていると、少年が近付いてきた。

 彼は鎧の兜部分を解除して尋ねる。


「そいつは死んだのか」


「私が魂まで消滅させた。少なくとも百年は使役の悪魔が現れることはないだろう」


 続けて交わした契約について少年に説明する。

 特に代償に関する部分だ。

 事後報告になったものの、状況的にそこは仕方あるまい。


 少年から奪ったのは、視覚と味覚と寿命の九割だ。

 常人の感覚なら大きな反応を見せそうだが、少年は冷静だった。

 なんとなく分かっていたのだろう。


「契約を交わして後悔しているか」


「まさか。ペナンスが力をくれたんだ。文句も後悔もないさ。これで復讐を果たすことができる」


 少年は躊躇いなく答えた。

 身体の表面を粘液が絶えず流動する。

 独特の光沢には、誰かの顔が浮かんでは消えた。


 少年は帝国に恨みを持つ。

 その気持ちは本物であった。

 復讐の達成ができるのなら、自らの命すら厭わないようだ。

 死に対する恐怖は感じられず、強い目的意識に衝き動かされていた。


 その後、私達は移動を再開した。

 なるべく街に寄らず、帝都を一直線に目指していく。

 本当は迂回しながら報復を進めたかったが、少年の寿命は残り一割だ。

 まだ余裕はあるにしろ、あまり悠長にやっている暇もなかったのだった。


 街道を歩く少年は、不思議そうな顔で手を動かす。


「目は見えないけど、全然困らないんだな」


「体内に根付いた粘液が感覚器官の役割をしている。身体機能の全般が強化されているはずだ」


 粘液の操作だけではない。

 悪魔の肉体を破壊する膂力や、高速戦闘をこなせるだけの動体視力や反射神経も譲渡している。

 視覚は機能していないが、契約前と比べると格段に強くなったはずだ。

 戦い慣れれば、大抵の悪魔とは渡り合えるのではないか。


 ここまでの強化になったのは、少年に適性があったからだ。

 彼の復讐心が私の能力と馴染んだのである。

 常人では決して敵わない上位悪魔を倒せたのもその影響と言えよう。

 いくら向こうが弱くなっていたとは言え、簡単に為せることではない。


(精神力も相応にあるようだ)


 粘液にはエルフの魂が染み付いている。

 彼らの苦悶や憎しみと共鳴したはずだが、現在の少年は平然としていた。

 少年なりに受け入れて、それでも力を求めたのだろう。

 そうして悪魔の力を獲得したのだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] 少年は賭けに勝ち、力を得て、敵を倒した。 (とどめは「復讐」が刺したが) しかし残り1割の寿命が尽きるまでに本懐を遂げる事はできるのだろうか…
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