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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第45話 覚醒

 使役の悪魔は、腰を中心に上下で分断される。

 それぞれが臓腑を散らしながら吹き飛んで地面を転がった。


「えっ……」


 使役の悪魔は驚いている。

 慌てて両手を動かすと、半壊した大鎌を捨てて転がった下半身へと這い進んだ。


 そこに少年が駆け寄る。

 粘液の大剣が沸騰し、弾けて集束すると今度は大槌になった。

 少年はそれを振り下ろして、使役の悪魔の下半身を叩き潰す。

 肉が潰れて地面に飛散した。


「なっ……」


 目の前で半身を失った使役の悪魔は呆然とする。

 そこから怒り狂った表情になると、両手に魔力の爪を宿した。

 計十本の爪で少年の両脚を狙う。


 ところが爪は、粘液の鎧に弾かれて折れた。

 傷付けるどころか、反動で指先から血を流す始末だった。


 少年は使役の頭に足を載せて、そのまま徐々に力を込めていく。

 悲鳴に近い叫びに混ざり、頭蓋の軋む音が聞こえてきた。


(終わりだな)


 そう判断した私は、体内から粘液を出した。

 粘液を高速回転する刃に変換して、圧し掛かる騎士達を残らず肉片に変えていく。

 霧状になった鮮血が辺り一面に舞う。


 騎士達は私の行動を封じることしか命じられていない。

 そのため反撃の一つもなかった。

 もっとも、それがあったところで無意味だったろう。

 傷付くほどに私の力は強化されるのだから。

 意志のない操り人形に負けるほど弱くはない。


 立ち上がった私は、その場で少年と使役の悪魔を見守る。

 何もせず、ただ両者の攻防を傍観する。


 別にいつでも脱出することはできた。

 同じ上位悪魔でも、彼と私の力の差は歴然だ。

 積み上げてきた歳月が違う。


 私の身体能力は悪魔の中でも最弱に近いが、ただそれだけだ。

 他の要素を比較すれば、勝敗など予想するまでもない。


 それなのに劣勢を演じたのは、使役の悪魔の近況を知るためだった。

 彼は私への復讐に執着し、悪魔の本質からずれつつあると思ったのである。


 堕落した上位悪魔ほど面倒で不必要な存在はない。

 様々な能力を習得した彼は万能になっていたが、根本的な力は衰えていた。


 名を支配した上位悪魔は少々のことでは弱くならない。

 しかし使役の悪魔は、一つの感情に囚われた。

 私情による暴走により、支配した"使役"を差し置いて優先してしまった。

 だから少年を相手に不覚を取り、殺されようとしている。

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