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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第44話 悪魔の片鱗

 佇む少年は自分の身体を見下ろす。

 絶えず流動する粘液は彼に馴染みつつあった。

 まだ無意識下では勝手に動いているが、既に己の能力として所有できている。


「これが、悪魔の力か……」


 少年は静かに呟く。

 その声音には如何なる感情も見受けられなかった。

 あれだけ悪魔殺しになると意気込んでいた彼だが、実際にその力を得ると冷静になったのだ。

 様々な考えが少年の中で渦巻いている。


 本来なら能力を手に入れたことで舞い上がり、衝動が暴走することも珍しくない。

 悪魔の力とは人間の精神を破綻させることすら容易い劇薬なのだ。

 強大な効果を持つ代わりに、後戻りできない領域に突き飛ばす。


 ところが少年は明瞭な自我を保っていた。

 むしろ以前よりも成長している節さえある。

 それだけ能力が上手く適合したのだろう。

 彼の精神性と相性が良かったらしい。


 少年は手探りで歩み始める。

 契約の代償で視覚を失った影響だ。

 最初は覚束ない動きだったが、だんだんと力強くなっていく。

 二十歩も進む頃には、目が見えている時と遜色ない状態になっていた。


 赤黒い粘液の兜を被る少年は使役の悪魔を指差す。


「分かるぞ。そこにいるな? お前が敵だ」


「へぇ、もう探知できるのか。クソガキのくせに才能は抜群だな」


 使役の悪魔は大鎌を回しながら愉快そうに言う。

 しかし、頬が引き攣って目は据わっていた。

 表面上は陽気な調子を演じているが、実際は焦りと苛立ちと不安がない交ぜになっているようだ。


 使役の悪魔は大鎌を構えながら私に尋ねる。


「見てみろよ。粘液を使いこなしてやがる。あんたがコツでも教えたのか?」


「私は何もしていない。彼が自力で掌握したのだ」


 少年の強い想いが成し遂げたのだ。

 それを聞いた使役の悪魔はますます表情を歪める。

 彼は深く息を吐いて殺気を整えると、冷酷な横顔で宣言した。


「よく見とけよ。あんたのお気に入りを解体してやる」


 使役の悪魔が無音で跳躍して少年に襲いかかる。

 首を刈り取る斬撃が、美しい弧を描きながら一閃されようとしていた。


 次の瞬間、少年の纏う粘液が沸騰する。

 泡が弾けると同時に形態を変化し、棘の目立つ禍々しい鎧と大剣に至った。


 少年は迫る大鎌に合わせて大剣を振るう。

 粘液の大剣が大鎌を砕き割り、さらには使役の悪魔に刃をめり込ませた。

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