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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第38話 偽善者

 少年の顔は怯えと動揺に染まっていた。

 彼は男を見ながら、なんとか魔剣を構えている。


「ペナンス、あいつは……」


「使役の悪魔だ。あの軍隊の指揮官だろう。私の抹殺が目的のようだ」


 彼は他者を操ることで悦に浸り、それを最も得意とする悪魔である。

 その性質から指揮能力に優れていた。

 配下に定めた者の力を限界以上に引き出したり、命を自分のものにすることも可能だ。

 力を吸収して自己強化に繋げることもできる。


 他者を従わせるという部分でも悪魔に適していた。

 上位悪魔の一柱に君臨するに足る実力者である。


 私は相手を観察する。

 全身を殺気が覆っており、一切の油断や慢心は見られない。


 嫌味な笑みが張り付いているが、それすらも完全な本心ではなかった。

 こちらの隙を作るための罠として利用しているようだ。

 実に狡猾な男だった。


(他の悪魔の気配はない。独断で私の殺害に動いているようだな)


 決戦を遅らせる帝国に痺れを切らしたのだろう。

 元々、個人主義で協調性がない性格も起因していると思われた。

 彼は名を支配する悪魔で、誰かに従ったところで力が大きく落ちることはない。

 ただ性格的に拒んだのだろう。


 使役の悪魔は大鎌を少年に向けると、愉快そうに笑い声を発した。


「復讐の悪魔! あんた、ガキを飼い始めたのかっ! ひひっ、情でも移ったのかい」


「彼も復讐者だ。皇帝を殺すに足る精神を宿している」


「そいつは傑作だなぁ! つまりあんたの弟子ってことかよ! いつもながら酔狂な奴だぜ」


 使役の悪魔が爆笑する。

 すぐさま少年が魔剣を向けながら怒鳴った。


「おいお前! ペナンスを馬鹿にするなッ!」


「……あ? 人間のガキが口出しするなよ」


 真顔になった使役の悪魔は、疾風のような速度で少年に跳びかかる。

 その大鎌が首を刎ねようとした瞬間、私が間に割り込んだ。

 斬撃を鉈で防御する。


 力任せに押し切られそうになるも、粘液を伸ばして大鎌に絡めて固定した。

 それ以上は動かせないように妨害する。


 使役の悪魔は舌打ちして私を睨んだ。

 突き出された盾が顎を打ち砕いたが、別に何ということはない。

 私は冷徹に告げる。


「お前の相手は私だ」


「ハッ、善人を気取りやがって。あんたみたいな偽善者が一番嫌いなんだよ」


「ならば殺せばいい」


 私は足元に粘液を展開し、そこから無数の針を生み出す。

 それは武器を固定された使役の悪魔の足腰を貫いた。

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