第37話 防衛軍
太陽が真上まで昇った頃、次の街が見えてきた。
門の前には揃いの鎧を着た騎士が並ぶ。
その数は一万を下らないだろう。
既に陣形を組んで臨戦態勢に移っていた。
その光景を見た少年は怪訝そうにする。
「人が集まってる……?」
「帝国軍だ。私を抹殺するために用意した戦力だろう」
現在地から帝都も近くなってきた。
国としては何も手を打たないと被害が大きくなりすぎる上、民からの不信感も膨らむ。
どちらも望ましくない展開である。
かと言って決戦に持ち込む状況でもなかった。
いくら帝国軍でもまだ準備が整っていないはずだ。
もう少し時間がかかるだろう。
諸々の事情を鑑みての妥協点が、現地の軍隊による迎撃だった。
国を滅ぼさんとする悪魔の進撃を止める役割に、使命感に駆られる者は多い。
それを見事に利用した形であった。
間もなく軍隊に動きが見える。
戦旗の動きに合わせて、騎士達が一斉に短杖を掲げた。
そこから火球を投射される。
無数の火球は空中で融合し、放物線を描いて降り注いでくる。
大魔術の連打で私を圧殺するつもりらしかった。
(あの短杖は事前に仕込んだ術を放つ魔道具だ。私への対策で揃えたのか)
かなり高価で、軍全体に行き渡る数にもなると相当だ。
現場の指揮官の気勢が窺える戦法であった。
頭上を埋め尽くして落ちてくる炎の天井に対し、少年は腰を抜かして仰天する。
「わ、わわっ!?」
「慌てるな。私が処理する」
そう告げながら体内の粘液を操作する。
粘液は背中を破って広がると、私と少年を覆うような蓋になった。
そこから端が液状化し、地面まで垂れて壁となる。
粘液の外で爆発音が連続するも、私達に被害は及ばない。
この防御能力と貫けるほどの威力ではないようだった。
そのまま爆発が止むのを待っていると、背後に殺気を覚える。
私は片手に鉈を生み出して、振り向きながら叩き付ける。
斬撃は白い盾に阻まれた。
さらに黒い大鎌は私の横腹に刺さっている。
緩く湾曲した切っ先が、反対側の肩を突き破って露出し血を滴らせている。
私は表情を変えずに、盾と大鎌の持ち主を見やった。
二種の武具を持って嫌味な笑みを湛えるのは、白と黒の縞模様の制服を着た男だ。
男の下半身は地面に埋まっている、どうやらここまで掘り進めて粘液の壁を抜けてきたらしい。
(軍隊の魔術は陽動だったか)
私は鉈を引き戻して力任せに振り下ろす。
男は大鎌を引き抜きながら飛び退いて回避した。
その際、刃に捻りを加えて私の上半身を分断しようとする。
咄嗟に粘液で繋ぎ合わせて阻止することができた。
私は鉈を下ろしながら男を注視する。
男は舌なめずりをする。
盾を前に出しつつ、器用に大鎌を回していた。




