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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第35話 目覚め

 翌朝、目覚めた少年は辺りの光景に仰天する。

 昨晩までは平坦だった土地のあちこちに穴が開いていた。

 草木が焼けて土が露出し、丸ごと掘り返したような痕跡もある。


 そして極めつけは二人分の死体だろう。

 少年の近くに転がっているそれらは、激しく損壊している。


 一方は男の死体だ。

 頭頂部から股まで縦に引き裂かれて臓腑が溢れ出している。

 顔面は陥没して人相が識別不能となっていた。


 もう一方は女の死体であった。

 四肢が切断されて、胴体が輪切りになっている。

 砕け散った骨が血肉に紛れていた。


 少年は顔を青くして死体を指差す。


「だ、誰だよこいつら!?」


「皇帝の刺客だ。私を暗殺しようとしたようだ」


 明け方頃、この刺客は襲来した。

 問答無用で仕掛けてきたので、ひとまず眠る少年を粘液で囲んで保護してから迎撃した。

 結果がこの有様である。


 私も原形を失うまで攻撃を受けたが、現在は再生し終えている。

 相手を殺害することで傷の治りは速くなるのだ。

 別に肉体が損壊したままでも困ることはないものの、健全な姿の方が少年も話しやすいだろう。


 少年は恐る恐る死体に近付くと、鼻をつまみながら観察する。

 やがて吐きそうになったところで顔を離した。


「……こいつらも悪魔なのか?」


「そうだ。それぞれ"反逆"と"追放"の名を冠している」


 男が反逆の悪魔で女が追放の悪魔だ。

 常に二人組で行動する珍しい者達である。

 名の相性が良いこともあるが、恋人関係を自称していることから、それ以上に性格が合うのだろう。


 今回はどちらも殺害しただけなので、いずれ元の人格のまま蘇る。

 この二人と因縁はなく、わざわざ消滅させるほどではない。

 むしろ名の支配ができそうな悪魔達なのだ。

 期待を込めて復活を待ちたいと思う。


 少年は死体の持ち物を漁りながら質問する。


「苦戦したのか」


「敗北の兆しはなかった。どちらも中位の悪魔だ。主力軍隊すら殲滅するほどの力を持つが、上位悪魔が相手では意味がない」


「ふーん。ペナンスって弱そうになのに強いんだな」


「積み上げてきた歴が違うだけだ」


 私が答えるうちに、少年は一本の剣を見つけた。

 反逆の悪魔の私物だ。

 優れた術式を施された魔剣である。

 少し短めの刃は、少年が扱うにはちょうどいい。


「これ、俺が貰ってもいいのかな」


「文句を言う者はいないだろう。私は丸腰で構わない」


「やった! じゃあ俺の武器にする!」


 はしゃぐ少年は、嬉しそうに剣を掲げてみせる。

 剣士になるという夢に近付けたようだ。

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