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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第27話 力の格差

 私は疾走して鉈を振りかぶる。


 それを見た献身の悪魔は後退し、無事な片手を前に突き出した。

 彼の手のひらに光が灯る。

 刹那、光線となって幾重にも分かれながら放射された。


 私は速度を落とさずに接近する。

 光線に貫かれて全身数カ所を穿たれた。

 それでも前進は止めない。

 肉体に粘液の擬似骨格を張り巡らせると、力任せに攻撃を仕掛けた。


 献身の悪魔が躱そうとしたので、吸い寄せられるように間合いを詰める。

 まず刃を彼の腹に刺し、そこから斜めに往復させた。

 献身の悪魔の上体と引き裂けた片腕を切断する。


「あ、ぐぁっ!?」


 分断された身体が地面に激突した。

 臓腑を撒き散らして倒れる。


「この……っ!」


 献身の悪魔はそれでも光線を撃ってくる。

 一筋の光が私の顔面を焼き切るも、それだけだ。

 物理的には致命傷だが、これで死ぬことはありえない。

 私は意識を研ぎ澄ませて失われた視力を補う。


 その隙に献身の悪魔は、体内から白い枝を生やして肉体同士を繋げていた。

 応急処置に近い力だが回復手段を他にも持っていたらしい。

 傷口を塞ぎながら立ち上がった彼は、またも光線を連射する。


「無駄だ」


 私は大股で歩み寄る。

 またも全身各所を損傷するも、やはり動きに支障はなかった。

 光線に擬似骨格を破壊するだけの威力はなく、血肉を焼かれただけである。


 私は鉈を投擲する。

 回転する刃に対し、献身の悪魔は屈んでの回避を選択した。


 鉈が彼の頭上を通過した瞬間、液状化して変形する。

 触手のように伸びると、背後から献身の悪魔を拘束した。


「なっ!?」


 献身の悪魔は驚愕する。

 必死に抵抗するが引き剥がせない。


 私は距離を詰めて手刀を構えた。

 疑似骨格の露出した片手は下手な刃より鋭いだろう。


 献身の悪魔は私を見やり、複雑な表情を浮かべた。

 敗北を悟った彼は、掠れた声で懇願する。


「どうか、住民は殺さないでくれ……彼らに罪はないんだ」


 私はそれには答えず、ただ一方的に告げる。


「これが現実だ」


 横薙ぎに手刀を振るう。

 献身の悪魔の首が宙を舞った。

 そこに粘液の触手が跳びかかって串刺しにして復活の可能性を摘み取る。


 残された身体から力が霧散してその場に崩れ落ちる。

 もう動くことはない。


 献身の悪魔は死んだ。

 ただし、消滅まではさせていない。

 何十年……或いは何百年後には今の人格のまま蘇るだろう。


 彼はまだまだ未熟だった。

 言い換えると成長の余地があるということだ。

 今回は見苦しい主張が目立ったが、いつか上位悪魔になれる素質は残されている。

 可能性は低いが、実現の時を祈ろうと思う。

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