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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第25話 防衛者

 暫し考えた末、私は街を滅ぼすことにした。

 それがエルフ達の願いだからだ。

 この街を素通りしたところで損はないが、破壊することで得する部分がいくつもある。


 無関係な住民を巻き添えにするのは気乗りしない。

 しかし、そんなことで躊躇うようでは復讐の悪魔などやっていられないのだ。


 この身は暴力装置である。

 つまらない私情を挟まず、ただやるべきことを為すだけだ。


 そうして決心した時、彼方から飛来する反応があった。

 いち早く察知した私は飛び退く。

 直後、先ほどまでいた場所に一人の青年が落下した。


 地面を割りながら着地した青年は、金の刺繍の入った白い衣服に身を包んでいた。

 確かどこかの教会の制服だったと思われる。

 青年は銀色の髪を掻き上げると、真剣な表情で私の前に立ちはだかった。


「待ってくれ。攻撃を止めてほしい」


 私は相手を観察する。

 この青年を私は知っている。


 彼は人間ではない。

 献身の悪魔だ。

 他者に尽くすことを生き甲斐とする男で、その身を犠牲にすることを最上の喜びだと信じている。


 献身の悪魔は、沈痛な面持ちで前に進み出た。

 そして私の顔を注視する。


「君の目的は知っている。帝国を滅亡させたいのだな」


「帝国を含む三カ国の滅亡だ」


「細かいことはいい。とにかく復讐を中断するんだ」


 献身の悪魔は同じ主張を繰り返す。

 彼が大真面目なのは知っているが、どうにも空気感が噛み合わない感じがした。


 私は右手に鉈を握りしながら問う。


「お前はどこの差し金だ」


「帝国と契約した。爵位を貰うことを代償に、君との停戦を請け負った」


「無駄なことだ。私は絶対に停戦しない」


 断言するも、献身の悪魔は引かない。

 彼は辛そうな顔で懇願してきた。


「頼む。この街にいる人々は関係ないだろう。エルフ達に危害を加えたわけではない」


「日常的に奴隷として扱っていたはずだ。私との契約で死んだエルフの魂は、この街からもやって来ている」


「そ、それでもだ! エルフ達はもう生きていない。これ以上、無為な犠牲を出すことはないはずだろう! 君の責務は一般市民の殺戮ではないはずだ」


 献身の悪魔はひたすら感情的に訴える。

 彼からは殺気を感じない。

 どうやら私を攻撃するつもりはないらしい。

 信じ難いことに、話し合いで済ませようとしているようだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これはそもそも悪魔なのか?献身って恐ろしいものでは無いような?狂気があるのかな?
[一言] 献身の悪魔、、、これは上級悪魔ではなさそうですな。
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