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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第21話 情報提供

 快楽の悪魔が唐突に表情を消す。

 彼女は抑揚に乏しい声音で発言した。


「侵略に関わる三カ国が、あなたの関与に気付いたわ」


「早いな」


「各国の雇う悪魔が察知したのよ。最近は専属で手元に置くのが主流らしいわ」


 それは初耳の情報だった。

 我ながら復讐とは関係のない分野に疎く、情報収集を怠りがちである。


 一方で快楽の悪魔はよく調べている。

 彼女の虜になった者も多く、そういった人間を情報源としているのだろう。

 件の三カ国に立ち寄ってからここに来たものと思われる。


(国の諜報や護衛に悪魔を使う時代なのか。安売りしすぎだと思うが)


 私は現在の変化に何とも言えない感情を覚える。


 悪魔は超常的な災厄だ。

 様々な制約に縛られているが、総合的には人間を遥かに凌駕する力を持つ。


 そのような存在が気軽に行動すべきではない。

 悪魔の契約とは、もっと躊躇うような物だと思っている。

 自らの欲のために軽い代償で力を貸す悪魔も多いと聞くが、非情に嘆かわしい現状であった。

 ただ、私のような主義は懐古的だと揶揄されるので、自分でも判断の付けがたい部分だった。


 悪魔の在り方について考えていると、快楽の悪魔が淡々と説明を続ける。


「帝国は他の悪魔との契約を始めたわ。国家の威信にかけて抗戦するつもりよ。かなり動きが早いわね」


「そうか」


「王国は報復を恐れているみたい。そのうち停戦交渉を持ちかけてくるかもしれないわ」


「…………」


「連邦は混乱しているわ。まだ意見がまとまっていないから、それぞれが独断で動くでしょうね」


 快楽の悪魔は饒舌に語り終えると、満足した様子で一呼吸を置いた。

 その視線は、こちらの反応を窺っている様子だ。


 私は素直に疑問を口にする。


「なぜそれを私に伝えるんだ」


「友人として世話を焼いただけよ。復讐が円滑に進む方が都合が良いでしょ?」


「助かる」


「いいのよ、気にしないで。暇潰しに調べただけだから」


 快楽の悪魔は滑らかな動きで宙返りすると、そのまま上空に飛び上がった。

 彼女は緩やかに進みながら手を振ってくる。


「まあ頑張ってね。応援しているわ」


 快楽の悪魔は一気に加速して、あっという間に飛び去って姿を消した。


 取り残された私は、死体から引き剥がした衣服を着る。

 衣服代わりにしていた粘液を体内に吸収すると、首都の敷地外に向けて歩き出した。

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