表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/107

第19話 変わり者

 快楽の悪魔は城の跡地の方角を見やると、小さく嘆息した。

 その眼差しには、どこか軽蔑の色が含まれている。


「今回の嗜虐も軽率だったわね。早死にするのが特技になりつつあるんじゃないかしら」


「素の力は悪くなかった。あと何百年か契約を重ねれば、中位悪魔の中でも頂点に君臨しただろう」


「それでも上位にはなれないのね」


「だから殺した」


 今回の嗜虐の悪魔には十分な才能があった。

 既に並の悪魔ならば圧倒できる実力を持っており、今後の行動次第でさらなる力を手にしていたはずだ。

 しかし、それでも私の望む領域には達しなかっただろう。

 支配も克服もできず、半端な状態になったに違いない。

 故に始末するという結論に至った。


 悪魔という存在は人類にとって害になると私は考える。

 嗜虐の悪魔などは、その中でも筆頭に挙がるような災厄であった。


 人々の争いを促進させて、無駄な怨恨を蔓延らせる。

 私からすると存在全てが邪魔なのだ。


 しかし、いくら殺しても転生する。

 だから新たな人格が誕生するたびに観察し、将来的に上位悪魔になるかを見定めてきた。

 成長の余地があるうちは生かして、望みがなくなれば殺す。


 そういった監視対象は、嗜虐の悪魔だけではなかった。

 中位の中でも人類への被害が大きい悪魔は、契約の合間を縫って動向を窺っている。

 そして成長が見込めなければ消滅させる。


 一見すると無駄な行為にも思えるだろう。

 しかし、過去にはこの手法で上位悪魔を生み出して、惨劇の要因となる契約を減らしたこともあった。

 だから私の行いも徒労には終わらないと信じている。


「次の嗜虐は上位の素質を持っているかしら」


「どうだろうな。結果次第では殺すだけだ。今までと何も変わらない」


「……永遠に繰り返すの?」


「少しでも復讐が減るのなら尽力する」


「相変わらず偏屈ね。あなたが名を克服できた理由がよく分かるわ」


 快楽の悪魔は意味深に微笑する。

 彼女との付き合いも長い。

 互いに上位となる前から知っている。

 色々と思う所があるのだろう。


 私の周りを浮遊する快楽の悪魔は、思い出したように話題を転換した。


「それにしても、気に入った契約しか交わさないあなたがエルフに加担するなんてね。何か琴線に触れるものがあったの?」


「復讐を継ぐだけの正当性がある。そう考えただけだ」


「三つの強国に狙われた件でしょ。人間っていつの時代も残酷よね」


 快楽の悪魔は大げさにため息を吐く。

 彼女は知っている。

 人間がいかに醜く残酷であるかを。

 そして、彼らの本性を糧に我々は生きているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >悪魔という存在は人類にとって害になると私は考える。 ふむ……? 単に事実を語っているだけなのか、 それとも、「復讐」は悪魔でありながら何らかの意味で人間を気遣っているのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ