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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第18話 悪魔の素質

「…………」


 私は無言で警戒心を高めた。

 快楽の悪魔は非常に強い力を保有している。

 人間の本能に近い部分を司るのだから当然だろう。

 太古より消滅せず、自己を積み重ねてきた真性の怪物である。


 当然ながら嗜虐の悪魔とは格が違う。

 とは言え、私の方が弱いわけではなかった。

 ここで一方的に殺されることはまずない。


 しかし、ふとした拍子に命を奪われる恐れはあった。

 そうなれば復讐の契約は破綻する。

 絶対に殺されるわけにはいかなかった。


 私は片手に粘液の鉈を生み出しながら声をかける。


「何か用か」


「悪魔の消滅が見たかったのよ。とても珍しい現象だから」


「私が嗜虐を殺すと分かっていたのだな」


「当然でしょ。存在の格が違うんだから。生まれたばかりのあの子には期待するだけ無駄ね」


 快楽の悪魔は辛辣だった。

 同時に私のことを評価しているらしい。


「ところで、お前は敵か。それとも味方か」


「今回も中立よ。そもそも最近は誰とも契約してないわ」


「あまり怠けると力が落ちそうだが」


「甘く見ないで。これでも上位の悪魔よ? 百年か二百年で弱るほど子供じゃないの」


 快楽の悪魔は、腰に手を当てて胸を張ってみせる。

 彼女ほどになると、契約を集め始めるときりがない。

 そこまで勤勉ではないので面倒になるのだろう。

 本人の言う通り、力の低下もほとんど起きないので問題はない。


 そして現在の彼女は中立の立場らしい。

 傍観者という姿勢だそうだが、やはり油断はできない。


 彼女は極端に気まぐれな性格している。

 何をしでかしてもおかしくない存在だった。

 いきなり私の復讐を妨害してくる恐れもあった。


 快楽の悪魔は私との敵対を嫌っているので、おそらくそのようなことは起こらないと思う。

 戦いになると、自らの消滅を視野に入れねばならないからだ。

 私の力は悪魔ならば誰でも知っている。

 だからきっと攻撃を仕掛けてくることはない。


 ただ、そういった思い込みが判断を誤らせるのもまた事実だった。

 彼女のことは敵であると考えながら接するべきだろう。


 快楽の悪魔は、私の持つ鉈を一瞥して微笑する。

 他者の心理に聡い彼女のことだ。

 きっとこちらの思考を正確に予測し、警戒されている上で気さくな態度を保っている。

 私の反応の一つひとつを楽しんでいるのだ。


 万事を自らの娯楽と解釈する。

 それが快楽の悪魔だ。

 寛容とも傲慢とも言える精神性こそが、彼女の根源であった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この世界だけなのかな?別世界は存在しない?複数世界があるとしても、一つの世界にこんなに悪魔がいるのはちょっと気になります。
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