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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第16話 悪魔の死

「この、野郎がぁ……っ」


 嗜虐の悪魔が暴れようとする。

 しかし、粘液の茨で行動は著しく制限されている。

 抵抗するほどに深く縛られていった。


 その間も執拗に私を攻撃してくるが、この肉体はもはや傷付く場所がない。

 全身が余すことなく血みどろなのだ。

 赤黒い人型の疑似骨格に、僅かに肉片がへばり付いている状態である。


 ただし、能力は大幅に増幅していた。

 嗜虐の悪魔に復讐するための力が高まっているのだ。

 これこそが、復讐の悪魔の本領である。


 劣勢に追い込まれた嗜虐の悪魔は弱体化する一方だった。

 彼女には現状を打破するだけの策がない。

 自らに紐付けられたその名を支配していれば、些細な弱さなど埋めるほどの力になっただろう。

 逆に名を克服していれば、傷付けられることが弱点にならない。

 常に十全な実力を発揮して、ここまでの差は生まれなかったはずだ。


 粘液の茨は、容赦なく嗜虐の悪魔にめり込む。

 ついには臨界点を越えて、彼女の肉体を引き裂き始めていた。

 夥しい量の血が流れ出して大地を染めていく。


 私は悶絶する嗜虐の悪魔に告げる。


「お前の嗜虐心はこの程度か。吹けば消える脆いものだ。何の価値もない」


「て、めぇ……!」


 嗜虐の悪魔が吼えようとしたので、その口に粘液を注ぎ込んだ。

 そして体内で硬質化させて、発声も呼吸もできないように固定する。


 嗜虐の悪魔は、身動きの取れない状態で様々な苦痛を浴びるように感じ続けた。

 やがて白目を剥いて血の涙を流し始める。

 低迷気味だった彼女の力がさらに霞んでいく。


(もうそろそろだな)


 悪魔は死んでも蘇ることができる。

 通常はそのまま復活するが、完全に消滅する場合があった。

 その時は記憶と魂を失って転生して、まったくの別人が同じ名の悪魔となる。

 本人にとって、消滅とはすなわち死なのだ。


 悪魔を消滅させる方法はいくつかある。

 私の扱うそれは非常に単純かつ原始的だった。


 その悪魔の尊厳を打ち崩して、全存在を否定する。

 絶大な苦しみを与えながら、何もかもを破壊していくのだ。

 自らの意義を放棄した悪魔は、死を望みながら消滅するという寸法である。

 先ほどの罵倒もその一環だった。


 嗜虐の悪魔は心があまり強くない。

 そう長くは持たないだろう。


 途中で殺してしまわないように気を付けつつ、私は嗜虐の悪魔を嬲り続ける。

 丹念に慈悲もなく繰り返していると、間もなく嗜虐の悪魔の身体に異変が生じた。

 手足の先から砂のようになって崩れていく。

 そうなってからは早い。

 自己を喪失した嗜虐の悪魔は、静かに消滅したのであった。

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