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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第13話 嗜虐と復讐

「くそがああああアアアアァァッ!」


 嗜虐の悪魔が叫び、本能を押し殺して猛然と突進してくる。


 彼女の拳が私の胴体に打ち込まれた。

 炸裂と同時に衝撃波が放たれて、私の体内が爆発する。


 嗜虐の悪魔の拳が胴体を貫き、背中から飛び出した。

 肉片が霧となって散る。


 しかし、私が怯むことはない。

 粘液の骨格を操作し、胴体から引き抜かれようとする拳に絡めて固定する。


 私はその状態から鉈を一閃させた。

 動けない嗜虐の悪魔に向けて斬撃を叩き込む。


「チィ……ッ」


 舌打ちした嗜虐の悪魔は、衝撃波で鉈を防いだ。

 その間に私の体内では粘液が刃に変換されて、貫いた拳を切断する。

 鉈を作った技術の応用であった。


「この野郎ッ」


 嗜虐の悪魔が私を蹴り上げた。

 さらに遠距離から衝撃波を連続で当ててくる。


 高々と打ち上がった私はやがて落下し、受け身も取らずに地面に激突した。

 でたらめに折れた全身を、粘液の骨格によって強引に正しい形へと戻す。


 とは言え、傷が回復するわけではない。

 外見は肉と骨の混ざり合った化け物である。

 それでも機能面では支障もないので、特に気にしていなかった。


 血みどろの私は、人体構造を無視して立ち上がる。

 胴体の穴は、粘液が覆って隠していた。


 対する嗜虐の悪魔は息が切れている。

 切断された片手は再生が上手くいっていない。

 私が粘液を混入させたからだ。

 彼女程度の再生力では到底治癒できないだろう。


「ハァハァ、くそが……!」


 嗜虐の悪魔は苛立たしげに私を睨む。

 今頃はどう戦えばいいのか考えているに違いない。


 肉弾戦は、骨格操作による刃で反撃を貰いやすい。

 傷が治せないので傷が増えていく一方なので不利である。


 そうなると無難なのは遠距離戦闘だろう。

 嗜虐の悪魔は、衝撃波という使い勝手の良い能力を持っている。

 こちらは満身創痍なので、持久戦に持ち込むことで敵うと考えているのではないか。


 考察を終えた私は血肉を垂らしながら一歩進む。

 影も形も無い声帯で声を発した。


「戦闘で傷付くほど私は強くなる。反撃すべてが報復行為となるからだ。傷が増えるだけ一撃が重くなり、存在が死より遠のく。復讐は連鎖するが故に弱くなることがない」


「ああ、何言ってんだ」


「一方で嗜虐の悪魔は違う。残酷な行為で強くなるが、それ以上に傷付けられると弱くなる。お前はまだ若い。根本の弱点を克服できていないようだ」


 私は冷静に指摘する。

 粘液に宿る力は、刻一刻と強大になっていた。

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