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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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105/107

第105話 人間と悪魔

 少年が片手を胸の前に持ち上げる。

 そこに魔力が集まって渦巻き始めた。


 簡易的かつ原始的な魔術であり、魔力操作の基礎だ。

 これを発展させることで、様々な能力に昇華していく。

 人間の頃の少年に魔術適性はなかったので、転生を経て習得したのだろう。


「悪魔ってすごいよな。契約で力を借りた時とはまるで違う。本物って感じがするよ」


「全能感に溢れているだろうが、それに任せて暴走すれば破滅するぞ」


「分かっているさ。ペナンスと旅をした時に何度も見たからな」


 少年は苦笑気味に言う。


 生前、彼は何度も悪魔の戦闘を目撃してきた。

 その末路も知っている。


 人間に比べれば悪魔は超常的な存在だ。

 しかし、決して無敵ではない。

 格上は山のようにおり、追い抜かされることも珍しくなかった。


 たった一度の失敗で道を踏み誤り、結果として魂ごと消滅する場合もある。

 前例を見た少年は、己を十分に戒めているようだ。


 私は彼の力を観察によって暴いていく。


(下位ではないな。中位……しかも名を克服しかけている)


 初期状態としては破格だろう。

 それだけ適合している証拠である。

 しかも名の克服に傾いているということは、兼ねる悪魔になる可能性も考えられた。


 やはり私との接触が影響している。

 これからさらなる力を得て強くなっていくはずだ。


 そこでふと一つの可能性に気付いた。

 忠告の意味も込めて私は少年に尋ねる。


「誰かとの契約で私に会いに来たのか? 殺しなら推奨しないが」


「違うって! こうして生き返ることができたんだ。そりゃ会いたいに決まってるだろっ!」


「そういうものか」


「そういうものだ! というか、ペナンスの暗殺なんて無理に決まってるだろ。そんなことを頼まれても断るって!」


 少年は首を振って強く否定する。

 敵意も害意もない。

 少なくとも嘘はついておらず、本気でそう考えているようだった。


(人間らしさが色濃く残っているな)


 規範の悪魔は、決まりを定めて守らせる……或いは禁じる力を持っていた。

 宿る人格によって行動方針が大きく異なる。


 調停の悪魔のように中立を司る場合はまだいい。

 それが過激化すると、独善的な正義を掲げて逸脱する悪を滅ぼそうとする。

 厄介な成長は私が始末する対象になり得る。


 悪魔の精神は、死者の人格から選定されるものだ。

 同じ名を冠していても、人格次第で性格が変わるため、時代ごとに様々な悪魔が生まれる。


 一方で悪魔になったことで、人格側が大きく豹変する時があった。

 私などは典型例だろう。

 もはや人間だった頃の精神など面影もない。

 規範の悪魔となった少年にも同様の兆候があるのではないかと危惧したが、彼は生前から変わっていないようだった。

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