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エルフが絶滅した日。  作者: 結城 からく


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第103話 国家の死

 王国は間もなく滅びる。

 それは避けようもない事実であった。


 四年を費やして地方都市も壊滅的な状態で、難民が続出して他国に流れている。

 もはや国家としての機能は完全に麻痺していた。

 立て直すにしても莫大な手間を要するだろう。

 無事な領土も周辺諸国に呑まれることは必至で、取り返しのつかないところまで崩壊したのだった。


 半日ほど前、王国の最終兵器も無力化した。

 現在は王都からやや外れた焦土に散乱している。


 その最終兵器とは、断罪の悪魔と蟲毒の悪魔のことだ。

 降伏が不可能と悟った王国上層部が契約をした者達であった。

 どちらも名を支配した災害のような力を持つ強者だった。

 彼らの力で私を抹殺するつもりだったのだろうが、残念ながらその考えは読めていた。


 私はこれまで幾度となく復讐を代行してきた。

 降伏が通用しない時の人間の行動は把握している。

 したがって私は正々堂々と対決し、兼ねる悪魔の能力を十全に発揮した。

 そうして"断罪"と"蟲毒"を殺害した。


 何も難しいことではなかった。

 確かに相手は難敵だが、それは上位悪魔の範疇である。

 兼ねる悪魔の私とは絶対的な格差があった。

 復讐の悪魔として挑めば間違いなく勝てないだろうが、こちらには十種の名に根付く力が宿っている。

 暴力という観点において、私を凌駕する者は存在しなかった。


 兼ねる悪魔を殺すには、最低でも兼ねる悪魔でなくてはならない。

 迎撃を引き受けた"断罪"と"蟲毒"もそれを承知で契約を引き受けたのだろう。

 彼らの魂は消滅させていないので、いずれ復活するはずだ。

 もっとも、その頃には復讐も終了している。


(残るは連邦だけか)


 帝国はこの四年で完全に瓦解した。

 各地が独立と戦争と併合を繰り返している。

 もはや以前までの面影はない。

 国家としての死を迎えたと評しても問題ないだろう。


 王国も間もなく滅びるため、標的は連邦のみとなった。

 昨今の連邦は意見がまとまらず迷走気味だが、そんなことは私に関係ない。

 勝手に綻びを生んでいるなら、そこに付け入るまでだ。


 真っ向勝負では敵わないと悟った彼らは、きっと様々な策略を図ってくる。

 私はそれらを捻じ伏せていかねばならない。

 エルフ達も乗り気なので、殺戮行為で困ることは何もないだろう。


 今後について考えていると、背後に不審な気配が生じた。

 私は反射的に振り返る。

 そこには見覚えのある姿が立っていた。


「よう、ペナンス。久しぶりだな」


 気さくに話しかけてきたのは、四年前に死んだはずの少年だった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] >そこには見覚えのある姿が立っていた。 ……ホワッ!? [一言] 続きを刮目して待ちます。
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