砂時計の時間
ネクタイを直してくれる人が好きです。
いってきます。その前に必ず砂時計をひっくり返す。
砂時計の中の青い砂は、サラサラと静かに、二人の汗ばんだ心とは無関係に、ただただ静かに終わりを迎えるためだけに崩れ流れゆく。
朝のニュースを少しだけ大きめに、しかし二人の耳には届くこと無く。アナウンサーは雑踏を、そして二人を掻き消すように原稿を読み続ける。
砂は残りわずか。さり気なくもう一度ひっくり返し、再び意識を遠ざける。スーツとエプロンのコントラスト。猫が静かに通り過ぎた。
いつの間にか砂時計は終わりを告げていた。ゆっくりと終わりを、また新しい始まりを、始まりの続きを、砂時計と言う名の免罪符を求め手を伸ばすと、二人の手が静かに触れた。