ウルトラマラソン篇
仁と瞳がチャレンジ富士五湖に挑戦する
瞳と仁は、河口湖の湖畔にいる。
「走れんのかな、100キロ。練習したけど、最高で40キロ迄だったし」
「なんとかなるんじゃない。やれば出来るよ。きっと」
「明日だもんな。頑張るけど関門引っ掛かったら、ごめんね」
「また弱気なんだらから。大丈夫だよ。キロ7分で走れば関門クリア出来るから」
「まぁ頑張るけど」
二人は湖畔を歩きながら話す。四月終わり、河口湖湖畔は桜が満開になっている。その後、河口湖湖畔の宿にチェックインする。
大会当日。朝5時30分。チャレンジ富士五湖100キロレースがスタートする。
一斉に、富士北麓公園をスタート。瞳と仁も走り出す。
「ゴールでね」
「ゴールでね。わかったよ。マイペースで行くから」
瞳は、仁とやり取りした後、一気に加速。北麓公園から続く下り坂を気持ちよいスピードで走っていく。仁は、ベースを守る為に、腕時計をチラチラみながら走る。山中湖を一周して、北麓公園前に帰ると第一関門。二人は無事クリア。その後、河口湖へと、下りて行く。河口湖の大橋通を通ると一面桜並木が現れる。仁は『綺麗だなぁ。後でゆっくり見たいや』などと思いつつ、ベースを守り走る。桜並木を越え、湖畔を半周して、登りに入ると、また関門。ここも、仁はクリア。瞳は余裕でクリアする。坂を越え、3つ目の湖、西湖が姿を現す。ここに来て、『ヤバイな~。少し横っ腹が痛いし、ベースもギリギリだなぁ』と思いつつ走る。瞳は、西湖を半周して、精進湖へと向かっている。『少しベース速いかな、まぁいいや』と思いつつ走っていく。
仁は西湖湖畔半周を終え、精進湖畔に向け登り坂にさしかかる。『左足が効かないな、関門大丈夫だろうか』と思いつつ、歩きに近いベースで走ってみるが、次第に歩き出す。『登り切ったら走ろう』と思いながら歩く。国道に出ると、交互通行になっていて、速いベースの人達とすれ違う。国道の歩道を精進湖畔に向け走る。仁はすれ違う速いベースの人達の中に瞳を見つける。
「はやー、もう折り返し」
瞳に仁が言う。
「ちょいペース速い感じ。仁、関門クリアしろよ」
瞳はそういって、西湖方面に走り去っていく。仁は精進湖畔に到達、これから精進湖畔を一周する。精進湖畔を走りながら、仁は、『関門の時間確かに13時だよなあ、急がなきゃ、クリア出来ない』と思い、ペースを上げる。左足の腿が固まったような感覚、仁は、走りながら『関門、関門、クリアしたいな』と思っている。精進湖畔を一周し、国道から一本入った民宿街に関門がある。仁は、息を切らしながら関門へ。『やったー関門クリア』ほっとする仁は、関門の看板を確認してみる。関門時間13時30分。『30分も余裕ある、やったー』仁は、エイドでおにぎりを取り食べる。食べ終わり、西湖に向けまた走り出す。西湖の湖畔を半周してるとき、仁の左足太ももはもう張りが強くなり、固まった感覚。仁は、『まあ、関門クリアしたし、このペースで行こう』と思っている。行きは湖畔も見えて短く感じていた道だが、帰りの湖畔はなかなか湖畔から湖が見えず、長く感じている。太陽は西に傾きかけ、優しい光がランナーを照らす。長い影を引きずりながら、河口湖の湖畔迄たどり着く。湖畔なはずだが、湖は見えず、車の往来が激しい道路を走っていく。そして、湖畔沿いの道を走り抜け、小さな坂を登り、街中に。街中の先に、富士山がくっきりと姿を表す。『オー、ナイス』と思いながら進んでいく。そして、大通りから左に曲がり、いよいよ富士山の裾野、北麓公園迄の果てしない大きな坂にさしかかる。『ここは走るの無理ー。歩いていくしかないな』と仁はウォーキングに切り替え、坂を登り出す。登り出して一時間、ようやく北麓公園入口にさしかかる。場内アナウンスが流れている。「初ウルトラマラソン挑戦の…」仁はアナウンスが自分の事だと気づいた。『やったー、完走出来たんだ』自然と笑顔になり、ゴールテープを切る。完走者にはメダルが与えられる。仁もメダルを受け取り、更衣室に引き上げる。
「やったーな、ナイスラン」
瞳が駆け寄り、二人はハイタッチをする。
「何分前にゴールしたの」
「一時間半前にゴールしてた。ハイペースだったけどなんとかゴールできた。すれ違っただろう、あれであすこからペースマジ落ちたけどね」
「やっぱ速いね。走りきる自信なかったけど、出来るもんなんだね」
「自信ついた?仁はいつも諦めるからさ、大丈夫か、心配したよ」
「まぁ、少しだけね。レース中もずっと、関門に引っ掛かるかななんて考えてたけど、大丈夫だったし。瞳とすれ違った後は、ゴールしたいなって思ったよ。ゴール出来てホットしてる」
「じゃあ次の目標、美ヶ原80キロ、やってみる?」
「いいよ。エントリーしよう」
仁と瞳は、会場を後にする。
ウルトラマラソンを完走し、いよいよロングトレイルにエントリー。