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陽だまりひとつ。  作者: お餅。
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2-彼奴のなまえ。

 フキハル ヒナタ。その明るい名前にそぐわない真夜中みたいな黒い毛並みの彼奴(あいつ)、そして俺がその時に見惚れていれた彼奴はそう名乗った。

 その日は、その綺麗な毛並みに吸い寄せられるように何度も勝手にヒナタの方へと視線が動いた。新学年という事で色々と話していたはずの先生の話もあまり入ってこなかった。


 そのまま先生の話と時間は過ぎてゆき、気づけば周りの生徒たちは帰りの支度をし始めていた。

 慌てて俺も支度をする。そうだ。ヒナタはどこだ。

 周りを見回すも、既にその姿はどこにも見当たらなかった。

 仕方ない。他に特に話を出来そうな奴も既に居なさそうだし、俺はスマホを取り出して去年一緒のクラスだった奴にメッセージを一つ送った。


 下駄箱から靴を取り出し、地面に置いて履こうとした時。

 「おーい、コカゲくーん!」

 背後の方から俺を呼ぶ聞き覚えのある声が飛んでくる。

 俺は振り向いてそれに応える。

 「おう、シグレ」

 「コカゲくんから呼ぶなんて珍しいね、どうしたの?」

 こいつがその元クラスメイトの冬川(ふゆかわ) 時雨(しぐれ)、白熊獣人にしては少し小柄な奴だ。

 「てか聞いてなかったけど、シグレって何組だったんだ?」

 「僕? 僕はD組だったよ、去年も一緒だったのは…ハルトとか居たよ?」

 「隣のクラスだったのか…俺の方は去年一緒のクラスでも話した事ある奴はあんま居なかったはず…」

 俺はあまり気にかけられなかった周りの人物について、記憶を探って話をする。

 「それで、ちょっと知ってるやつと話をしながら帰ろうかと思って…」

 「そんなの新しく話しかけて友達作っちゃえば良いのにさ〜、コカゲくんは考えすぎなんだよ〜」

 そこで俺はふと思い出して例の彼奴の話をすることにした。

 「それがさ…そんな余裕もないくらい不思議な事?があってさ…」

 「なになに、コカゲくんの不思議な事って。 すっごい気になるなぁ〜」

 「いや、多分大した事じゃないんだけどさ…」


 俺は歩きながら、ゆっくりと話し始めた。

 「黒板に貼ってた紙に、クラス全員の席順が書いてあったんだ…」

 「うん」

 「それを見てから俺の席に行ったらさ、先に別の奴に座られてたんだよ」

 「コカゲくんの勘違いだったとか?」

 「いや…逆にその相手が間違えてたんだけど、そいつがめちゃくちゃキレイな毛並みの黒猫でさ…」

 「もしかして、イイトコの子とか?」

 「いいや、それはわからないけど…とにかく俺、ずっとそいつから目が離せなくて気づいたらもう周りのみんな帰りだしてて…」

 「つまりは、今日はずっと毛並みの良い黒猫の獣人に見とれていたと?」

 「あぁ…でも、帰りだした周りの奴らに気づいて俺も慌てて支度してる間にもうそいつは帰ってて…」


 上手く言葉が纏まらないが、俺は頑張ってシグレに伝えようと努力した。

 「あー、いや、もうその話は大体分かったよ」

 「は? 分かったって…何がだ?」

 「それは…秘密?」

 パチッとウインクをして俺を見るシグレ、そんなことしても可愛くはないからな?

 「…は? 秘密ってなんだよ…」

 「うーん、そうだねぇ… もうちょっと、コカゲくんがその黒猫くんと友達になってから教えるよ♪」

 「友達になりゃ良いのか…?」

 「うん、まず第一条件だね」

 それなら簡単な話だ、早速明日から話しかけてみよう。


 これが、俺とヒナタの出会い、そして始まりの日だった。

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