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嘔吐後、勇者は近くにあった岩を背に座っていた。ソニアは水を持ってくると言いこの場にはいない。勇者はぼんやりと城とその周囲を見渡した。日差しが強く、空の青に魔物の黒紫と地面。遠くには先ほどソニアが倒した魔物が目に付く。魔物は一匹もこちらを視認していないのか、勝手にのそりのそり動いていた。
城から出るときも魔物は一匹も目にすることはなかった。魔物は外にしかいられないのかそれとも城には入れないだけなのか? ……城で休憩したほうが安全なのではないかと立ち上がろうとして
「もう! ゆうしゃさま大丈夫でしたか? お水いります?」
視界が暗くなり、ソニアが水をいれた器を持ってきてくれたので、勇者は受け取る。
――ありがとう
そのまま一気に飲み干した。それをみてソニアはなぜか歯を見せて笑った。
「いい飲みっぷりですね、勇者さま! まだいりますか?」
勇者が頷けば「待っていてください」とソニアはその場から城へ戻っていく。水を飲んだおかげで体が楽になった。勇者は大きく空気を吸い込み、はあと息を吐いた。
――夢はいつ覚めるのだろうか
魔物を見る。移動速度は遅い。剣を振りあげようとしたが、魔物の身体に沈んだままだった。自分の腕力が足りないのか。刺せばよかったのか。小さく切りつければよかったのか。勇者にはわからない。
「お待たせしました! お水です、どうぞ!!」
ソニアが水と武器を持って戻ってきた。勇者は礼を言って水を受け取り、ゆっくりと飲んでいく。
「次は槍にしましょう、勇者さま! その次は鞭です! そしてその次は……」
――はあ
やる気になっているソニアに水を差すのは悪い気がして、勇者は黙った。立ちながら、水を飲み干すと器を回収され代わりに自分の身長よりも高い槍を渡された。やはり剣と同じく槍も使ってことなどない。
「さあ、頑張ってください!」
――これどうやって使うんだろう
閃光が魔物へと飛んで行った。