5
のそりのそり、と衝撃がやってきたほう……正しくは勇者とソニアの位置に魔物が近づいてきている。
「来ました! 来ましたよ!」
ーー来ないで来ないで!
勇者は自分の両手を見る。今まで争い方面に、荒々しいことをしてこなかった手。ふっつうの手。その手には剣。どう降ればいいのか、刺せばいいのか、そもそもどう扱えばいいのかわからない。
「勇者さま!」
ソニアが微笑む。
「これから、あなたの伝説が始まるのですね!」
言うと、勇者の横にソニアはおらず後方に立っていた。
ーーどうすればいい
剣を握りしめる。魔物と自分の距離が近づいていく。
「まずは第一歩ですよ! ファイトです! ふれーふれー!!」
ソニアの適当な声援は右から入って左に抜けていく状態である。どうにかして魔物を倒さなくてはいけない。
ーーやるしかない
全身に緊張がくる。いつもより身体が硬いと認識する。剣を持つ腕を振り上げて真上から狙う。魔物がきたら勢いよく真下に振り下ろす。剣なんてわからない。振り下ろして……また振り上げて振り下ろせばいい。きっと何度も繰り返せば倒せるかもしれない! 自分で試してみるしかない。
両腕を真上にあげて……!