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「ではではっ! 勇者さま、はりきっていきましょう。武器は持ちましたか?」
――ほ、本当にやるんですか?
勇者の横には杖を構えた自信満々のソニア
「ええ、もちろんです。援護はお任せ下さい!」
――こういった、本物の武器を持つのも初めてで、刃物なんて・・・・・・鋏とか調理するときの包丁しか・・・・・・
勇者は自分の持っているものの重さに戸惑っていた。自分の手には剣。自分の身長の半分の長さの刃物。
(百均のダンベルより重い!)
勇者は慣れない重みに、視線を下げた。これを扱え、とは・・・・・・
「大丈夫です! 私、学園では雷のソニアと呼ばれていたんです。魔物なんて雷魔法で黒焦げですよ」
視線の先には黒い影が一匹。月に照らされてうねうねと動いている。
「まずは、剣からですね」
ソニアが勇者の耳に小さく囁く。
――無理無理、気持ち悪い。なにあれ、ぶよぶよしてる。
「大丈夫です、あれは弱い魔物です。勇者さまならチート力で秒で終わりますよ! チート力が剣ではなくても武器はたくさんありますよ。先代の勇者さまは槍だったそうです」
ソニアは杖を持っていないほうの、人差し指を魔物に向けると
「では、頑張りましょう! 勇者さま」
言って、一瞬指先が光った。ぼん、と音がし
「いい感じにあたりました!」
光が魔物へと向かい小さく爆ぜた。魔物はぶるぶると全身を震わせ周囲を探る。しかし、攻撃した方向をわかっていないようだった。
「むむ、もう一度いきますか」
再度、魔物へと光が命中し
「おお、こっちに気づきましたね!」
魔物は光がやってきた方向、勇者とソニアのいるほうにのそりと向かってきている。
――こっちに近づいてきてるけど、本当に戦わないといけないの?
「ええ! 勇者さまのチート力の出番ですよ!!」
――チート力なんて言われても・・・・・・
勇者へソニアからの期待に満ちた眼差しに、勇者はぎこちなく唇の片端を上げることしかできなかった。
――無理すぎる。