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3章 集う仲間たち

 次の土曜日、朝から呼び出しの連絡があった。

 これから特別編成チームを招集に行くので、湯子にも同行するようにとのことだった。

 どんな人がいるのか、興味と不安と半々だったが、場合によっては自分の命を預けることになるかもしれない相手だ。

 コミュニケーションはしっかりとっておきたい。

 そう考えた湯子は、金戸と一緒に船の上にいた。


「あの……金戸さん」

「何だね、玉野君」


 船の上。

 それは間違いない。

 しかし―


「随分と、磯臭いですね」

「海の上だからな」


 確かにそうだ。

 海からの風は磯臭い。

 それは良い。

 湯子だって瀬戸内の島育ちだ。

 本土に渡る以外の船にはそこまで乗ったことはないが、潮風には慣れたものだ。

 ただ、これは違う。


「いや、この磯臭さは大量に積んでいる魚のせいですよね!?」

「それはそうだろう。漁船だからな」

「だ・か・ら、どうして漁船なんですか!」


 そう、金戸が用意した移動手段は漁船だった。

 しかも、こう言っては何だが、かなり年季の入った、つまりオンボロ船だった。

 湯子だって、豪華クルーザーが用意されているとまでは思っていなかったが、せめて、高速艇をチャーターするぐらいはしているだろう、と考えていたのだ。


「あまいな。あえて、漁船に偽装することで極秘任務と悟らせないようにする狙いが分からないとは。なに、心配するな。見た目はボロいが、中身は普通に動くはずだ」

「……あとは、お金がかからないから、ですか?」

「わかってきたじゃないか。その通りだ」


 悪びれることすらなく、満足げな表情を浮かべる金戸。

 流石に廃棄されていた船を拾ってきたわけではなさそうだったが、特別な装備などの期待もできそうにない。

 さらに、漁船を操作している還暦を迎えたくらいに見える男性。

 細身だが日に焼けた肌は、いかにも老練な海の男といった感じで頼もしいが、何故この人はさっきから操船の隙を見ては漁をしているのか。


「おーい、金戸さんよ。生けすはそろそろいっぱいだが」

「そうか。では、このくらいにしておこう。業者に卸す手はずは整えている」

「こんな時まで、お金儲けですか……」


 この男が、名は体を表す守銭奴であることは、もはや疑う余地がなかった。

 湯子もツッコミを入れるのはやめて、少しでも魚臭さがしない風上へ移動する。


「それで、今日スカウトに行く人はどんな人なんです?」


 魚を数えながら電卓を打つ手を止めて、金戸が振り向く。


「今日声をかけに行くのはダイバーだ。作業場所は海底だからな。その手の技術を持った人間は必須だろう」

 ダイバーと言われて、湯子の頭に最初に思い浮かんだのは、海上保安庁の潜水士だ。

 映画やドラマでも扱われたし、瀬戸内海にも第六管区本部の大きな支部が広島市にある。

 ただ、漁船で行くには少し時間がかかるだろうと思われた。

 出港して一時間ほど経つが、因島から広島市までとなると、それなりに遠い。


「おっと、魚の売値を計算している間に着いたようだな」

「えっ、随分早いような……」


 他の支部に詰めている潜水士なのだろうか、と思い海に目をやると、数名の人間が立ち泳ぎで浮いていた。

 しかし、そこに見えるのはテレビで見たことがある潜水具を装備した人達ではなかった。

 着ているのは全身を包むウェットスーツではなく、木綿の上着。

 頭にはゴーグルではなく、白の頭巾。

 腰についているのは深度計などの道具ではなく、アワビやサザエなどの収穫物が入った袋。

 誰がどう見ても、海女(あま)さんだった。


「あの……海底の栓をはめ直すためのダイバーを探すんですよね」


 海底の栓、とか言って頭がおかしいとも思われたくないので、小声で話しかける湯子。


「そうだ。海上保安庁なども頭が固いのが多くて、どうにも話がうまく進まん。しかも、政府関係者もいる以上、話した挙句信じなかった場合、スマートでない記憶消去を〝念入りに〟せねばならん。黒メガネのエージェントが出てくる某映画のようにピカッと光らせておしまい、というわけにはいかんのだ」

「はぁ、それはそうかもしれないですけど……」


 理由はわかったが、当然不安感はある。

 海底に潜って、栓をはめるサポートをするだけなら、潜水士のような特別な技術はいらないのかもしれない。

 とはいえ、海女さんは一般人だ。

 瀬戸内が吹き飛ぶかどうかがかかった場面に引っ張り出すのはプレッシャーが大きすぎないだろうか。

 

「あの、金戸さん、ウチが言うのも本当にどうかと思うんですけど、海女さんは一般人ですよ。あまり、そういう人を巻き込むのは……」

「無論、危険である以上こちらも相手の望む報酬を支払う。それに、この瀬戸際に一般人であることに気遣いなどしておれん! 瀬戸内だけに、状況は瀬戸際なのだ!」


 最後のしょうもないシャレはスルーして、説得をあきらめた湯子は海女さん達に向き直る。


「え~と、ウチらはですね―」

「あー、聞いとるよ。ウチの人魚に用事があって来たんやろ?」

「へ? 人魚?」


 通り名のようなものなのだろうが、思ってもみなかった言葉に反応に困ってしまう。

 対する金戸は、当然そのあたりの情報はつかんでいるようで、


「そうです。私、ご連絡させていただいた金戸と言いますが、人魚さんはどちらに?」

(人魚さんって……。そんなに泳ぐのが速いのかなぁ)


 本名で呼べばいいのに、と思いながら海面を見やると、今まで潜っていたのか新たな人影が顔を出した。


「俺に何か用だって?」


 海女さんの中心に、かなりのイケメンが現れた。

 浅黒い肌。

 短く切りそろえられ、日焼けして色が抜けてほどよく茶髪になった髪。

 野性を感じさせる切れ長の瞳。

 海の仕事で引き締められた体。

 年齢は二〇代前半といったところか。

 絵に描いたような、爽やか系かつ野性的なイケメンだ。


「えっと……人魚さん?」


 イケメン好きというわけでもない、湯子でさえしばらく見惚れてしまっていたが、どうにか我に返って声をかけた。


「ああ、確かに俺の名前は人魚だけど」

「彼の名前は釜森人魚(かまもりにんぎょ)。名前のせいでよく海女さんに間違われるが、正真正銘の男―つまり、海士(あま)だ」

「へえ……カッコイイですね、人魚さん。金戸さん、頼りになりそうな人ですね」


 さっきまでの心配はどこかに消えたようで、船へと上がってくる釜森を見つめる湯子。

 その瞳には恋心とまではいかないが、年上の異性に対する憧れのようなものが見て取れた。


「あー、その人魚さんってのやめてくれるか。イメージと合わないし、泳ぎ自慢してるみたいだし」

「あ、はい、わかりました。じゃあどう呼んだらいいですか? 釜森さん?」

「そうだな、俺のことは―」


 完全に漁船に身を上げた釜森は、湯子と金戸の方を向いて、


「かまちゃん☆、って呼・ん・で♪」


 一瞬で湯子の目から憧れの色が消し飛んだ。

 紅潮していた頬も真っ白を通り過ぎて、若干青くなった。

 唇が紫色なのは何故だろうか、海で泳いで体を冷やしたわけでもないのに。


「昔やっていた某局の朝の連続ドラマを連想するが、著作権は大丈夫かね? そこに金を使う気はないのだが」

「あら、大丈夫よ? アタシ、昔からこういうノリでやってるもの。オカマと海女さんをかけて、かまちゃん。どっちかと言えば、あっちがパ・ク・リ♪」

(それはないでしょ……ていうか、こんなの詐欺! ウチのあの一瞬のトキメキは何だったの!?)


 顔や体つきだけ見れば文句なしのイケメンなだけに、あまりに残念な状況だった。

 海の中では落ち着いた物腰だったのに、今は見る影もない。

 というか、腰もくねくね動いている。


「海の中以外ではオネエになってしまうのが問題点だが、こう見えて彼の潜水能力は相当でな。瀬戸内海の海底なら簡単なボンベだけで到達できる。場所や体調によっては、素潜りでもいける」


 何のひねりもなく凄まじい能力だった。

 瀬戸内海は深さこそそれほどでもないが、潮流が激しい場所もある。

 そこを海底まで身体能力一つで潜っていけるというのは破格の能力だ。

 爽やかイケメン→オネエキャラ→超人的潜水能力と、激しく人物評価を上下させ、


「ところで、アタシに何の用事? もしかしてナンパ?」


 船から蹴り落としてイケメン状態に戻したくなる気持ちをぐっとこらえて、金戸の言葉を待つ。


「皆さんの前では、ちょっと。事情があってね」

「ふーん、いいわよ。皆~、アタシ、この渋いオジサマとお話ししてくるから、先に戻っててくれる?」


 はいよ~、と返事をしながら海女さん達が帰っていくのを見つつ、湯子はどっと疲れを覚えて座り込んでしまった。


「瀬戸内海の栓がね~。まあ広い海だもの、そんなこともあるのかもね」


 釜森は金戸の話に、割とあっさり納得したようだった。

 毎日海に潜っている身としては、感じるところもあるのかもしれない。


「で、お堅いお役所じゃあ対応できないから、アタシのところへ頼みに来た……ってことで、いいのかしら?」

「そういうことだな。あなたには抜けた栓の捜索の手伝いと、栓をはめ直す際、そこにいる玉野君のサポートをお願いしたい」


 釜森は横目でちらりと湯子を見る。

 その仕草に一瞬ドキっとする湯子だが、釜森が女の子座りをしているせいで台無しだ。

 そして、今さらりと言ったが、


「栓、見つかってないんですか!?」

「見つかっていたら、ここまで無茶はしていない。事態は非常に切迫している」

(切迫している人が、漁をしないでくださいよ!)


 言ってやりたい文句は山ほどあったが、どうせ言ってもケロリとしていそうなので、ぐっと我慢する。


「なかなか厳しそうね~。とりあえず、詳しい話を聞く前に報酬は? それなりにもらえるのよね?」

「無論だ。必要経費は国から出る。君の趣味嗜好から、要求するであろう報酬の準備もできている」


 言いながら、金戸は胸元から一枚の写真を取り出した。

 写っているのは今人気絶頂の某五人組アイドルグループ(男性)だ。


「彼らのサインと握手、でどうだ」


 食い入るように写真を見ながら、


「―キスは?」

「流石に無理だ」

「―ハグは?」

「どうにかしよう」

「契約成立ね」


 交渉する表情や声音は真剣そのものだが、話している内容はなかなか酷いものだった。


「で、その栓がありそうな場所の目星はついてるんでしょ? まさか、瀬戸内海全部を探せなんて言わないわよね?」

「ああ、いくつかのポイントに絞れている。こちらのスタッフにも一人海の専門家がいてな。潮流の流れから推測してもらっている。これでメンバーもそろったし、早速近場のポイントに行ってみるか」


 さらりと船を動かそうとする金戸に、流石に黙っていられなかった湯子が待ったをかける。


「ちょっ、待った! ウチと釜森さんだけで」

「かまちゃん、って呼んで。か・ま・ちゃ・ん」

「ぐっ……! ウチとかまちゃんだけでどうにかするってこと!?」


 瀬戸内に大損害が出るかどうかの危機に対して、女子高生とオネエの海士さんと政府の守銭奴で立ち向かうなんて無謀にもほどがある。


「そんなわけはないだろう。さっきも言ったが、海洋の専門家も一人スタッフにいるし、考古学者にも調査を依頼している」

「バックアップのスタッフはわかったけど、現場要員は!? 栓をはめ直すだけって言っても、二人だけはいくらなんでも―」


 せめて、サポート込みで腕の立つ船上スタッフくらいはほしいところだろう。


「そうか、紹介はまだだったな。長船さん、こっちへ来てくれ」

「あいよー」


 のんびりした声で姿を現したのは、漁具の手入れをしていた船長だった。


「こちら、プロジェクトのパイロット役を務めていただく(おさ)(ふね)(かすか)さんだ。モーターボートや漁船はもちろん、ヨットや豪華客船で海上ドリフトさせられるレベルの海洋航行のスペシャリストだ」


 素晴らしい技術の持ち主だったが、嫌な予感がした湯子は疑いの眼差しを金戸に向ける。


「……で、今回のオチはなんですか?」

「オチとはなんだ、オチとは。こちらにそんな意図はないぞ」


 釜森、そして金戸自身も、ここまで集められたメンバーは任務遂行のために必要な技能を持ってはいるものの、どこか問題点がある。

 湯子だって、海の流れが読めるという不確定な能力がるだけで、それ以外は普通の女子高生だ。

 今回の長船だって、何かあるに違いないと湯子は踏んでいた。


「そうだな、運転中に多少ハジけてしまう所はあるが」

「そのくらいなら……ここまでの運転はそうでもなかったですし」


 漁をしながらだったことで緩やかだっただけかもしれないが、もともと船酔いには縁がない湯子としては、多少運転が荒くても問題ない。

 凄腕である以上、転覆することはないだろう。


「あとは、これまで乗った全ての船が沈んでいることくらいか」

「それが、オチだぁっ! しかも、今までで一番悪質じゃないですか!」


 普通に命にかかわるレベルだった。救命胴衣と、浮き輪の位置を急ぎ確認する湯子と釜森。


「心配するな。これまで長船さんは数多くの船を沈めてきたが、ただの一人も死んでいないのだ。なかには、その事故以来、性格が明るくなったという人も―」

「恐怖で人格変わってるじゃないですか!」


 こうなると、いつ沈むかわかったものではない。

 だというのに、金戸は落ち着いた様子のままだ。


「話は最後まで聞け。信じられない話だが、長船さんは一度沈めたのと同種の船は二度と沈めたことがない。その代わり、同種の船では超人的な操縦技術も発揮できなくなってしまうのが残念だが」


 つまり、長船は既に漁船は沈めたことがあるということだ。

 それならば、ここまでの運転が静かだったのも納得がいく。


「はぁ……やっぱり、とんでもないオチがついてるじゃないですか」

「まあ、確かにそうかもしれんな。だから、長船さんに潜水艦を運転してもらって、玉野君を海底まで連れていく案は流れてしまったわけだが」


 その案が自分に黙って実行されていたら、と考えると湯子はぞっとした。


「流石にアタシもそれはお断りね。海の上ならどうとでもするけど、潜水艦に閉じ込められたらねえ」

「わかったわかった。こちらとしても、潜水艦を用意するのは大変だし、それが沈むなど損害としては認め難い。海底の調査と抜けた栓の捜索は、スタッフ個人所有の水中探査機で行っているところだ」


 船室に置かれていた大きめのアタッシュケースを運んできた金戸は、全員に中身が見えるように(ふた)を開いた。

 蓋の裏側は、大画面のモニターになっている。

 箱の中には通信装置以外にも、電波傍受を防ぐための機械なども仕込まれているようで、いくつかのパスワードを入力したり、指紋照合などしたりしてロックを一つずつ外していく。


「よし、と。機密保持のためとはいえ面倒な……しかしまあ、この方が金をかけた実感があっていいか。さて、マリン博士。聞こえるかね?」


 画面はしばらくノイズを映していたが、やがてはっきりと人の姿を映し出した。

 しかし、機密保持のために金をかけたと言う割には画質はよくない。

 おまけに混線しているらしく、映し出されているのは、どこかの小学生だ。


『ふえ……あ、おはようございますぅ』


 もうすぐ正午だというのにまだ眠っていたらしく、魚柄のパジャマ姿だ。


「あの、金戸さん、いきなり混線してるみたいですけど」

「ああ、そうか。玉野君風に言えば、これがオチなわけだな。この場合は出オチか?」


 湯子は嫌な予感がした。

 いや、ここまでくれば予感というよりも、嫌な展開を確信した、と言うべきか。


『あ、金戸さんだ~。ポイントはしぼりこめたよ。でも、夜遅くまで仕事してたからまだ眠くて……ふわあ』

「玉野君、かまちゃん、こちらは双倉(ふたくら)マリン博士だ。今年で12歳になる」


 湯子の頭の中で、マリンがランドセルを背負って登校する様子が思い浮かんだ。

 女子高生、オネエ、守銭奴、沈没癖のある船長、そこに加わったのが女子小学生……。

 一部のマニアには好評なのかもしれないが、チームを組む身としては堪らないだろう。


「いくらお金が惜しいからって、小学生に頼るとは何事ですか!?」


 思わず声を荒げてしまったが、金戸は相変わらず平然としている。

 しかし、ここは流石に譲れない湯子は、さらに詰め寄ろうとしたが、


『お姉ちゃーん、私、小学生じゃないよ。これでも大学で働いてるんだよ~』

「だ、大学生?」

『違うよ~。教授さんだよ。きょ・う・じゅ。学校なら飛び級で大学院まで卒業済みだよ』


 耳から入ってくる言葉と、目の前に映る少女の姿が一致しない。


「年齢こそまだ小学生だが、学歴はこの中で誰より上だ。ついでに知能指数と稼ぎもな。さっき、スタッフ個人所有の水中探査機で捜索を行っていると言っただろう」


 水中探査機、しかも抜けた栓を探すとなれば、遠隔操作式であることはもちろん、センサー類やマニピュレーターも完全装備のものだろう。

 簡単に個人が、しかも小学生が所有できるものではない。


『この間の海洋研究の論文で、またお給料もらったからね。知り合いが割引で作ってくれるって言うから買っちゃった。毎日海のきれいな景色見れて、もう最高!』


 自分の中の常識が、今日一日のうちに次々と書き換えられていることを自覚しつつ、もう湯子は深く考えないことにした。


(考えるだけ、こっちが損するだけのような気がする……)


「それで博士、そのポイントについてだが」

『あー、そうそう。絞りこんだポイントの中で、探査機じゃ見えない所がいくつかあってね。ダイバーの人との交渉はうまくいった?』

「うむ。データを送ってくれ。今からすぐに向かおう。かまちゃん、いきなりだが一潜りしてもらう。潜水具はここにある」


 途端に動き出す船上。

 長船はゆっくりと確実に進路を変更し、釜森もまだオネエっぽさは見られるものの、金戸が出した潜水具の確認を開始する。

 湯子と金戸は特にすることもないので、モニターの前に残っていると、


『あー、これはあまりよくないかも』

「どうかしたの?」

『今ニュースサイト見てたんだけど、厳島神社の周りの水位が落ちてるみたい。これは、流石にごまかせないよねぇ』


 確かに、海の上に敷地を持つ厳島神社を見れば、水位が落ちていることは明らかだろう。

 観光客もすごい数だし、これは隠しようがない。


『それに、もっと悪い知らせ。外国の環境保護団体が調査に入るかも、だって。結構有名なやつだよ。ちっちゃい豆みたいな名前のやつ』


 外国からの調査となると少々困ったことになるだろう。

 しかも、かなり有名な団体だ。

 金戸はどうにかなると言っていたが、日本政府の外圧からの弱さは国際的にも有名なくらいだ。

 外国で報道されれば、流石に国内のメディアへの歯止めもかからなくなるだろう。


「これはどうやら、急ぐ必要がありそうだな」

(多分、外国から介入された時の自分の報酬の減り具合の心配だろうなあ)


 とはいえ、自分の住んでいる瀬戸内がそういった形で騒がしくなるのは湯子にとっても本意ではない。

 こうなったら何でも来い、と思いながら、現場へ向かう湯子だった。

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