ハルビア家の令嬢
白兎の召喚術師、それは勝手につけられた私の二つ名だ。戦闘中はウサ耳だからね……。
「初めまして、リティアニーカ・アルフさん。あたしはカリン・ビア・ハルビアっていーます」
ニカッと歯を覗かせて笑った。人懐っこさ全開だ。子犬みたい。
「ん、ハルビア?」
私はフリーティへ視線を向けた。予想通り、カリンを睨み付けていた。こっちはよく吠える小型犬みたい。
「なんであなたがここにいるんですの」
最初っから喧嘩腰かよ。
ていうか、この子が中流貴族のハルビア家のご令嬢か。
「あら、フリーティさんじゃないっスかー。この前の手合わせは勉強になりました。大会で戦えるのを楽しみにしてるので!」
嫌味のない、朗らかな言い方で好感がもてる。フリーティを瞬殺したって言ってた子だよね?
「わたしも楽しみにしていますわ。うちのお姉様があなたをボコボコにするところをっ」
おーい。勝手に私を組み込まないでくれ。さっきので、プライド消し飛んじゃったのかな? 余裕無さすぎて、フリーティの負け犬感が凄い。
「おや、噂は聞いていましたけど、本当なんスか。白兎の召喚術師様は優秀過ぎてトルフィティ家を追放されてしまったご息女だと。なんでも当主は末娘を溺愛していたため、邪魔にしたらしいともっぱらの噂ですよ~?」
「そんなことはありませんわっ」
「えーと、優秀かはともかく、大体合ってる」
「お姉様っ」
あー、私が有名になってきたせいで、トルフィティ家はあんまり評判よくないんだな。しかもこの子に負けて、さらに落ちぶれ始めてると。
どうでも良すぎる話だ。
「それで、貴族様がなんのご用意でしょうか?」
「そんな言葉遣いいらないっスよ、今やあなたは我が街の誇りですから。後二年もすれば貴族からのラブコールがあるはず」
「そんなの、うちのお父様が許すはずありませんわ」
義理でお父様って呼んでるけど、あの人今は私の父親ではないんだけど?
「貴族の男達はあなたを狙ってる……ってわけっスすね!」
生々しい表現だな。
別に自慢するわけじゃないけど、王様にもラブコールもらってるよ。王子殿下との見合い話とか。
興味ないけどね。
「じゃあ、カリン。私に何か用事?」
「どんな依頼でも受けてくれるって聞いてるっスけど?」
「うん、もちろん」
生活のために稼がなきゃならないから、汚れ仕事も喜んでやるつもりだ。ムカデは大したことなかったけど、白系魔獣退治からお庭の草むしりまで、なんでも。
私は呼び出した召喚魔獣を確実に操ることが出来る。依頼に適した魔獣を使えば、大抵はなんとかなるのだ。
「なら南の泉に巣食うおじさんを退治してほしいんスよねー」
え、おじさん……?