お姉様は人間です
諸事情によりウサギ型召喚魔獣の名前がタリン→ルビに変更になっております。混乱させてしまい、申し訳ありません。
フリーティはふらふらと立ち上がった。
「お姉、様」
顔を伏せ、両手の拳を握り締め、肩を震わせる。その様子が尋常じゃない。痙攣してるみたいだ。
大丈夫か? ムカデの毒にでもやられた……?
「……かったですわ」
私と、肩に乗っているルビは顔を見合わせた。
「え、なんて?」
「俺じゃなくて本人に聞けよ」
最もなんだけど、なんか怖いんだよね。何かを感じ取ったらしいルビは私の肩からいなくなってしまった。逃げ足、早っ。
「格好良かったですわ! 悔しいですけど!」
顔を真っ赤にしてそう叫んだフリーティは再び顔をうつむける。
「え、ああ、どうも」
何その反応。
「その辺の殿方よりもずっと……。わたし、お姉さまのこと、微生物程度にしか見ていませんでしたわ。今のお姉さまのことも、微生物が頑張ってネズミに進化したくらいにしか認識していなかったのです」
「ねえ、さすがに罵倒して良い?」
確か今年で十六だよね? 中身、まっっったく変わってなかったわ。びっくりだわ。
「でも、やっとお姉さまが人間だと認識できた気がします」
胸の前で手を組むと、愛おしげに私を見る。
「最初から人間だから!」
とりあえず、そう叫んでから私は腕を組んだ。
「まあ、いいや。そのネズミに頭を下げる時間があったら術師大会に勝てるよう努力したら? 私は出る気ないからね?」
「いいえ、三カ月後の術師大会……お姉様は必ず出ることになりますわ」
何、その自信。
「出ないよ。トルフィティ家に何があろうと、手は貸さない。どうでも良いもん」
「大会までに、わたしはお姉様に勝つつもりですから!」
そもそも勝負を受けないから勝ち負けもないって。
私は杖で地面に円を描き始めた。フリーティと話すよりも王様にこのことを報告しないとね。白ムカデがいなくなったことで洞窟やこの先にある湿原にも行けるようになるだろう。新しい食糧源や街の資金源が見つかるかもしれない。
と、その時だった。
木々の間から拍手と、草を踏みしめる音が聞こえて来たのだ。一瞬警戒したけど、大丈夫そうだ。殺気はない。
「?」
顔を上げると、フリーティと同じか下くらいの年齢だと思われるロングヘアの女の子がゆっくりと歩み寄って来ていた。
「さすが白兎の召喚術師っスね。お見事」
黒銀色のロングヘアをかき上げ、腰に手を当てる。シャツにマント、ジーンズ生地のズボンにブーツという格好。スタイルが良いからかっこよく見える。
えーと、誰?