返り討ち
しかし。
私の描いた術円から光が噴き出す前に、駆け出す執事。一瞬で距離を詰められた。円を足で消された後、彼は私の首を締め上げて、木へと押しつけた。背中を打ち付けてしまい、息が詰まる。
「うっ」
思わず呻き声を漏らす私。
……懐かしい。前にもこんなことあったな。
「リティさんっ」
声は出せないので、カリンに目配せし、手を出さないように訴える。カリンは察しが良いから、すぐに動きを止めた。
「お嬢様ぁ。やっと凡人レベルの召喚術を覚えたからって調子に乗りすぎでしょう」
いきなりの暴力に全力で睨み付ける。このクソ執事が。そういえば、身体能力化け物だったな、こいつ。
「懐かしいですねー。ピーピー泣くから、こうやって押さえつけて耳元で殺すぞ……なーんて冗談を言ったら、平謝りでしたよねぇ」
こいつの中では笑い話か。
「ハーリーズ・トルフィティ公爵の執事であるこのエリオッツに対して、無礼を働い、おぐっ!?」
話の途中で、膝使って股間を蹴り上げてみましたー。無防備過ぎて話にならない。
執事エリオッツは、音もなくその場に崩れ落ち、股間を押さえて悶え苦しむ。
私はエリオッツの手ごと、股間を靴で踏みつけた。
「あがっ、い、痛いっ、ちょっと、お嬢様!?」
「え、なんて?」
「こ、これは反則でしょうっ」
何が反則だ。
私はエリオッツに対して手のひらを向けた。光で宙に術円が描かれる。
「白き魔獣の地よ。アリーナの息吹をここに。リティアニーカの名の元に顕現せよ」
白い光が噴き出し、円から現れたのは細い竜型の白系リーカーである。
私がエリオッツから足を退かして離れると、リーカーが彼の体に巻き付いて、キュッと締め上げた。
「う……白系、ですと?」
詠唱の一部を飛ばしても問題なく白系を使用できるようだ。良かった。もう二度とトルフィティの名は使わないぞ。
「エリオッツ、ここに何しに来たの? フリーティがなんかほざいてたけど、何企んでるの?」
だんまりか。私と視線を合わせようとしない。
「そう。じゃあもう良いや。リーカー」
『どうする、主殿』
「そいつ、東の果ての果てにある砂漠のど真ん中に捨てて来て」
「リティぃぃ!」
ルビが元の姿に戻り、私の肩をバンバンと叩く。
「死ぬだろっ! 多分それ戻ってこれないだろ!」
大丈夫じゃないかな? 飛べる召喚魔獣呼び出せば良いじゃん。
「そんな証拠が残るようなやり方ダメっス! うちの狩猟部隊に是非っ」
「お前は確実に殺るつもりかっ」
あ、エリオッツが青くなってる。
「お、お嬢様っ、おかしくないですかねぇ? もうちょっと情報を引き出すために頑張らないんですか?」
「話す気ないんでしょ? そんなやつに価値があると思ってるの? のこのこやって来て、捕まって、さすが老いぼれさんの執事さんだよね」
「っ……! なるほど、喧嘩を売っているようですねぇ」
へぇ、まだそんな口がきけるんだ。




